18 / 25
蒼崎聡俊の誕生日
しおりを挟む
「「「「「Trick or Treat!」」」」」
部室の扉を開けた途端、この言葉が耳を劈く。一瞬怯んで、つい後ろに下がってしまったのだが。よくよく見ると。そこには皐月の姿が。しかもご丁寧に仮装までしていらっしゃる。
「アオちゃんハローハロー!」
「……ハローじゃねぇよ……」
入口に立ち塞がる、猫耳とその尻尾を付けた皐月を押しのけて部室に足を踏み入れた。するとそこには……。
「……部長……」
眉間に皺を思いっ切り寄せた、如何にも苦渋の表情を浮かべてる神名月部長は。襟がピンと立った黒いマントを羽織っていた。いわゆる吸血鬼か?
「……止められなかったんですね……」
その言葉にコクリと頷く。ちらりと部室の隅に目をやると、春朝と露草先輩の餌食に梅桜と雪城が標的にされてた。哀れなり。内心同情してると、ポンと肩を叩かれる。振り向くと斜め上からひょうきんな笑みを浮かべた人面カボチャ。ジャック・オ・ランタン。それを被った陽炎先輩は、白っぽい浴衣を着て、柳の下に出てきそうな格好をしている。何つーか……和洋折衷だ。
そんな人間がごちゃごちゃしてる部室の中を、やっと思いで自分のロッカーに辿り着く。扉を開けた瞬間。後ろから大量に破裂音。驚いて振り向くと同時に。頭上から赤・白・青の星条旗のような色のテープが雨のように降り注ぐ。見れば。嬉しそうに炎天堂が持つその手には。(一つ目小僧だった)小型のバズーカ砲のような黒々とした物体が。
「「「「ハッピーハロウィン&ハッピーバースデー! 蒼崎聡俊!」」」」
カラフルな視界の向こうにいるたくさんの笑顔、とっても楽しそうで。気付くと自分も笑ってた。
「はい。ハロウィンだからお菓子の詰め合わせだよ~! お誕生日おめでとうソウくん!」
「はいどうぞ」
水色のワンピースに白いエプロン姿の如月(不思議の国のアリス?)とトンガリ帽子に黒い上着を羽織った梅桜(魔女だな絶対)が手渡してくれた大きな紙袋。――ハロウィンと自分の誕生日なんて関係ないと思っていたけど。そうでもないみたいだ。
「蒼崎君。はい、おめでと」
さっき彼らの餌食になっていた雪城から手渡されたのは。(中華っぽい上着と半透明のお札がついた帽子……キョンシーか?)鎖にぶら下げた大きな懐中時計。
「コレかけろって?」
コクコクと頷く友人と先輩達。カメラもご丁寧に準備されてる。用意周到だな……。
「これもこれも! アオちゃん!」
皐月から手渡された兎の耳付きカチューシャと。仮装した皆で。フレームに収まった十五歳の誕生日。
部室の扉を開けた途端、この言葉が耳を劈く。一瞬怯んで、つい後ろに下がってしまったのだが。よくよく見ると。そこには皐月の姿が。しかもご丁寧に仮装までしていらっしゃる。
「アオちゃんハローハロー!」
「……ハローじゃねぇよ……」
入口に立ち塞がる、猫耳とその尻尾を付けた皐月を押しのけて部室に足を踏み入れた。するとそこには……。
「……部長……」
眉間に皺を思いっ切り寄せた、如何にも苦渋の表情を浮かべてる神名月部長は。襟がピンと立った黒いマントを羽織っていた。いわゆる吸血鬼か?
「……止められなかったんですね……」
その言葉にコクリと頷く。ちらりと部室の隅に目をやると、春朝と露草先輩の餌食に梅桜と雪城が標的にされてた。哀れなり。内心同情してると、ポンと肩を叩かれる。振り向くと斜め上からひょうきんな笑みを浮かべた人面カボチャ。ジャック・オ・ランタン。それを被った陽炎先輩は、白っぽい浴衣を着て、柳の下に出てきそうな格好をしている。何つーか……和洋折衷だ。
そんな人間がごちゃごちゃしてる部室の中を、やっと思いで自分のロッカーに辿り着く。扉を開けた瞬間。後ろから大量に破裂音。驚いて振り向くと同時に。頭上から赤・白・青の星条旗のような色のテープが雨のように降り注ぐ。見れば。嬉しそうに炎天堂が持つその手には。(一つ目小僧だった)小型のバズーカ砲のような黒々とした物体が。
「「「「ハッピーハロウィン&ハッピーバースデー! 蒼崎聡俊!」」」」
カラフルな視界の向こうにいるたくさんの笑顔、とっても楽しそうで。気付くと自分も笑ってた。
「はい。ハロウィンだからお菓子の詰め合わせだよ~! お誕生日おめでとうソウくん!」
「はいどうぞ」
水色のワンピースに白いエプロン姿の如月(不思議の国のアリス?)とトンガリ帽子に黒い上着を羽織った梅桜(魔女だな絶対)が手渡してくれた大きな紙袋。――ハロウィンと自分の誕生日なんて関係ないと思っていたけど。そうでもないみたいだ。
「蒼崎君。はい、おめでと」
さっき彼らの餌食になっていた雪城から手渡されたのは。(中華っぽい上着と半透明のお札がついた帽子……キョンシーか?)鎖にぶら下げた大きな懐中時計。
「コレかけろって?」
コクコクと頷く友人と先輩達。カメラもご丁寧に準備されてる。用意周到だな……。
「これもこれも! アオちゃん!」
皐月から手渡された兎の耳付きカチューシャと。仮装した皆で。フレームに収まった十五歳の誕生日。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
思い出を売った女
志波 連
ライト文芸
結婚して三年、あれほど愛していると言っていた夫の浮気を知った裕子。
それでもいつかは戻って来ることを信じて耐えることを決意するも、浮気相手からの執拗な嫌がらせに心が折れてしまい、離婚届を置いて姿を消した。
浮気を後悔した孝志は裕子を探すが、痕跡さえ見つけられない。
浮気相手が妊娠し、子供のために再婚したが上手くいくはずもなかった。
全てに疲弊した孝志は故郷に戻る。
ある日、子供を連れて出掛けた海辺の公園でかつての妻に再会する。
あの頃のように明るい笑顔を浮かべる裕子に、孝志は二度目の一目惚れをした。
R15は保険です
他サイトでも公開しています
表紙は写真ACより引用しました
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
裏切りの代償
志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。
家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。
連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。
しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。
他サイトでも掲載しています。
R15を保険で追加しました。
表紙は写真AC様よりダウンロードしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる