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マンション
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弟はマンションの五階に住んでいる。でも俺は絶対エレベーターを使わない。だって赤ん坊が天井にくっついているから。
「何もして来ないよ?」
そういう問題じゃねぇよ……。
女性にしか貸さない部屋がある。週に数回、クレームを入れる隙さえ与えない美しいアカペラが聞こえるのだが、住人が男性だとびしょ濡れの衣服を残したまま、失踪してしまうからだ。
最上階の部屋を借りる時、ベランダにずっと水を貯めた入れ物を置いておく事を約束させられた。水槽だと光が反射して小火が怖いし。週に数回、ボチャンって。無理やり脱色されたような灰色の金魚がね、降ってくるんだよ。管理人が引き取ってくれるそうだ。
ノックが五月蠅い。上階には誰も住んでないのは確認済みだ。
「これ、内側から叩いてね……?」
「外だろうが内だろうが鬱陶しいっての」
恐怖より苛立ちが募る。
引っ越していく未亡人を背中を見送りながら、管理人は溜め息を吐く。本当は家賃を安くして入居者を独身者限定にしたいけど、そんな事したら『曰くあります』と喧伝するようなもんだしなぁ……。
全く、見栄はって十階以上の部屋なんて選ぶんじゃなかったわ。
「ねーねーママ、あの窓から覗いてるおねーさん、入れてあげなくていいの?」
「何もして来ないよ?」
そういう問題じゃねぇよ……。
女性にしか貸さない部屋がある。週に数回、クレームを入れる隙さえ与えない美しいアカペラが聞こえるのだが、住人が男性だとびしょ濡れの衣服を残したまま、失踪してしまうからだ。
最上階の部屋を借りる時、ベランダにずっと水を貯めた入れ物を置いておく事を約束させられた。水槽だと光が反射して小火が怖いし。週に数回、ボチャンって。無理やり脱色されたような灰色の金魚がね、降ってくるんだよ。管理人が引き取ってくれるそうだ。
ノックが五月蠅い。上階には誰も住んでないのは確認済みだ。
「これ、内側から叩いてね……?」
「外だろうが内だろうが鬱陶しいっての」
恐怖より苛立ちが募る。
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全く、見栄はって十階以上の部屋なんて選ぶんじゃなかったわ。
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