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味【ヤンデレ編】
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恋人の作った料理が好きだ。ヒカルはジャムが掛かったヨーグルトをスプーンで掬いながら、この現実に息を止めた。幸せだ、息が詰まるくらいに満たされて、あまりにも。――いっそ、彼の作った料理しか食べられなくなってしまえばいいのに。恋人が関わっていない食事は美味しくなくて、最近では子供の頃から好きだったパンだって喉を通っていかない。ラーメンは相変わらず好きだけれど、どうしても食べたくなる頻度が減っているかもしれない。槿の料理は美味しくて――いや、これは体の良い理由付けなのだろう。詰まるところ、ヒカルは槿ともっと一緒に居たいだけだった。
「槿さん」
貴方の料理以外を、進んで食べたいと思わなくなってきた。きっとそう告げれば、優しい彼はヒカルの隣にずっと居てくれるだろう。ヒカルは言いかけて口を噤んだ。汚い打算を知られたら、きっと槿は幻滅してしまう。自分の我儘が生んだ束縛の鎖を巻き付けるのは容易いのに、それを知られたくない。ソファーに転がって読んだソネット集の作者の言葉通り、この恋は卑しいものだった。
「どしたよ」
「……何でもないです」
ヒカルが慌てて訂正すれば、槿は微笑んで彼女の頭を撫でる。皿はとっくに空になっていた。
「槿さん」
貴方の料理以外を、進んで食べたいと思わなくなってきた。きっとそう告げれば、優しい彼はヒカルの隣にずっと居てくれるだろう。ヒカルは言いかけて口を噤んだ。汚い打算を知られたら、きっと槿は幻滅してしまう。自分の我儘が生んだ束縛の鎖を巻き付けるのは容易いのに、それを知られたくない。ソファーに転がって読んだソネット集の作者の言葉通り、この恋は卑しいものだった。
「どしたよ」
「……何でもないです」
ヒカルが慌てて訂正すれば、槿は微笑んで彼女の頭を撫でる。皿はとっくに空になっていた。
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