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霓裳蘭と風船葛
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西の空の端に、茜色が淡く滲み、頭上の空はごく薄い水色に染まりつつあった。夏の夕方は、空気が透明になると玉城かずらは考える。
一人で歩く黄昏時の道は、不思議と身軽になれるのだ。寂しさと身軽さは、たぶん本質的には同じものだ。かずらは肩にかけた学生鞄の位置を直す。背中にいつものギターケースではないから、余計に心許なく感じるのかもしれない。
肌に纏わりつく熱気も、既に慣れた。連日の酷暑、夕暮れを迎える時間になっても暑さは和らぐ兆しが見受けられない。
道の先に小さな火を見つけて、かずらは思わず立ち止まった。目を凝らすと小さな火の傍で、小さな人影が屈みこんでいる。視線をずらして、家を見る。遠距離の錯覚を考慮に入れても、その日が焚かれているのは、かずらが向かう先輩の家の前に違いなかった。
今週は試験休みの最中だが、二年生は進路指導のための登校日だった。どうせ学校の方までくるならそのまま御夕飯を食べにいらっしゃいと、先輩のお姉さんの有り難い御達しを受けて、カラオケ行こうぜと騒ぐ同級生達の誘いを丁寧に断ったのが一時間前。
近づくにつれて、その人影が先輩の祖母だということに気が付いた。二世帯住宅の造りのため、遊びに行っても顔を合わせることは少ない。それでも面識は多少あり、人見知りしない性格のかずらであるから、気さくに声をかけた。
「こんばんは、何をされているんですか?」
「はいこんばんは、いらっしゃいかずらちゃん。お盆の迎え火をしてるのよ」
柔らかく微笑む彼女の小さな顔は、先輩とはあまり類似点がない。『迎え火』という言葉に、かずらは首を傾げた。
年若い子供が物を知らないことに慣れているのだろう、元教師でもあった彼女は簡単にお盆の説明をしてくれる。曰く、祖先の霊が帰ってくるのでそれを迎えるための火を焚くという。成るほどとかずらは目を丸くして火の傍にしゃがみこんだ。
亡き人の霊魂が戻って来るという発想は、彼女の世界観とはあまりに異なるものだった。人は死ぬと天国に行く。一度その門をくぐった人達は、永遠に神の御元で幸せに暮らす。十歳の時に老衰で亡くなった祖父は、天国で子供の頃から相棒だったというハーモニカを吹いて過ごしているのだろうと思っていた。
天国がどこにあるかはしらないが、きっと空の彼方にあるのだろうとかずらは想像している。そこは自分達が生きている世界とは隔絶された場所で、行くことは戻ってくることはない。そもそもかずらの家では墓参りの習慣さえ馴染んでいない。死者というものは生きている人の記憶の中にいるものだと思っていた。
膝を抱えたまま、かずらは何となく辺りを見回す。薄暗い水色に染まるアスファルトの道、ほぼ同色のコンクリートの塀。鬱蒼とした庭の樹木と、明かりのついた家の窓。
「帰ってきてるんですか?」
「そうよ」
「会いにきたんですね」
「ええ」
きっと。かずらはそう思う。きっとこの小さな火を目印にして、家へと辿り着くのだろう。道の先からでも見えたのだから、空の上からでも見えるに違いない。それも愛する人の焚く火なら、きっと自分を呼んでいるのだとわかるのだろう。見慣れない風習は、それでもあたたかく優しいものとして映る。
「素敵ですね」
「ありがとう」
先輩の祖母が笑い、かずらも微笑み返した。火は見慣れない細い枝のようなものを、じりじりと燃やしている。無言でその火をじっと見つめていると、扉の開く音がした。飛び石伝いの庭先、チョコレート色の玄関の扉が開き、そこに立つ人の姿をシルエット状に浮かび上がらせている。
