異星婚(8/6更新)

狂言巡

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星見

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 The beauty is an object of the awe.
 星が、きらきら、輝いている。夜の色は染料の黒ではなく、深く深く落ちていった太陽の嘆き。艶やかに笑う月は歓喜に満ちている。感傷に浸る暇などないくせに、貴女は時に微笑みさえ浮かべて、その視線を煌めく穴ばかりの天上へと飛ばす。何かあるのかと尋ねれば、何もないですよと返される。……同じ感情に浸れない自分が憎らしい。
 彼女の隣は確かにほわほわあったかくて、ブルブル凍える事などなかったけれど、それらはいつか壊れてしまうのだろうと、終わりの瞬間を予測していた。ひらり、花が枯れて落ちていくように、優しくそれは訪れるのだ。呼んでもいやしないのに!
 でもそれが彼女の手から奏でられていくというのなら、それでもいいと思った。――グリーンにとっては穴だらけの夜空でも、彼女にとっては愛する対象でしかない――。火傷しそうな優しい温度であっためてくれる、柔らかな彼女から、いつか迎える終わりの言葉をホロリと零してくれればいいと思った。それは、ただ美しいモノを恐れる事しか出来ない、愚か者の逃げ口上。
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