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第六十九話 診療所はセーフルーム?

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 診療所を訪れるとすでに何人かの人がいた…って

 悟「お前ら何でこんなとこいるんだ???」

 診療所にはいつものフレンズがいた。

 伊角「私から説明しよう。昨日黒甲冑の鎧武者に襲われかけたんだ。」

 悟「黒甲冑の鎧武者…おい、まさかそれ悪心影あくしんかげじゃないか!?でも、」

 悪心影、ニャルラトホテプの化身の一つだったはずだ。見た目はかの有名な戦国大名の一人、織田信長そのものであり、見た目は漆黒の甲冑を着た鎧武者。現在ではスーツ姿を着込んだ状態で活動しているとも言われている。
 
 本来化身は言わばフォームチェンジ、吸血鬼がコウモリに変身するのと同じだ。しかし、ニャルの化身の取る性質や種類には恐らく制限が一切存在しない。
 その変幻自在ぶりは正しく混沌そのもの、人間形の化身一つに限定してもなんの力も持たないただの人間から、優れた才覚を有し人々に邪悪な知識を与える魔術師や科学者、特殊な能力を持ちその力を使い人間を破滅させる者、はたまた自分が化身だと気づいていない人間の化身までいる。
 他にも、植物の姿、別の神としての存在、動物、無機物といった化身は当たり前に存在しており、果てには嵐や風といった自然現象や、「解いた者を化身へと変えてしまう方程式」といった半ば概念のような化身も存在する。
 この際人格なども分たれるのだが、たぶん俺がいつも会っているニャルが本体だろう。厳密には本体なんて存在はしないが、あのニャルの状態から、初めて会った時の時間停止にンガイの森で分身、そんな芸当は本体以外は行えないだろう。
 独り歩きしている悪心影だが、アイツはあくまでも織田信長と同じ将軍だ。自ら動くことはせずに、どっかのトップに立ち、コマを動かす。

 だからこそ引っかかるのだ

 伊角「私も最初そう思ったさ。でもそれだったらニャルラトホテプがわざわざ辻斬りをするなんておかしくはないかい?しかも99人も」

 悟「言われてみればそうだが。というかお前ら辻斬り男にあったのか。」

 伊角「ああ、そこの彼女、春田さんに警察からの事情聴取の後、この診療所で保護してもらってね。そして春田からは絶対に1人になっては行けないと念押しされている。」

 悟「怪我はなかったのか?」

 晩野「それはなかった。ただ、目の前で新たな辻斬りの被害者を出してしまった。」

 悟「そうか。」

 春田「おはようございます。悟さん、いらっしゃったんですね。」

 そんなところにやって来た悟に春田が出迎えてくれる。

 悟「ああ。」

 春田「早速ですが、彼らが昨日の事件の第一発見者です。彼らは事件の重要参考人なので、話を聞いてあげてください」

 悟「それなら大丈夫です。ここにいる奴ら全員友達なので。」

 春田「あっ、そうなんですか。」

 悟「んで、何で連絡くれなかったんだ月島ちゃん?」

 月島「実は明野町に来てから外部との連絡が遮断されているみたいで、連絡しようにもできない状態で。」

 悟「マジか!?」

 狭間「それについては僕も悟に連絡入れようとしたけど、外との通信となると県外になっちゃって。それに、どうして外に出ちゃいけないんだろう?」

 春田「皆さんを此処に泊めたのには訳があります。まずはこれを見てください」

 すると春田は、ファイルを1つ取り出して貴方達に見せてくる。どうやら今までの事件の現場の様子をまとめたファイルのようだ。

[伊角
 図書館(60)→決定的成功クリティカル(1)
 図書館(60)→失敗(94)
 成長1d10→8
 図書館(60)→(68)

 晩野
 図書館(60)→成功(47)

 月島
 図書館(60)→失敗(90)

 悟
 図書館(60)→成功(47)

 狭間
 図書館(70)→成功(64)]

 狭間「資料のどの被害者も場所、時間問わず襲われてるし、被害者の中には自宅のトイレや航海中の漁船の中、刑務所の中とかの普通では侵入できないような場所でも殺されている。年齢や性別、生まれは関係ない、どれも全く関連性のない殺人、無差別殺人の極みでも見てるみたいだ。」

 晩野「だが全くではない。共通点は、どの被害者も少人数でいるところを襲われていること。一番多いのは1人のときであること。そして」

 悟「目撃した人は3日以内に命を絶っていて、殺された人間はどれも心臓を抉り取られていることか……」

 月島「つまり、私たちのタイムリミットは三日以内ってことですか!?」

 晩野「高い確率でそうだろう。」

 時間や場所は関係ない、密室などの犯行不可能な場所でも殺されている。
 被害者に年齢や性別等の共通点はなし。少人数(2~3)で襲われて、1人が最も危険。
 目撃者は三日以内に死亡。遺体はどれも心臓が取られている

 これどうやって攻略すんだ?

