甘えたオメガは過保護なアルファに溺愛される

番外編

過保護な彼

「悪阻、お腹空いた時に起こりやすいんだよ。」
「……そうなの？」
「うん。だから最近は特に、真樹には頻繁に食べさせてたんだけど……」
「ああ、あれってそうなんだ？」
「だから帰ってきて何も食べた形跡がなかったから焦った。」


　ビスケットを食べて、それから少しすれば嘘のように吐き気が治まった。
　凪さんと一緒にリビングに行くと、軽くご飯を作ってくれる。


「凪さんって俺より妊夫の体のこと知ってるんだね。ハッ……！もしかして初めてじゃない？」
「は？　そんなわけないだろ。」
「やだなー、嘘だよ！ごめんね……？冗談だからそんな顔しないで」
「真樹がちょっとでも辛くないようにするにはどうしたらいいのかって勉強したのに」
「……ごめんってばぁ」
「嘘。全然怒ってないよ。もう吐き気はしない？」
「うん」


　くすくす笑う彼がテーブルに置いたのは、トマトが乗った小さめのオムライス。
　あんまり味が濃くないので食べやすい。


「あとで軽くストレッチしようね。」
「ストレッチかぁ。それも妊夫はした方がいいの？」
「リラックス効果があるって。妊娠してなくても、姿勢が良くなったり肩凝りとか腰痛が改善するって言うし。あ、それから、運動不足も解消できるよ。」
「凪さんもする？」
「うん。一緒にしよう」


　隣に座る凪さんがそう言って柔らかく微笑む。
　ぼんやり彼の顔を見ていると、手に持っていたスプーンを取られ、オムライスを一口サイズに掬って俺の口元に運んでくる。


「食後すぐはしんどくなるから、これ食べたあとはゆっくりして、夕方頃にでもしようか。」
「うん」
「偉いね。これもちゃんと食べようね」
「ん」


　偉いね、なんて……やけに子供扱いされてる気がするけれど、嫌な感じはしない。
　完食すると彼はお皿を洗いに行った。
　その後ろ姿を見てからソファーに移動する。
　皿洗いを終えた凪さんはすぐに後ろに立って、俺の肩を丁度いいくらいの強さで揉んでくれる。


「うー……きくぅ……」
「痛くない？」
「気持ちいい……」
「よかった。」


　しばらくマッサージをしてくれた彼は、気持ちよさにウトウトしだした俺にブランケットを掛けてくれた。
　そのまま俺のお腹にそっと手を置いて、優しく撫でている。


「男の子かな、女の子かな。」
「まだわかんないって言ってたね。凪さんはどっちがいい？」
「んー……どっちでもいいな。男の子でも女の子でもめいいっぱい可愛がるし、大切にするよ。」
「……子供が欲しいって言った物は何でも買う姿が浮かんだ。」
「……まずは真樹に相談する」
「そうしてください」


　顔を見合わせて笑う。
　近い将来、凪さんとの間には子供がいて、三人で笑いあっている姿があるのだと思うと、幸せだ。



「元気で生まれてきてくれますように。」


　そう言って、彼の手の上に自分の手を重ねた。