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第167話
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***
三森の事が落ち着いた頃、蒼太と連絡を取り凪さんと三人で集まって話をした。
事態が収まった事。協力をしてくれて助かった事。
それから──凪さんの会社で働かないかという事。
蒼太は驚いて目を見開き、「嘘でしょ」を何度も繰り返していたけれど、凪さんが契約の書類を渡し、それを確認すると笑顔で頷いてくれた。
そしてそれから二週間経った今日。
オメガという性別のせいなのか、おかげなのか、退職願を出すと直ぐに辞めることができて、既に同僚となった蒼太と、昼休みにカフェでランチをする。
「今回ばかりはオメガであることに有難みを感じたよ。」
そう言って笑う蒼太に、俺は苦笑を零す。
今はとりあえず研修をしているらしいが、「前の職場と全然違う、いい人ばっかり。」と柔らかい表情で言うもんだから、会社の雰囲気が合っていたのだろうと安心する。
「──あ、堂山君!」
「ん、新木さん!……と、橋本!」
突然声を掛けられ、聞こえてきた方を見ると新木さんと橋本がいた。
たまたま隣の席に案内されたらしい。
慌てて食事の手を止めた蒼太は、二人を見ることなくナプキンで口元を拭っている。
「蒼太、こちらが新木さんで、こっちが橋本。二人とも同じ会社で働いてる。俺達と同い歳」
「はじめまして、上住蒼太です。転職して三日前から働かせてもらってます。」
頭を下げて挨拶をした後、顔を上げた蒼太がピタッと固まる。
それと同時に橋本が大きな音を立てて椅子から立ち上がった。
「ぅ、あ……」
「え、蒼太?大丈夫?」
蒼太の顔が急に真っ赤になって、それから小さく震え出す。そして慌ててバッグを引っ掴んだかと思えば、緊急抑制剤を取り出して太腿に勢いよく刺した。
「っ!」
「え、ええっ?」
状況がわからなくて困惑している俺と、眉間に皺を寄せる橋本に新木さん。
「あー……やばい。新木、お前薬持ってない?」
「それよりもお店を一回出た方がいいかも。堂山君、上住君と一回外に出て。荷物は私達が持っていくから。」
「わ、わかった……」
新木さんに言われるがまま、蒼太と一緒に外に出る。
支えている体は熱くて、触ると苦しそうに声を漏らす様子から、どうやら蒼太が発情期になっている、ということが分かった。
でも、何でだ。
ついさっきまで本当に何も無かったのに。
通行人がこちらをチラチラ見てくる。
蒼太のフェロモンに反応しているらしい。
新木さん達を待っていると、橋本が難しい顔をして出てきた。
確かに、アルファにオメガのフェロモンはキツいだろう。
橋本は蒼太を見て、それから視線を逸らす。
「堂山、悪い。……多分その人、俺の運命の番ってやつ。」
「……運命?」
「そう。店に入った時から、何か甘い匂いすんなと思ってたんだけど……。目が合った途端にわかった。」
運命の番……なるほど、よくわからない。
兎に角、蒼太と橋本にしか理解できない現象が今起こっているのだということは分かって、どうすればいい?と橋本を見る。
「とりあえず薬が効くまでどこかで休む。さすがに会社に休めるところは無いからな……」
「でも他に行くところは……。あ、凪さんに電話しよう。」
「いや、さすがにまずいって……」
「今は休憩時間だし、専務室は広いよ。何せソファーで横になれる。それに凪さんは番持ちのアルファ。今のところ、すぐに行ける近くて安全な場所ってそこしか無いと思うんだけど……。」
橋本は渋った後、納得したように頷く。それを見てから凪さんに電話をかけ、事情を話すと「すぐにおいで」と言ってくれる。
電話を切ると同時に新木さんがお店から出てきて、急いで四人で会社に戻った。
三森の事が落ち着いた頃、蒼太と連絡を取り凪さんと三人で集まって話をした。
事態が収まった事。協力をしてくれて助かった事。
それから──凪さんの会社で働かないかという事。
蒼太は驚いて目を見開き、「嘘でしょ」を何度も繰り返していたけれど、凪さんが契約の書類を渡し、それを確認すると笑顔で頷いてくれた。
そしてそれから二週間経った今日。
オメガという性別のせいなのか、おかげなのか、退職願を出すと直ぐに辞めることができて、既に同僚となった蒼太と、昼休みにカフェでランチをする。
「今回ばかりはオメガであることに有難みを感じたよ。」
そう言って笑う蒼太に、俺は苦笑を零す。
今はとりあえず研修をしているらしいが、「前の職場と全然違う、いい人ばっかり。」と柔らかい表情で言うもんだから、会社の雰囲気が合っていたのだろうと安心する。
「──あ、堂山君!」
「ん、新木さん!……と、橋本!」
突然声を掛けられ、聞こえてきた方を見ると新木さんと橋本がいた。
たまたま隣の席に案内されたらしい。
慌てて食事の手を止めた蒼太は、二人を見ることなくナプキンで口元を拭っている。
「蒼太、こちらが新木さんで、こっちが橋本。二人とも同じ会社で働いてる。俺達と同い歳」
「はじめまして、上住蒼太です。転職して三日前から働かせてもらってます。」
頭を下げて挨拶をした後、顔を上げた蒼太がピタッと固まる。
それと同時に橋本が大きな音を立てて椅子から立ち上がった。
「ぅ、あ……」
「え、蒼太?大丈夫?」
蒼太の顔が急に真っ赤になって、それから小さく震え出す。そして慌ててバッグを引っ掴んだかと思えば、緊急抑制剤を取り出して太腿に勢いよく刺した。
「っ!」
「え、ええっ?」
状況がわからなくて困惑している俺と、眉間に皺を寄せる橋本に新木さん。
「あー……やばい。新木、お前薬持ってない?」
「それよりもお店を一回出た方がいいかも。堂山君、上住君と一回外に出て。荷物は私達が持っていくから。」
「わ、わかった……」
新木さんに言われるがまま、蒼太と一緒に外に出る。
支えている体は熱くて、触ると苦しそうに声を漏らす様子から、どうやら蒼太が発情期になっている、ということが分かった。
でも、何でだ。
ついさっきまで本当に何も無かったのに。
通行人がこちらをチラチラ見てくる。
蒼太のフェロモンに反応しているらしい。
新木さん達を待っていると、橋本が難しい顔をして出てきた。
確かに、アルファにオメガのフェロモンはキツいだろう。
橋本は蒼太を見て、それから視線を逸らす。
「堂山、悪い。……多分その人、俺の運命の番ってやつ。」
「……運命?」
「そう。店に入った時から、何か甘い匂いすんなと思ってたんだけど……。目が合った途端にわかった。」
運命の番……なるほど、よくわからない。
兎に角、蒼太と橋本にしか理解できない現象が今起こっているのだということは分かって、どうすればいい?と橋本を見る。
「とりあえず薬が効くまでどこかで休む。さすがに会社に休めるところは無いからな……」
「でも他に行くところは……。あ、凪さんに電話しよう。」
「いや、さすがにまずいって……」
「今は休憩時間だし、専務室は広いよ。何せソファーで横になれる。それに凪さんは番持ちのアルファ。今のところ、すぐに行ける近くて安全な場所ってそこしか無いと思うんだけど……。」
橋本は渋った後、納得したように頷く。それを見てから凪さんに電話をかけ、事情を話すと「すぐにおいで」と言ってくれる。
電話を切ると同時に新木さんがお店から出てきて、急いで四人で会社に戻った。
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