 伊角「資料を見たときに二人だけ心臓を抉り取られていない被害者がいた。備考には別の殺人事件の被害者かもしれないと、書かれているけどこれは…?」

 春田「犯人は、少人数で行動した人ばかりを襲っています。そして目撃した人も3日以内には殺害されるか、自ら命を絶っています」

 悟「自らですか?他殺ではなく?」

 春田「はい。推測ですが、犯人から逃げる恐怖に耐え切れなかったのでしょうか。一連の事件から、犯人の異常性が極めて高いことが分かります。だからこそ皆さんをあのまま返すことは危険だと思い、この診療所に留めたのです」

 狭間「そういうことだったのか。」

 晩野「確かに殺人現場の状況を見る限り、逃げ場もない。全員集まっている方が戦力の分裂もなく、比較的安全というわけか。」

 春田「ご存知かと思いますが、連日ニュースでやっている『明野町連続殺人事件』、今皆さんが巻き込まれてしまったものがまさにそれなのです。この資料を見てわかる通り、安全な場所は何処にもありません。今いるこの診療所さえも、いつ襲われるかわからないのでしょう」

 悟「神出鬼没、厄介だな。」

 春田「犯人は何かしらの方法を使って目撃者へ近づき、殺害を確実に実行しています。警察でも捜査はしていますが、犯人は今までにない特殊なケースの人物です。通常の捜査で犯人を見つけるのは不可能だと私は思っています。皆さんが助かるためには、今ここにいる全員で行動を起こして事件を解決に導くしかないのかもしれません」

 月島「私たち全員で…」

 狭間「解決…」

 春田「それから悟さん。」
 
 悟「はい?」
 
 春田「どうか彼らをサポートしてあげてくれませんか?私もぜひ協力させて頂きますし、貴方がいれば彼らにとっても心強いでしょうから」

 悟「任せてください。中川探偵事務所、中川悟とその愉快なフレンズでこの事件解決させてもらいます!!!」

 春田「それから行動する際に注意点があります。それは必ず1人で行動しないことです」

 悟「別に俺らの戦力だったら一人でも大丈夫じゃね?ムーンビースト1体にイス人一人、フィジカルお化けに発狂無効の二重人格。そしてこの俺、COCプレイヤー兼仮面ライダーミトスの中川悟。戦力としては申し分ないだろ。」

 伊角「しかし、相手の正体がまだつかめていない以上迂闊に手を出したらそんな私たちでも」

 悟「死ぬ可能性がある。わかってるさ。シナリオってのはそういうもんだ。神出鬼没だから、急に不意打ち攻撃されるかもだからそこは注意な。」

 春田「皆様やる気は十分なようですね。それでは私が集めてきた資料を全てお渡しします」

 春田は封筒から何枚かの紙を取り出して、貴方達に見せてくる。資料は全部で5つ。

 【被害者遺族の現在】
 ・武蔵綾乃(23歳女性)職業:美容師
 昨日殺された女性、武蔵瑞務(故47歳)の娘。現在まで別居中であった。職場は明野港前の美容院

 ・宮塚晶(19歳女性)職業:大学生
 半年前に殺された宮塚高樹(故45歳)の娘。父と二人暮らしであったが、現在は祖父母と3人暮らし。殺された宮塚高樹は心臓が残っていた数少ない犠牲者である。学校は獣坂大学

 【被害者の職業比率】
 殺された人間の職業をまとめたリスト。このリストからは、被害者の多くは政倉建設株式会社の関係者。
 その中でもダム建設の関係者は一際目立っている。それから他企業の要職や重要人物、この町で社会的地位の高いものが殺されている。

 【目撃者のリスト】 
 被害に合って逃げ延びた人たちもいたが、どれも事件当日から3日以内に亡くなっている。彼らの発言はどれも支離滅裂であり、精神状態は極めて不安定だったようだ。

 ・1人目
 事件から2日後、自宅の風呂場で死亡。
 ・2人目
 事件から2日後、駅のトイレで死亡。自殺だった。
 ・3人目
 事件から3日後、警察署内での保護中に死亡。

