上 下
20 / 22

天気【子世代】

しおりを挟む
「明日の天気は雨だねぇ」

 別に占いの結果や予知夢でもなく、今までの経験からでもない。ただ天気予報を見ていたからの発言だった。今回は当たり目らしい。その証拠に先程からどうも空模様が怪しい。そして風も湿り気を帯びている。だから自分の確信は正しい。それでも彼女は首を横に振る。

「ちゃいますよ、晴れます」
「……美空ちゃんはアタシの言う事が信じられないのかい?」
「それかてどーせどこぞから電波を受信したんでしょ?」
「どうせなら予言と言ってもらいたいもんだねぇ」

 顔を顰めて抗議しても、彼女はきゃらきゃら笑うだけ。ついでに背中を撫でてくる。……自分は怪我をして愚図る子供か。こういう扱いをされるのは、結構嫌いじゃない。

「それに天気予報では雨だと言ってたよぉ」
「予報は所詮予報でしょ」
「じゃあ、何で美空ちゃんは明日は晴れだと思うんだい?」
「チョー直感!」

 自信満々な彼女に問いかけてみれば、そんな能天気すぎる回答が飛び出してくる。真剣に答えた彼女もアホだが、バカ正直に聞いた自分は更なる大バカに値するだろう。呆れを通り越して疲労を感じ、とびきり深い溜め息を吐いてしまう。

「晴れやんかったら天気の神さん恨むで。明日は皆で遊ぶのに」

 ――仮に雨が降ったとしても、遊ぶ事は出来るだろうに。彼女の、台風も裸足で逃げ出しそうな、晴れやかな笑顔が台無しにならない為に。明日天気になあれと柄にもなく祈った、その翌日。彼女の言う通り、昨日の悪天候はどこへやら。雲一つ見当たらない、晴れ渡る青空! 笑うしかなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

おかしな夫婦(6/26更新)

狂言巡
キャラ文芸
 ヤンデレなイケメンが妻と共に相続した土地と遺産でスローライフを満喫している短編集です。  ――この小説はあくまでフィクションであり、犯罪行為を支持・助長・幇助する意図は一切ありません。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

処理中です...