全て失う悲劇の悪役による未来改変

近藤玲司

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第29話 ローレンスとのお勉強

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姉妹達に振り回された数日後のこと
俺は魔法について改めて理解を深めるために
屋敷にある図書館に来ていた。

このまま暫くは平和に過ごしても良かったが、時間が思ったより早く経過したり、なにより自分がもっと強くなれると考えてると、少し楽しみになってくる

そんな理由からか、俺は今日も修行というなの勉強をしようと思ってた。

と、そんなこんなで図書館に着いた。
俺はその大きすぎる扉を開いた。

「さて、今日はどこから勉強しようかな~…ん?」

どうやら先客がいたらしい。
周りを見てみると1人ポツンと座りながら今も本を読んでいる少女がいる。

せっかくなので俺はそいつの方に向かうことにする。

「ローレンス」

「ん?おぉ、アクセルか!どうしたのだ?」

「いやなに、魔法のことについて少し理解を深めたいからここで少し本でも読もうかなと思ってな」

今も大量の本を置いて、その一つを読んでいるローレンスに声をかける。

どうやら彼女の日課の一つらしい。
最近のことについて貪欲に知識を求めたいローレンスは今もここに留まって本を読んでいた。

「ほぉ~やはりアクセルは真面目なのだな」

「真面目て言われるかは分からんがまぁやりたいだけさ」

「そうか、我は嬉しいぞ?読書仲間が出来た気分なのだ」

「本好きなのかは分からんがな…それでどこにあるか分かるだろ?」

「おぉ流石は魂の盟友ソウルフレンド!我のことが分かるのだな!
あそこの奥の本棚に魔法関連の本が並べてあるぞ」

「分かった、ありがとう」

なんか一瞬変な単語が聞こえたような気がするが、まぁ気のせいということにしよう。

ローレンスが言った通り、奥の本棚に行くと分かりやすく魔法についての本が綺麗に並べてある。

「…これ、全部か?」
その量の多さに驚愕しながらもとりあえず適当に興味があるものから取っておく。

大量の中にあった魔法の本の中から少し聞き覚えのない単語があったのでそれから勉強しておこうと思う。

「...魔力器官?」

魔力器官
俺が小説を読んでる時は一度も聞いたことがなかったこの単語
だが、俺にとっては重要だと直感が言っている。

「ん?なんだお主、魔力器官について調べたいのか?」
本のタイトルを見たであろうローレンスが俺に聞いてくる。
...まさかだとは思うが

「なあ、この世界では魔力器官っていうのは知れ渡ってるのか?」

「当たり前ではないか?....お主そんなことも知らずに魔法を扱ってたのか?」

「い、いや....俺の場合は少し違うから」

「そうでなくともこの世界に生きる人間は知ってることだぞ?
我だって知ってるぐらいだ」

どうやら、この世界だと魔力器官については魔法を使う者にとっては常識らしい

あの作者、ここら辺は全く言及になかったからな。
そう考えてくるとまだまだこの世界についてわからないことが多い気がしてきた

「我が教えてやろうか?」
きっと俺の顔色を見たのだろう。ローレンスは少し考える素振りを見せて俺に提案する。

「いやお前の邪魔になるわけには....」
流石に他人の楽しみの邪魔になることに俺は遠慮を覚えたがローレンスは気にしない素振りで

「大丈夫なのだ。この本ならいつでも読めるし、我自身人に教えることがなくてな少ないし楽しみなのだ。それにその人物がアクセルなら尚更だ」

と答えてきた。
ここで遠慮するのはローレンスに失礼だと思うので俺は承諾することにした。

「分かった、じゃあお言葉に甘えさせてもらうよ」

「うむ、素直なのは良いことだ。では我が教えてやろう」
こうしてローレンス先生による魔力器官の説明が始まった。

「その前に少し良いか?」

「ん?なんだ先生?」

「せっ!?.....ま、まぁそれはいいとして」
そんなことを言うが、いままで呼ばれたことがないのか、彼女は動揺してソワソワしていた。可愛いなおい。

「お主、一体どのように魔法を使ってたのだ?ユニ―レから聞いた話によると外のエネルギーだけを利用して扱ってると聞いたが...」

「あぁ、ユニーレの言った通りで合ってるぞ」

「...そりゃあ、魔法の威力が100分の1になるわけだ」
ローレンスは納得したのか少しため息をつきながら俺の方を見ていた。

「...良いか?魔法が真にその力を発揮するのはこの世界では魔力と魔素を同時に使う時だ」

「同時に?魔力もなにか重要なのか?」

「当たり前だ。たしかに魔素の方が魔法を扱う時のメリットは大きい。
だがそれは、あくまで魔力がちゃんと扱えるかの前提だ」

「そうなのか?」

「うむ、そもそも魔力とはなにかアクセルはどう認識しておる?」

「....魔素が身体が染み込んだものだと考えてるが」

「なるほど大まかには合っているだろう。だが少し違う。
結論から言うと、魔力というのは身体の中で適応した魔素のことだ。」

「適応した魔素?」

「少し質問なのだがアクセル、お主だけが扱うそのエネルギー
すぐに使えたのか?」

「...いや」
そんなことはない。そもそも身体に流すだけで頭痛や吐き気という拒絶反応が起きた....あれは身体が慣れたから使うことだできたんだ....まさか

「...同じということか?」

「察しがいいな。そもそも我らが魔法を扱えるのはその身体にある適応した魔素があるからだ。要は自分が扱いやすい魔素にしてるのだ、自分の使いやすい物を使うと、物が真価を発揮するように威力も上がる。そこから魔力というものの解釈を広げ、そしてイメージさせる。これだけでも魔力を扱うだけでも強力な武器になる...だがデメリットもある。魔法を使う者にとって大きなデメリットがな」

