クリスマス掌編(1/3編集)

狂言巡

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リース

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「黒松、何か作ってんのか?」

 義光が立ち去ったキッチンに、再びの来訪者。夏生は散らばったテーブルを覗き込む。

「リースよ」
「りーすぅ?」
「そう。玄関にも飾ってあるでしょ」
「あー、あれ」

 玄関の扉に掛かっている緑色の丸っこい物体を思い出す。それにしても、歌留多が今作っている物は、それからは程遠い気がした。丸く形作られているそれは、どう見ても……。

「唐辛子だよな?」
「ええ、今年、贈ってもらった物がこれだったからね」

 リースの材料になる物を、母の実家の近くに住んでいる伯母一家から送ってもらったらしい。赤唐辛子で土台の輪を作り、その周りに乾燥させた実などをくっつけている。

「つーかよ、これ作ってどうすんだ?」
「知らないかしら? リースというのは、幸せを呼び込む意味があるの。また、始まりも終わりもないその形から、「永遠」や「円満」を意味しているわ。歴史はずいぶんと古いようで、キリスト以前のギリシャ時代にも、結婚式や春のお祭りに使われていたみたい」
「……オレにむっつかしーこと言うなよ……でも、まあ、黒松がこれを作っているっつーことは」
「そうよ、うちの寮でも無事にクリスマスを迎えられるようにね」

 出来上がったリースを満足そうに見つめている歌留多を、夏生は傍らで不思議そうに見ていた。穏やかな日曜日の午後の光が、寮のキッチンに射しこんでいた。クリスマスは少しずつ、近づいてくる。
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