「かずら」
「先輩」
低い門扉のところまで、黒い影が長く伸びている。玄関脇に設置された外灯に、小さな虫が集まっていた。かずらは先輩の祖母に挨拶をしてから立ち上がった。門扉に手をかけると、昼間の熱を残している鉄がじんわりと肌に温もりを伝えた。
支倉鈴はおそらく部屋着用なのだろう、着古した感のあるYシャツにスラックスで、足元にはサンダルを突っかけていた。こんばんわとかずらが告げると、遅いぞと返された。
玄関から右手にある犬小屋は空っぽだった。かずらの視線を受けて、鈴は家の奥を窺うようにしてから、妹のところだと声をひそめた。かずらもつられてこっそり頷いた。
家の中はクーラーの冷気が廊下にもわずかに漂っている。お邪魔しますよ声をかけると、廊下の一番奥の台所から、鈴の母親が顔を出す。
「いらっしゃい、かずらちゃん」
見せる彼女の笑顔は、血の繋がりはないはずなのに、先刻の祖母の微笑を彷彿とさせる。
「お腹空いてる?」
「あはは、すっごく空いてます」
「よかった、もうすぐできるから待っててね」
鈴の母親が顔をひっこめる。廊下には揚げ物の油の香ばしい匂いがしている。それだけで空腹を更に刺激されて、お腹空いたなあとかずらは独りごちた。先輩の家のイカフライは本当に美味しいから。靴箱の上の置き物を移動させていた鈴は、その呟きにおかしそうに後輩を見る。
「そんなに腹が空いているなら、お祖母さんと何をしていたんだ」
「迎え火を見てたんです」
「面白いか?」
「見るの初めてだったので」
成程なと鈴は肩をすぼめた。自分の家と習慣や風習がまるで異なる鈴の家は、かずらにとって不思議で面白いところなのだ。多少の違和感を感じても、総じて心地よく感じる。そういう思いをうまく言い表わすことができず、かずらは結局先輩の家が好きですと言った。
言葉は意図したものより、言葉は意図したものより、やや飛躍したものに聞こえたらしい。怪訝そうに首を傾げ、鈴は特にコメントもせずに背中を向けた。
玄関を入ってすぐの、少し角度が急な階段をあがって右手が鈴の部屋だ。支度ができるまで彼の自室で待っていようということらしい。
階段をのぼる鈴の後を、かずらもついていく。支倉家ではスリッパを使うのは両親だけで、子供達は素足で過ごしている。鈴の固そうな踵を視界に入れながら、かずらには急だが段差の低い階段を踏んでいく。そうして、洗いざらしのシャツの背中を見上げた。
「うちが死んだら、先輩が火を焚いて下さいね」
途端に鈴が立ち止まり、かずらは危うく彼の背中にぶつかるところだった。ギリギリでそれを回避して、だいぶ上にある先輩の顔を見上げる。日頃からきつい目元が、じっとかずらの顔を見下ろしていた。自分を見つめる真剣な眼差しに、困惑が生じる。
眼を瞬かせ、なんですかと尋ねる。鈴はすぐには答えなかった。あと一段で二階の廊下というところで、鈴が立ち止まった。その一段下に片足をかけたまま、かずらは立ち尽くす。鈴の部屋の隙間から、かすかにクーラーの冷気がもれてきている。小さく聞こえる音楽は、隣室の鈴の兄の部屋からだろう。
「そんな予定があるのか」
「え」
低い声で鈴が尋ねた。『そんな予定』の意味がわからず、かずらはますます困惑を深める。鈴が苛立ったように、死ぬつもりなのかと続けたので、ようやくかずらはその返答を検索することができた。
当たり前だが、かずらにはそんなつもりも予定もない。ただ、自分が死んだら鈴に呼んでほしいと思っただけだ。そうしたら、自分は迷わず彼の元に帰ってこられるだろう。
天国はきっといいところなのだろうけど、かずらは一年の一回でいいから鈴と居られる時間がほしいと思う。空の上から鈴が自分を呼ぶ火を見つけたら、どんなに心が逸るだろう。
