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再会/転移者と転生者
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「――ヒカルちゃん」
ガラクタの死角から現れたのは、端整な顔立ちの青年だった。白皙の膚に暗い緑の髪、髪よりは明るい切れ長の碧眼。静謐で知的であるというのに、ゾッとするような凄みがある。東洋系であろうが、多少は西洋の血が混じっているのかもしれない。年頃はヒカルより少し上だろうか。初対面で言葉も碌に交わしていないのに、才知が際立っている事が判る。すらりと背が高い彼は、初対面で言葉も碌に交わしていないのに才知が際立っている事が判る。ヒカルを見ると蕩けるように、それでいて泣きそうな顔で微笑んだ。
グイッと腕を引かれて、ポタポタと生温かい滴が顔に落ちてきた。それは止まる事がない。どうしてか、この青年が泣いている姿を見るのはすごく居心地が悪かった。こんな風に本気で自分を見て泣かれるなんて、何年ぶりだろうか。とても落ち着かない。何かあったのだろうか。落ち着かせようと背中を撫でようとすると、それを答えと受け取ったのか、急に顔が近づいてくる。
「ヒカルちゃん、ヒカルちゃん、ごめんよ、俺が悪かったよ」
「……ん、んっ、ふぁ……」
それなりにある体格差で、躰を引き寄せられて、頬が近づき、涙を流したまま唇を重ねられた。舌先で唇をつつかれ、思わず薄く開いた口に熱い舌が滑り込んで来て、ヒカルの舌を絡め取り、己の咥内に招き入れて吸い上げる。触れる指先は冷たいくらいなのに、咥内は酷く熱く感じた。
「寂しかったよ。会いたかった」
みっともない程に泣きながら、嗚咽混じりにキスをされるというとんでもない状況に、ヒカルは驚きで目を白黒させる事が精一杯だ。やっと離れると、青年はまた泣き出した。そしてギュウギュウとヒカルを抱き締めたまま、ずるずると膝をつく。まるで悪夢に魘され、お気に入りのヌイグルミを抱き締めなければ眠れない幼子のように、離そうとしなかった。
自己紹介もなく、ハグするわキスをするわの奇行を咎める気は、今のところなかった。でも、どうして自分にこんな事するのかが一切心当たりがなくて首を傾げる。
「ごめん、ごめんよ――許してくれとは言わない、ただ君に謝罪と愛の言葉を捧げたい」
「なんで、名前を知ってるんですか?」
この世界に召喚された当時に何度か名乗った事はあるが、登録されているのは別の名前だ。ヒカルの尤もな疑問に、青年はとても困った顔をして眉を下げた。ボロッとまた涙が零れる。
「好きだよ、愛してるんだ、ヒカルちゃん」
耳元で独占欲と欲情を帯びて滴る、擦れた甘い声をヒカルはずっと前から知っている気がした。
ガラクタの死角から現れたのは、端整な顔立ちの青年だった。白皙の膚に暗い緑の髪、髪よりは明るい切れ長の碧眼。静謐で知的であるというのに、ゾッとするような凄みがある。東洋系であろうが、多少は西洋の血が混じっているのかもしれない。年頃はヒカルより少し上だろうか。初対面で言葉も碌に交わしていないのに、才知が際立っている事が判る。すらりと背が高い彼は、初対面で言葉も碌に交わしていないのに才知が際立っている事が判る。ヒカルを見ると蕩けるように、それでいて泣きそうな顔で微笑んだ。
グイッと腕を引かれて、ポタポタと生温かい滴が顔に落ちてきた。それは止まる事がない。どうしてか、この青年が泣いている姿を見るのはすごく居心地が悪かった。こんな風に本気で自分を見て泣かれるなんて、何年ぶりだろうか。とても落ち着かない。何かあったのだろうか。落ち着かせようと背中を撫でようとすると、それを答えと受け取ったのか、急に顔が近づいてくる。
「ヒカルちゃん、ヒカルちゃん、ごめんよ、俺が悪かったよ」
「……ん、んっ、ふぁ……」
それなりにある体格差で、躰を引き寄せられて、頬が近づき、涙を流したまま唇を重ねられた。舌先で唇をつつかれ、思わず薄く開いた口に熱い舌が滑り込んで来て、ヒカルの舌を絡め取り、己の咥内に招き入れて吸い上げる。触れる指先は冷たいくらいなのに、咥内は酷く熱く感じた。
「寂しかったよ。会いたかった」
みっともない程に泣きながら、嗚咽混じりにキスをされるというとんでもない状況に、ヒカルは驚きで目を白黒させる事が精一杯だ。やっと離れると、青年はまた泣き出した。そしてギュウギュウとヒカルを抱き締めたまま、ずるずると膝をつく。まるで悪夢に魘され、お気に入りのヌイグルミを抱き締めなければ眠れない幼子のように、離そうとしなかった。
自己紹介もなく、ハグするわキスをするわの奇行を咎める気は、今のところなかった。でも、どうして自分にこんな事するのかが一切心当たりがなくて首を傾げる。
「ごめん、ごめんよ――許してくれとは言わない、ただ君に謝罪と愛の言葉を捧げたい」
「なんで、名前を知ってるんですか?」
この世界に召喚された当時に何度か名乗った事はあるが、登録されているのは別の名前だ。ヒカルの尤もな疑問に、青年はとても困った顔をして眉を下げた。ボロッとまた涙が零れる。
「好きだよ、愛してるんだ、ヒカルちゃん」
耳元で独占欲と欲情を帯びて滴る、擦れた甘い声をヒカルはずっと前から知っている気がした。
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