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ろくでなしの恋

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 河川泰雅はフラついて、どうにか踏み止まり、林檎のように熱が集中した頬を抑える。買ったばかりのワインが落ちるけれど、そんな事はどうでもいい(残骸を持ち帰れば同僚の能力で元通りだ)。目があったわけでもない、言葉を交わしたわけでもないのに。横をすり抜けて同世代の少女達と共にバスに乗った少女の後ろ姿をいつまでも見つめていた。
 ――たった一目で、どうしようもない恋に溺れた。自分には未成年に欲情する悪夢のようなおぞましい性癖は持っていなかったはずであるが、泰雅の脳裏に『よるちゃん』と呼ばれた少女が焼き付いて離れない。声が聴きたくて、自分を観て欲しくて仕方がなくなった。
 そして糸を結び忘れた事を、彼女と偶然再会するまで後悔した。生誕して二十数年。退屈する程に要領よく生きてきて初めての失態だった。
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