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ユメノナカ
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リビングでテレビを見ていると、家のチャイムがなった。
ドアを開けるとそこには貫兵衛くんとウィルくんがいた。
「あがっていきなよ」
俺が言うと、二人は何の遠慮もなく自分の家のように上がってきた。三人でゲームとかして、他愛の無い話をする。
ウィルくんの新しいバイトの話になった頃、またチャイムが鳴った。使いっ走りの子鬼に出るように言ったが、他の事をしているようで返事が無い。
「ちょっと待ってて」
ゲームボーイを置いてドアへ向かった。ドアを開けるとそこにはハサンくんと梅花ちゃんがいた。彼らが来るなんて珍しい。もちろん二人も家に上げた。
ハサンくんが持ってきたパニープーリー(小ぶりの揚げ菓子。インドの定番のおやつとして有名)を、こころちゃんも呼んできて四人で食べた。
……何だか違和感がある。けどまあ、いいか。
梅花ちゃん特製の桃まんも美味しいし、ハサンくんのクナーファ(中東・バルカン半島のお菓子。地域によって異なるが、大概クナーファの生地でチーズや乳脂肪クリームを覆った、ケーキ状の甘い揚げ菓子)も美味しい。
梅花ちゃんの気分次第で締めあげられながらも、昨日来たスピカちゃんがお裾分けしてくれた麻花(かりんとうに似た、小麦粉をこね、油で揚げて作る中国華北の菓子)を皿に分ける。
一口食べたところで、またチャイムが鳴った。今日はやけにお客が多いなあ……退屈しないけど。鳴り止まないチャイムに苛つきを覚えつつ、ドアを開ける。
ウィッカさんが立っていた。ひいい、結婚式と葬式がいっぺんにやってきたみたいだ。
「お邪魔します」
なんて、しらじらしく言いながら無理矢理家に上がられた。別にいいけど。
勝手にリビングに入って勝手にソファーに座る。これ美味しいね、なんて摘むのはいいんだけど、俺のデザートまで食べないでよ。
彼女の反対側のソファーに俺が座ると、ウィッカさんは近くにあったティーポットとティーカップを手に取り、二人分のティーを注ぐ。差し出されたティーを一口飲む。爽やかなジャスミンの香りが口の中に広がる。
「――で、何の用なの」
ジャスミン茶の香りを楽しそうに仰ぎながらウィッカさんが話しかけてきた。
「――勘が鋭い君ならもう分かってると思うんだけど、」
何のこと? 貴方の仕事の話? それとも、ただの世間話?
ティーカップを弄りながら、彼女は透き通るような冷たい声で、呟いた。
「――君はあの箱を開けてしまった。肉の器を喪った君が居られる場所は限られる」
「――だって、家の中から出られないでしょう?」
……ああ、そうか。さっきからある違和感はこれだったのか。
ドアを開けるとそこには貫兵衛くんとウィルくんがいた。
「あがっていきなよ」
俺が言うと、二人は何の遠慮もなく自分の家のように上がってきた。三人でゲームとかして、他愛の無い話をする。
ウィルくんの新しいバイトの話になった頃、またチャイムが鳴った。使いっ走りの子鬼に出るように言ったが、他の事をしているようで返事が無い。
「ちょっと待ってて」
ゲームボーイを置いてドアへ向かった。ドアを開けるとそこにはハサンくんと梅花ちゃんがいた。彼らが来るなんて珍しい。もちろん二人も家に上げた。
ハサンくんが持ってきたパニープーリー(小ぶりの揚げ菓子。インドの定番のおやつとして有名)を、こころちゃんも呼んできて四人で食べた。
……何だか違和感がある。けどまあ、いいか。
梅花ちゃん特製の桃まんも美味しいし、ハサンくんのクナーファ(中東・バルカン半島のお菓子。地域によって異なるが、大概クナーファの生地でチーズや乳脂肪クリームを覆った、ケーキ状の甘い揚げ菓子)も美味しい。
梅花ちゃんの気分次第で締めあげられながらも、昨日来たスピカちゃんがお裾分けしてくれた麻花(かりんとうに似た、小麦粉をこね、油で揚げて作る中国華北の菓子)を皿に分ける。
一口食べたところで、またチャイムが鳴った。今日はやけにお客が多いなあ……退屈しないけど。鳴り止まないチャイムに苛つきを覚えつつ、ドアを開ける。
ウィッカさんが立っていた。ひいい、結婚式と葬式がいっぺんにやってきたみたいだ。
「お邪魔します」
なんて、しらじらしく言いながら無理矢理家に上がられた。別にいいけど。
勝手にリビングに入って勝手にソファーに座る。これ美味しいね、なんて摘むのはいいんだけど、俺のデザートまで食べないでよ。
彼女の反対側のソファーに俺が座ると、ウィッカさんは近くにあったティーポットとティーカップを手に取り、二人分のティーを注ぐ。差し出されたティーを一口飲む。爽やかなジャスミンの香りが口の中に広がる。
「――で、何の用なの」
ジャスミン茶の香りを楽しそうに仰ぎながらウィッカさんが話しかけてきた。
「――勘が鋭い君ならもう分かってると思うんだけど、」
何のこと? 貴方の仕事の話? それとも、ただの世間話?
ティーカップを弄りながら、彼女は透き通るような冷たい声で、呟いた。
「――君はあの箱を開けてしまった。肉の器を喪った君が居られる場所は限られる」
「――だって、家の中から出られないでしょう?」
……ああ、そうか。さっきからある違和感はこれだったのか。
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