カゾクカイダン(10/16更新)

狂言巡

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 妹は変な男ばかり好きになる。ついこの間別れた男の実家に行くと、リビングの棚にたくさんのカメラが置いてあった。それらは両親と弟妹と祖父母だと紹介された。そのマニアックな愛し方で妹はもう十分引いていたが、極めつけは帰るまでずっとカメラがある方から複数の視線を感じていたらしい。





 妹は結婚後、料理に凝っていたらしい。遺品整理で調理器具を片付けている途中、手に取ったまな板を引っ繰り返すと自分の家族の殺人計画が刻まれていた。





 煩いなぁ、何観てんの。妹の部屋に行くと、赤一色のスクリーンと椅子。すっと真っ白な掌が画面に映り、バイバイと左右に振られて消える。妹はアレから行方不明だ。彼女は左利きだった。あの映った手も左手だった。





 夫が不倫相手と逃げて意気消沈していた妹が、突然旅行に行くと言い出した。悲しみと絶望のあまり自死を選ぶのではないかと心配になって後をつける。崖へと続く道の入口に座り込む妹に、同世代らしき女の幽霊が寄り添う。背をさする腕と眼差しは労りに満ちていながら、唇は「早く進め」と繰り返していた。





 可愛いとバズった、若い女の人が子犬を抱っこして歩いているのを撮影した映像。数年前に行方不明になった妹だ。不可思議なのは、彼女は母親譲りの犬アレルギーで、自作の一点物のワンピースは納戸で衣装箪笥の奥に吊るされたまま。本人と一緒に。





 上階から小包が降りてきた。拙い日本語で「おとどけもの」と書かれている。この国独特の交流方法なのかと包みを開けると、故郷の山に埋めた妹の首が入っていた。





 空に空いた穴に手を振ってみると、鍵が落ちてきた。何だっけと記憶を辿ると、動かなくなった妹を隠したロッカーの鍵だと思い出せた。





 濡れ鼠の行列の先頭は、失踪した妹だった。何でも割り込んで掠めとるの得意だったからなぁ。





 初めての一人旅。宿泊先の部屋の机の上に見慣れたぬいぐるみが置いてあった。一人隠れんぼで使った妹のぬいぐるみ。どうして……葬式の時に一緒に燃やしてもらったのに……。





 服という服が棒状に絡み付いた物体が部屋に落ちていた。端を剥がすと塊の芯は妹。粗雑に扱った報いだよ。
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