だが、鈴の方はそうは思っていないようだった。怒ったような目で自分を見つめていることに気付いたから、かずらはごめんなさいと謝った。そのぎこちない声に、鈴はわずかに目許の力を抜いたようだった。そっと彼の手が動き、躊躇いがちに柔らかい黒髪に触れる。
「死ぬとか、言うな」
くしゃりと前髪を撫ぜられ、かずらは反射的に目を瞑る。同時に鈴が怒った理由がわかった。それは、まるでかずらの考えていたこととはずれていたけれど、胸がじんわり暖かくなる。手を離した鈴は背を向けて階段を上りきり、部屋の襖をあけた。後について部屋に入ると、冷えた空気が皮膚を引き締める。
かずらは畳の感触が結構好きだ。机の脇に鞄を置いて、ふと学習机の前の窓から通りを覗いた。小さな火が、ますます小さくなっていくところだった。いくらも経たないうちに、ふっと掻き消える。亡くなった人はちゃんと帰ってこられたのだろうか。例えば、鈴の祖母の、夫だった人は。
机の上に肘をついて身を乗り出していると、鈴がかずらの肩に手をかけて同じように窓の外を見た。彼の目に映るのは、ただの暗闇だろう。何も見えないぞと言って、鈴はベッドにもたれ、畳に腰を下ろした。そうですねと相槌を打ちながら、かずらもその隣に座る。
でも先程は、確かに小さな火が見えたのだ。頼りなく風に揺れる、ささやかなその目印。
「先輩」
「ああ」
何年も何十年も先かもしれないし、もしかしたら明日かもしれない。いつでも構わないし、たった一度だけでいい。自分が死んだら、鈴に迎え火を焚いてもらいたかった。それを目印にして帰ってくるから、一日だけでも自分を傍にいさせてほしい。
そう言えば鈴は怒るだろうし、怒られないようにどう表現していいのかもよくわからなかった。それで、かずらはただ「好きです」と言った。鈴はしばらく黙ってから、俺もだと答えた。制服のシャツ越しに鈴の体温を感じる。自分の口にした願いを、この人がいつか思い出してくれればいいと思った。
一人で歩く黄昏時の道は、不思議と身軽になれるのだ。寂しさと身軽さは、たぶん本質的には同じものだ。かずらは肩にかけた学生鞄の位置を直す。背中にいつものギターケースではないから、余計に心許なく感じるのかもしれない。
肌に纏わりつく熱気も、既に慣れた。連日の酷暑、夕暮れを迎える時間になっても暑さは和らぐ兆しが見受けられない。
道の先に小さな火を見つけて、かずらは思わず立ち止まった。目を凝らすと小さな火の傍で、小さな人影が屈みこんでいる。視線をずらして、家を見る。遠距離の錯覚を考慮に入れても、その日が焚かれているのは、かずらが向かう先輩の家の前に違いなかった。
今週は試験休みの最中だが、二年生は進路指導のための登校日だった。どうせ学校の方までくるならそのまま御夕飯を食べにいらっしゃいと、先輩のお姉さんの有り難い御達しを受けて、カラオケ行こうぜと騒ぐ同級生達の誘いを丁寧に断ったのが一時間前。
近づくにつれて、その人影が先輩の祖母だということに気が付いた。二世帯住宅の造りのため、遊びに行っても顔を合わせることは少ない。それでも面識は多少あり、人見知りしない性格のかずらであるから、気さくに声をかけた。
「こんばんは、何をされているんですか?」
「はいこんばんは、いらっしゃいかずらちゃん。お盆の迎え火をしてるのよ」
柔らかく微笑む彼女の小さな顔は、先輩とはあまり類似点がない。『迎え火』という言葉に、かずらは首を傾げた。
年若い子供が物を知らないことに慣れているのだろう、元教師でもあった彼女は簡単にお盆の説明をしてくれる。曰く、祖先の霊が帰ってくるのでそれを迎えるための火を焚くという。成るほどとかずらは目を丸くして火の傍にしゃがみこんだ。
亡き人の霊魂が戻って来るという発想は、彼女の世界観とはあまりに異なるものだった。人は死ぬと天国に行く。一度その門をくぐった人達は、永遠に神の御元で幸せに暮らす。十歳の時に老衰で亡くなった祖父は、天国で子供の頃から相棒だったというハーモニカを吹いて過ごしているのだろうと思っていた。
天国がどこにあるかはしらないが、きっと空の彼方にあるのだろうとかずらは想像している。そこは自分達が生きている世界とは隔絶された場所で、行くことは戻ってくることはない。そもそもかずらの家では墓参りの習慣さえ馴染んでいない。死者というものは生きている人の記憶の中にいるものだと思っていた。
膝を抱えたまま、かずらは何となく辺りを見回す。薄暗い水色に染まるアスファルトの道、ほぼ同色のコンクリートの塀。鬱蒼とした庭の樹木と、明かりのついた家の窓。
「帰ってきてるんですか?」
「そうよ」
「会いにきたんですね」
「ええ」
きっと。かずらはそう思う。きっとこの小さな火を目印にして、家へと辿り着くのだろう。道の先からでも見えたのだから、空の上からでも見えるに違いない。それも愛する人の焚く火なら、きっと自分を呼んでいるのだとわかるのだろう。見慣れない風習は、それでもあたたかく優しいものとして映る。
「素敵ですね」
「ありがとう」
先輩の祖母が笑い、かずらも微笑み返した。火は見慣れない細い枝のようなものを、じりじりと燃やしている。無言でその火をじっと見つめていると、扉の開く音がした。飛び石伝いの庭先、チョコレート色の玄関の扉が開き、そこに立つ人の姿をシルエット状に浮かび上がらせている。
「かずら」
「先輩」
低い門扉のところまで、黒い影が長く伸びている。玄関脇に設置された外灯に、小さな虫が集まっていた。かずらは先輩の祖母に挨拶をしてから立ち上がった。門扉に手をかけると、昼間の熱を残している鉄がじんわりと肌に温もりを伝えた。
支倉鈴はおそらく部屋着用なのだろう、着古した感のあるYシャツにスラックスで、足元にはサンダルを突っかけていた。こんばんわとかずらが告げると、遅いぞと返された。
玄関から右手にある犬小屋は空っぽだった。かずらの視線を受けて、鈴は家の奥を窺うようにしてから、妹のところだと声をひそめた。かずらもつられてこっそり頷いた。
家の中はクーラーの冷気が廊下にもわずかに漂っている。お邪魔しますよ声をかけると、廊下の一番奥の台所から、鈴の母親が顔を出す。
「いらっしゃい、かずらちゃん」
見せる彼女の笑顔は、血の繋がりはないはずなのに、先刻の祖母の微笑を彷彿とさせる。
「お腹空いてる?」
「あはは、すっごく空いてます」
「よかった、もうすぐできるから待っててね」
鈴の母親が顔をひっこめる。廊下には揚げ物の油の香ばしい匂いがしている。それだけで空腹を更に刺激されて、お腹空いたなあとかずらは独りごちた。先輩の家のイカフライは本当に美味しいから。靴箱の上の置き物を移動させていた鈴は、その呟きにおかしそうに後輩を見る。
「そんなに腹が空いているなら、お祖母さんと何をしていたんだ」
「迎え火を見てたんです」
「面白いか?」
「見るの初めてだったので」
成程なと鈴は肩をすぼめた。自分の家と習慣や風習がまるで異なる鈴の家は、かずらにとって不思議で面白いところなのだ。多少の違和感を感じても、総じて心地よく感じる。そういう思いをうまく言い表わすことができず、かずらは結局先輩の家が好きですと言った。
言葉は意図したものより、言葉は意図したものより、やや飛躍したものに聞こえたらしい。怪訝そうに首を傾げ、鈴は特にコメントもせずに背中を向けた。
玄関を入ってすぐの、少し角度が急な階段をあがって右手が鈴の部屋だ。支度ができるまで彼の自室で待っていようということらしい。