 これ以降の事件も、同じように続いている。被害者は全て、一人もしくは少人数で行動している場合に狙われているようだ。

[晩野
 アイデア(80)→成功(24)]

 晩野「やはり水が関係しているのか?」

 伊角「水?」

 晩野「昨日の夜、水溜りから腕が出ていた。1人目は風呂場、2人目はトイレと水に関係している。春田さん、水と関係があるのでは?」

 春田「私も水との関係性を調べては見たのですが、他の事件を見る限り、犯人の行動に必ずしも必要ではないようです」

 伊角「この「警察署内での保護中に死亡。」とあるけど保護していた場所に反射するようなものはあったかい?詳しく言うと窓の近くで亡くなった人はいたかい?」

 春田「中にはそういう人もいますね」

 悟「何で窓なんだ?」

 伊角「私の考察として姿を映すものから黒武者は現れると考えている。風呂場とトイレ、そして水たまり。確かにこれらは共通して水に関係する場所だ。しかし、駅のトイレに人一人通れるような水が張る場所なんて存在すると思う?」

 悟「確かに、そんなスペース無いよな。」

 伊角「そして警察署内での死亡。警察署の保護室、一般的には留置所とされる場所にもトイレが設置されている場合が多いが、駅のトイレと同様に人が通れるような大きさの水が張れるスペースなんてない。」

 月島「それじゃあどうやって殺したんでしょう。」

 伊角「鏡だよ。」

 狭間「鏡?」

 伊角「そう、正確に言えば姿を写すことができる物だね。考えてもご覧、駅のトイレには必ずと言っていいほどに鏡が設置されているだろう?それも結構な大きさの。風呂場にだって鏡はあるし、見方によっては水に張った浴槽も鏡だ。そして窓もそう、窓ガラスに光が反射することで、物が写って見える。監視を目的とした施設なら常時照明がついて、窓ガラスに光が反射してもおかしくない。」

 晩野「言われてみればそれもそうだな。警察署の窓の大きさにもよるが、実際殺されているわけだから、大体腰窓ほどの大きさの写す物があればヤツは移動可能ということか。」

 悟「流石、INT150の超天才。頼りになる考察ご苦労さん。」

 【謎の血文字】
 昨夜殺された武蔵瑞務の服に書かれていた血文字の写真。内容は「死刑99人我守護せよ」

 狭間「ざっくりと見た感じ、事例は他には見られないけど、犯行の手口は『辻斬り男』と同じだね。」

 悟「死刑99人ってもしかしなくても殺した数だよな…100行ったらやばそうだが。「我守護せよ」って書かれてたんだよな、誰に向けてだ?」

 伊角「それは私にもわからない。辻斬り男がこのような行動をしたことは?」

 春田「ありません。おそらく、初めて犯人の意志が感じ取れる物だったと思います。今までは、ただ殺しをしているとしか思えなかったのですが」

 【黒い髪の女】
 最近噂になっているこの女性は、なぜか『辻斬り男』の現場に現れてその姿を目撃されている。身長は170cmと女性としては少し高く、腰まで長い黒髪が特徴である。顔はマスクとサングラスで分からない。

 悟「もしかしてこの女へのメッセージなんじゃなかろうか?」

 月島「ということは、あの場に居たんでしょうか?」

 晩野「少なくともあの場には我々以外には人はいなかった。」

 狭間「後から来ていた可能性もあったのか…」

 悟「情報は一通り出そろったな…なあ、お前らってここもう探索した?」

 「「あ、してない!」」

[伊角
 目星(60)→成功(23)

 晩野
 目星(70)→成功(45)

 月島
  目星(65)→成功(27)

 悟 
  目星(73)→成功(43)

 狭間
  目星(70)→失敗(95)]

 春田飛嘉野のデスクにはいくつかの私物が置かれており、その中には表彰などが飾られていた。
 全日本ライフル射撃競技選手権大会で優勝、全国柔道選手権大会では4位などがある。彼女は並々ならぬ人物であると伺える。

 悟「すっげぇ、エキスパート。」

 晩野「一度手合わせしてみたいな。」

 月島「物珍しい指輪ですね、宝石や装飾が一切ない木製のシンプルすぎる指輪だなんて。」

 春田「ああ、これですか。これは人から貰ったものなんですよ。実は‥私もよく覚えてなくて。でも、すごく綺麗だからつけているんです」

 悟「今度こそ情報は出そろった。こっからは情報を基に探索だな。春田さんも着いて来てくれるとありがたいんですが。」

 春田「えっと…すみません。この後仕事が入ってまして…それが終われば合流できると思います」
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