校内怪奇談(11/10更新)

狂言巡

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放課後2

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 「気をつけなさい。今日は金曜日、しかも十三日の金曜日なんだから!」  

 俺は引きはしなかったが、正直呆れた。帰ろうとした俺の肩をいきなり掴んで引き寄せてそんな事を言ってきた、自分のクラスの学級委員長に。しかし真顔で何か言ってきたヤツに「お前バカ?」は禁物だ。しかも相手は自他認めるオカルトマニア! だから。

「たまーにあるよなこんな偶然……個人的にそのフレーズはスプラッタ系だと思うけど……心配しなくてもここは日本だ」

 遠回しに説得してみた。

「このお馬鹿! 安全な国ニッポンだなんて昔の話、この御時世よ、警察だか通行人だか当てにしても無駄なんだから! 自分の身は自分で守らなきゃ」

 しかし、逆に怒られてしまった。『自分の身は~』部分は同感だが、前述のぶっ飛び発言で全然説得力がないぞ。まぁ、いいか。これ以上下手に言い返すとクドクド説教される(最悪洗脳される!)ハメになるのは、冷蔵庫の中にプリンがあったら母ちゃんや姉ちゃんに確認しないで即食っちゃうのと同じくらい可能性が高い。
 それに俺はとっとと家に帰りたいのだ。俺の部屋のベッドの下の箱には、昨日ヒトメボレして即買いしたゲームソフトが待っていてくれるのだから。ちなみに好きなジャンルはダンジョン系ゲームだ。

「わかったわかった! 変質者通り魔には気をつけるよ、いつものことだろ? 合気道二段をナメんなよ!」

 俺はそれ以上の追撃を避けるように(委員長はドアを塞ぐように立っていた)窓へ駆け出した。ここは二階だが、俺にとっちゃどうって事ない高さだ。下が土で、三階までなら余裕で着地できる。窓のサッシに足をかけ、勢いをつけて飛び降り、

「あれ?」

 ひゅ、ん――。
 やや当たりの強い風がぶつかってきた瞬間、目の前が真っ赤に染まった。





 黒薔薇組の学級委員長ウィッカ・K・ダウディーは階段で外まで降りた。そして一瞬で五分割されたクラスメイトの遺体を見下ろし、やれやれと肩を竦めた。

「――ほんと御馬鹿さんねこの子は。せっかく居眠りしていた貴方を自分で起きるまで寝かせておいてあげて、わざわざ警告して付けてあげたっていうのに……」

 彼女の言葉の意味は、数十分前のホームルームまで遡る。

 『昨日の予報通り、今日の昼頃、この街全域に『カマイタチ』警報が発表されました。皆さん、必ず今日は速やかに帰宅するように。そしてけして窓やドアを無用心に開けてはいけません――最悪、死にますよ』
「恨むんじゃないよ……先生の話をちゃんと聞いていなかったアンタの過失なんだから」

 ひゅるるん――。
 風が赤い渦を作った。それは素早く身を翻したウィッカには当たらなかった。報告及び除去清掃という委員長の義務を全うするために職員室に向かった。
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