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第103話 武勇祭 剣の部の優勝者

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身体に鉄球のような重いものが張り付けられるこの感覚。

やはり、仕掛けてきたか。観客席の方を見ると常人には見えないであろうドス黒い紫光をこちらに放っている集団がいる。

呪いの呪縛カースバインド……魔法とは異なる呪術の力の一つ……喰らってみて分かるが、やはり身体が怠い)

だが、支障が出るほどではない。これくらいの効力であれば全然対等に戦える。

「……チッ、僕とアクセルの邪魔しやがって……」

……この反応から見ると、どうやらアレスも喰らっているらしい。それもそうか、奴らの目的はアレスだ。おそらく消耗させたところを介入して攫っていくのだろう……だが。

「っ!な、なん……!?」

一瞬、そんな間抜けな声が聞こえて……奴らが人知れずどこかへ消えた後、先ほどの重い身体が嘘のように調子を取り戻す。

(ナイスだローレンス。奴らのことを頼む)

俺が彼女に目線を送ると、ローレンスはこちらに見せるように手をピースにしてから、どこかに消え去った。

「……これも君の予想通りってことかな?」

アレスが身体をポキポキと鳴らして、肩を回しながら聞いてくる。

「どっちにしても奴らは邪魔だろ?お前を奴らに渡すのはリスクが高すぎる」

「へぇ。僕のこと考えてくれたの?嬉しいなぁ。さっきも思ったけど他人口調じゃなくなったね!これってもう、親友ってことでいいよね?」

「ふざけるな。誰がお前と親友になるか。お前に仮面を被ったって無駄だろ?それならいつも通りに接する方がこっちの負担が減る」

「ちぇっ。そんなこと言って……でもまぁ今はそれでいいや。まずはさ……この戦いを楽しもうよ」

それだけ呟いて、その場から消えた。

見るといつの間にか懐に入ってきた。

その勢いのまま俺の身体目掛けて剣を突き刺してくる。

間一髪その攻撃をかわして、横に飛ぶ。

それを追うように奴はそのまま突っ込んできた。

血に染まる鋭く赤い斬撃の雨がこちらに迫ってくるのを最小限の動きで受け流し、避け続ける。

早いな。主人公補正のせいなのか、それともこいつ自身の力なのか……いや、どっちもか。

それだけ頭の中で考えて、奴の攻撃を弾き飛ばして隙を見せた所を今度はこっちが攻める。

アレスの身体目掛けて放つ高速の突き技。

それを奴は紙一重でかわしているが、数発もろに喰らっている。

「くっ…!強いな、やっぱり」

このままでは身体が持たないと考えたのか、一旦体勢を取るために、後ろに下がった。

だが、チャンスは与えない。このまま攻め続ける。

さっきとはまるで真逆の攻防をするように、俺は……少しだけ全身にある虚無力の動きを活発化させ、奴に迫る。

「うっそ!?それ反則じゃないの!?」

そう言ってくるが、反則ではない。

魔法さえ使わなければいいだけのことだ。それなら、自身の中にある魔力……虚無力を活性化させて身体能力を上げることは全然許容範囲だ。

奴の意表を突いたところを、自分とは全く異なる剣術でアレスに攻めかかる。

「うぅ……しかもこれ、ラーナの……!」

「お前のせいであいつが苦しんでるんだ。せめてこれでも喰らって反省しておけ」

ラーナに比べたら程遠い努力の剣……それを再現して怒涛のラッシュを叩き込む。

「……なら、僕だって!」

すると、奴の中にある魔力の流れが早くなる。どうやら俺の技を見様見真似したらしい。

癪に触るが、流石だな。

奴の身体能力が向上したことで、攻撃の速度が速くなる。自然と俺の剣とアレスの剣がぶつかり合う回数が多くなるのを感じた。

……力の押し合いならともかく、技術だけならあいつは負けねえぞ。

力任せに振ってくるその剣を何度も受け流してカウンターを繰り返す。

「うっそぉお……」

これにはアレスもドン引きしてるようだが、知らん。

そして奴が俺の鋭い剣術にやられているところを、渾身の一撃を与えるべく、足を踏み込み、赤い光を纏った剣をお見舞いする。


「ソード・ブレイク!」


奴の身体に一発もろに入ったのが伝わった。

「がはっ!」

そのまま、吹き飛ばされ、地面にバウンドしながら、壁に激突してようやく勢いが止まった、

「……やったか?」

……そんなフラグみたいなことを言ってみる。

これぐらいでやられる奴ではないのは、戦った俺がよく分かっている。

その考えが的中したように足取りがおばつきながらも、確実に立っている姿が視界に入った。

「いやぁ、やっぱり強いなぁ。これでも魔眼を開眼した状態で戦ったつもりなんだけどな……君の強さ、おかしくない?」

魔眼か……基礎的な能力の大幅上昇を促して、それぞれ片目ずつに固有の能力が宿っているという……ふざけた代物か。

「でもこれ。まだ慣れてないんだよね……目眩するし頭もクラクラするしで最悪だよ……だからさアクセル、これで終わらせよう」

すると、奴の纏っているオーラが急に濃くなるのを感じた。

身体の中の魔力の動きも更に早くなっているのが分かった。

……どうやら、奴はこの一撃で全てを掛けるらしい。

「君か、僕か。どちらがこの武勇祭を優勝出来るかは……これで決まる」

奴のオーラや魔力が剣に収束していき、それと比例するように光り輝いていた。

「……その勝負、受けて立つ」

俺は奴の挑戦を受けることにした。

だが、全力でやると悲惨な目になるのが目に見えてたので、今のアレスのレベルと合わせるように俺は力を放出する。

「……はは、なんだいそれ。もう原作以上の強さじゃないか」

「そっちこそ、まるで学園の時とは別物じゃないか」

「一生懸命頑張った結果だよ。それでも……全くアクセルに勝てる気がしないね」

「奇跡でも信じれば、勝てるかもしれないぜ」

「あははっ、ならそうすることにするよ……いくよ」

「……こいっ!」

それ以上は何もいらない。ただ必要なのはぶつりあうだけ。

俺とアレスが同時に地面を蹴った。

アレスはその膨大な力が湧き出る剣で、俺は不気味なほど静かな力を纏った剣でお互いの刃に交差し、やがてぶつかりあった。


「滅尽剣!!」

「創造剣!!」

刃と刃が触れ合った瞬間、衝撃波が生み出され、それに耐えきれないようにコロシアムのフィールドが更地へと変わった。

観客達もその場から吹き飛ばされないように必死に耐えてるように見えた。


「………なんとか、なったか」

ボロボロになった剣を見ながら地面に倒れているアレスの姿が目に入った。

観客はさっきみたいな盛り上がりとは真逆にこちらの方を黙って見守っている。


………約束通り、優勝したぞ……ラーナ。

今もこちらの方を凝視しているラーナの方を向いて笑ってやった。

『勝者っ!アクセル!!!』

そんなナレーターの言葉が言い放たれ、観客の声援を聞きながら俺は舞台から降りて行ったのだった。
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