「...魔力切れか」

「そうだ、だから昔ではそのデメリットを無くすために魔素という外のエネルギーを利用するのだ。そうすることで魔力切れはなくなるし、魔法の威力も魔力がしっかりと扱える者前提だが、その威力も大きな力となる」

「だがなぜ魔力前提なんだ?魔力を魔素に変えても威力に関しては変わらない気がするんだが」

「それは我らの中にある適応した魔力の密度が高くなるからだ」

「密度が高くなる?」

「少し魔素と魔力の役割ついて説明しようか、と言っても簡単にな。魔素は集めるものだとすると魔力はその集めたものを放出するのが役割だ....ここまで言ったらアクセルなら分かるんじゃないか?」

「つまり...魔素の本当の役割は魔力の配給
魔力はその配給された魔素を放つ...魔法にするということか」

「そういうことだ。もっというと魔力の密度が高くなるのは普通の魔素を自分だけの魔素に変えてるからだ。それをさらに魔力に変えることで魔法の力は何十倍にも強く、そして扱いやすくなるのだ」

「なるほど..だがどうやって自分の魔素に変えるんだ?そのまま流せばいいわけではないだろう?」

「そこで大事になるのが魔力器官だ」

「...魔力器官で変換してるということか?」

「うむ、魔力を扱うものにとって重要な器官だ。我らのどこかにあるが、正確な場所は分かってない。これがないとそもそも魔法が扱えないのだ。
魔素を魔力に、魔力を魔法に変換する。
その過程で外の魔素を自分の魔素に変えてるのだ」

「それが...魔力器官ということか」

「あぁ、魔力器官というよりも魔力の話になってしまったがな。だが、アクセルにとってとても有意義な時間を過ごせたんじゃないか?」

「そうだな...知識として参考になったよ」

「実戦では試さないのか?」

疑問に思ったのかローレンスが聞いてくるがそれもそのはずだ。

「俺の場合、魔力や魔素を扱えてもそれで魔法は使えないからな」

「なにを言っておる?そんなのお主の使うエネルギーに使えばよかろう?」

「....なに?」
そんなことができるのかと俺は疑問に思う。

「ユニーレも言っただろう?お主は扱ってる力が違うだけで魔力や魔素とほとんど同じものだと。我は確信してるぞ。お主の力はもっと強大になると」

「そうは言うがな...」

「お主は自分の力を舐めておるのだ。まだやってもないのにそんな弱腰になって、強くなりたいんじゃないのか?」

「ッ!」
....そうだ、俺は強くならないといけないんだ。
じゃなきゃ守りたいもんも守れない。
まだやってないことに弱腰になったらだめだよな。

「ローレンス、教えてくれ。俺は何をすればいい?」
俺の目つきが変わったのを見てローレンスはその意気だと言わんばかりに口を歪めた

「お主がやるべきなのは今のところ三つだ。
一つはまず魔法という現象を知れ。おそらくその力はアクセルの武器になるはずなのだ」

「分かった」

「二つ目だ。自分の中にある魔力器官を探せ」

「魔力器官を探す?」

「うむ、魔素を魔力に変える。これは変換しやすい所としにくい所がある。その変換しやすい所が魔力器官だ。それの正確な場所を理解し、そこに魔素を流し込むことで魔力の変換効率が上がるはずだ」

「なるほどな...」

「最後なのだが、少し復習だ。魔力の役割は?」

「魔素で溜めたものの放出」

「そうだ、お主の場合は外から集めたエネルギーを自分のエネルギーにしないでそのまま放出している。それだと威力も下がるし、消費量も半端ないことになる。
だからまずはそのエネルギーを自分だけのエネルギーに適応させて魔法を使うこと。
もしくは元からあるエネルギーで魔法を使うのだ。」

「前者はともかく後者の場合、おれには虚無力がないから...」

「ではなぜ禁句の魔導書のなかでその虚無力は扱えてた?」

「...それは外から配給して」

「だがほとんどはできなかったはずだ。外から魔力、お主の場合は虚無力。これをあの中で受け取るのはほとんど不可能だ」

「ここまで言えば分かるだろう?....お主には流れておるのだ。適応した虚無力というものが」

「ッ!...そういうこと、か」
あのとき、なぜあそこまで虚無力を最後まで使えてたのか少し疑問だった。
...だが俺の中に流れてるということなら理解できる

「勿論、無意識ということもあってまだ本領発揮はできなかっただろう。だがこれを正確に扱えればお主は大きく成長できる。まだ強くなれるのだアクセル」

「...そうか」

....なぜだろう、自分のダメな所を指摘されて落ち込む所なはずなのに
今、俺は凄く嬉しい気分だ。

まだ強くなれる、それだけで俺の心がドキドキするし、ワクワクも止まらない。

「分かった、早速試してみるよ」

「もう行くのか?」

「あぁ今すぐやりたい気分なんだ。ありがとうローレンス、お陰で助かった!」

俺はそのまま図書館を出た。自分の未来の姿を思い浮かべながら....







「...行ってしもうた、か」
我はアクセルが出したであろう魔法の本を元の場所に片付けながら呟いた。

「...えへへ、魔法のことで頼られたのは初めてなのだ」
自分の鼓動が早くなりながらも初めて魔法について褒めれらた気持ちが大きかった。

「頑張れ、アクセル」
今図書館にいるのは威厳を醸し出している魔女ではなく、
日々の日常を幸せと感じているただの少女だけであった。



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