異星婚(8/6更新)

バランス

　ある日、自分達の世界は三角形になった。それまで均等を保っていた自分達の世界に、地球のメスが一匹、突然現れた所為だ。しかし何の拒絶反応も起きないまま、自然と溶けこんできて、それまで世界は姉にとって弟、弟にとって姉しか居なかったのに、もう一人増えてしまった。
　彼女は無意図的ながら、強引に侵入きたのに、自分達は嫌悪も敵意も抱かなかった。実はずっと無意識の内に、あのメスのような存在を求めて、待ち焦がれていたのかもしれない。彼女が侵入してきた事によって、世界が壊れてしまうと思った。
　それでもいいと思った。どうせこんな世界なんて要らないんだから。彼女を口実にして世界を壊して消そうとした。ずっと狭いと思っていた二人の世界は、実は許容範囲が広かったらしく、彼女が一人くらい入ったくらいでは微動だにしなかった。拒絶なんて以ての外。ストンと落ちてきた彼女は、それでも相変わらず笑みを絶やさなかった。姉が話しかけても、弟が話しかけても。笑うし、優しかった。
　もしも、彼女が居なくなったとしたら。二人だけの世界に元通り。でもその時は、前みたいに均等を保てるとは思えない。もう彼女の居ない世界なんて、自分達には意味が無いのだから。