階段をのぼる鈴の後を、かずらもついていく。支倉家ではスリッパを使うのは両親だけで、子供達は素足で過ごしている。鈴の固そうな踵を視界に入れながら、かずらには急だが段差の低い階段を踏んでいく。そうして、洗いざらしのシャツの背中を見上げた。
「うちが死んだら、先輩が火を焚いて下さいね」
途端に鈴が立ち止まり、かずらは危うく彼の背中にぶつかるところだった。ギリギリでそれを回避して、だいぶ上にある先輩の顔を見上げる。日頃からきつい目元が、じっとかずらの顔を見下ろしていた。自分を見つめる真剣な眼差しに、困惑が生じる。
眼を瞬かせ、なんですかと尋ねる。鈴はすぐには答えなかった。あと一段で二階の廊下というところで、鈴が立ち止まった。その一段下に片足をかけたまま、かずらは立ち尽くす。鈴の部屋の隙間から、かすかにクーラーの冷気がもれてきている。小さく聞こえる音楽は、隣室の鈴の兄の部屋からだろう。
「そんな予定があるのか」
「え」
低い声で鈴が尋ねた。『そんな予定』の意味がわからず、かずらはますます困惑を深める。鈴が苛立ったように、死ぬつもりなのかと続けたので、ようやくかずらはその返答を検索することができた。
当たり前だが、かずらにはそんなつもりも予定もない。ただ、自分が死んだら鈴に呼んでほしいと思っただけだ。そうしたら、自分は迷わず彼の元に帰ってこられるだろう。
天国はきっといいところなのだろうけど、かずらは一年の一回でいいから鈴と居られる時間がほしいと思う。空の上から鈴が自分を呼ぶ火を見つけたら、どんなに心が逸るだろう。
だが、鈴の方はそうは思っていないようだった。怒ったような目で自分を見つめていることに気付いたから、かずらはごめんなさいと謝った。そのぎこちない声に、鈴はわずかに目許の力を抜いたようだった。そっと彼の手が動き、躊躇いがちに柔らかい黒髪に触れる。
「死ぬとか、言うな」
くしゃりと前髪を撫ぜられ、かずらは反射的に目を瞑る。同時に鈴が怒った理由がわかった。それは、まるでかずらの考えていたこととはずれていたけれど、胸がじんわり暖かくなる。手を離した鈴は背を向けて階段を上りきり、部屋の襖をあけた。後について部屋に入ると、冷えた空気が皮膚を引き締める。
かずらは畳の感触が結構好きだ。机の脇に鞄を置いて、ふと学習机の前の窓から通りを覗いた。小さな火が、ますます小さくなっていくところだった。いくらも経たないうちに、ふっと掻き消える。亡くなった人はちゃんと帰ってこられたのだろうか。例えば、鈴の祖母の、夫だった人は。
机の上に肘をついて身を乗り出していると、鈴がかずらの肩に手をかけて同じように窓の外を見た。彼の目に映るのは、ただの暗闇だろう。何も見えないぞと言って、鈴はベッドにもたれ、畳に腰を下ろした。そうですねと相槌を打ちながら、かずらもその隣に座る。
でも先程は、確かに小さな火が見えたのだ。頼りなく風に揺れる、ささやかなその目印。
「先輩」
「ああ」
何年も何十年も先かもしれないし、もしかしたら明日かもしれない。いつでも構わないし、たった一度だけでいい。自分が死んだら、鈴に迎え火を焚いてもらいたかった。それを目印にして帰ってくるから、一日だけでも自分を傍にいさせてほしい。
そう言えば鈴は怒るだろうし、怒られないようにどう表現していいのかもよくわからなかった。それで、かずらはただ「好きです」と言った。鈴はしばらく黙ってから、俺もだと答えた。制服のシャツ越しに鈴の体温を感じる。自分の口にした願いを、この人がいつか思い出してくれればいいと思った。
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