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二次元飯
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リオンは母の趣味であった日本のアニメで日本語を覚えたといっても過言ではない。だからといってアニヲタかといえばそうでもなく、長兄と三男と比べればその手の知識が豊富なだけ。アニメに出てくる料理を作ろうと思い至ったのも、妻が喜ぶだろうと思ったのが八割で後は他に作りたい物が思いつかなかったからだ。
「ウマそうな匂いすんな」
帰宅した蒼龍が寸胴鍋の蓋を開けると、ふわりとわき上がる湯気が一瞬で視界を遮り、すぐに掻き消えて全貌を顕にした。野菜がたっぷり入ったビーフシチューだ。
「俺こんくらい具がデケー方が食べ甲斐あって好きだわ」
「リオンさんが作ってくれました。一昨日世鷹さんが買ってきてくれたパンも残ってるし、一緒に頂きましょうか」
黒猫が話す間にも蒼龍は勝手に小振りの椀にシチューをよそい、スプーンで行儀よく摘み食いをしてしまう。顔がすぐに綻ぶ。
「なにこれうまっ、しつこくないのにスゲー味濃い! あいつもメシ作んのうめーよなぁ! しかもルーがどろっとしてんのもいい」
「えーと、本人曰く失敗しちゃったそうで……牛肉をほろほろにしようと煮込んでるうちに野菜が溶けて固いルーになっちゃって、今ちゃんと形がある野菜は後入れしたらしいですよ」
「ふーん、だから今もお前の膝枕で落ち込んでるわけね」
「はい」
ソファーに座る黒猫の膝には、彼女の腹の方に顔を向けてふて寝をする次兄がいた。三男もそうだが自分と違って相当事細かく計画するため、頓挫した時は人一倍落ち込むのだ。黒猫は今の彼に何を言っても届かない事を知っているので、リオンの頭の上に文庫本を置いて読書を続けている。
「ウマそうな匂いすんな」
帰宅した蒼龍が寸胴鍋の蓋を開けると、ふわりとわき上がる湯気が一瞬で視界を遮り、すぐに掻き消えて全貌を顕にした。野菜がたっぷり入ったビーフシチューだ。
「俺こんくらい具がデケー方が食べ甲斐あって好きだわ」
「リオンさんが作ってくれました。一昨日世鷹さんが買ってきてくれたパンも残ってるし、一緒に頂きましょうか」
黒猫が話す間にも蒼龍は勝手に小振りの椀にシチューをよそい、スプーンで行儀よく摘み食いをしてしまう。顔がすぐに綻ぶ。
「なにこれうまっ、しつこくないのにスゲー味濃い! あいつもメシ作んのうめーよなぁ! しかもルーがどろっとしてんのもいい」
「えーと、本人曰く失敗しちゃったそうで……牛肉をほろほろにしようと煮込んでるうちに野菜が溶けて固いルーになっちゃって、今ちゃんと形がある野菜は後入れしたらしいですよ」
「ふーん、だから今もお前の膝枕で落ち込んでるわけね」
「はい」
ソファーに座る黒猫の膝には、彼女の腹の方に顔を向けてふて寝をする次兄がいた。三男もそうだが自分と違って相当事細かく計画するため、頓挫した時は人一倍落ち込むのだ。黒猫は今の彼に何を言っても届かない事を知っているので、リオンの頭の上に文庫本を置いて読書を続けている。
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