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第119話

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 ***


 声を掛けられて目を開けると、凪さんは穏やかな表情で、体勢を変えることなく膝枕を続けてくれていた。


「十五分経ったよ。起きる?」
「……」


 起こしてと言ったのは俺だけど、凪さんのお腹に顔を埋めてもう一度目を閉じた。
 くすくす笑って頭を撫でてくる彼は、文句も何も言わない。


「仕事ぉ……」
「俺がやるよ」
「だめ……起きないと……」


 体を離し、起き上がる。
 ググッと伸びをしてテーブルに戻った。


「珈琲いる?」
「いる」


 パソコンをつけて、気持ちを切り替えた。
 珈琲がテーブルに置かれ、お礼を言うと、凪さんは邪魔をしないようにと言って寝室に行ってしまった。
 俺としては確かに、目の前に誰かがいると集中できないからありがたい。


 しばらく一人で集中して、やっと終わった頃には凪さんはキッチンに立っていた。
 パソコンを閉じて、彼の後ろに立ちぎゅっと抱きしめる。


「終わった?」
「ん……」
「お疲れ様。何か飲む?」
「……キスする」


 体を離して、今度は前から抱きつき顔を上げてキスを強請った。


「可愛い」
「そうじゃなくて、キスして」
「うん」


 唇を重ね、舌を絡ませて満たされるまでくっつく。
 暫くして凪さんに背中をポンポンと軽く叩かれ、唇を離した。


「今日のご飯はタコライスです」
「……何ですか、それ。」
「沖縄の料理だよ。」
「へえ。楽しみ」


 そう言いながら冷蔵庫を開けてビールを取り出す。
 そのままガブガブと飲んでいると、それに気づいた彼が慌てたように止めてきた。


「空きっ腹にそんな事したら酔うよ」
「うん、でも飲みたくなって」
「……せめて座って飲もうね」
「ごめんなさい」


 ビールを持ったままリビングに戻って、テーブルの席につきテレビをつけた。
 今日はゆっくりと眠れるかな。
 嫌な夢を見ないようにしたい。



「真樹」
「はーい」
「ご飯、どれくらい食べる?」
「んー、いっぱい」


 そのままテーブルで待っていると、ご飯が運ばれてきた。
 いい匂いがして料理をじっと見る。


「これがタコライス?」
「うん」
「タコはどこにいるの?」
「ふふっ、タコはいないよ。」


 スプーンを渡され、一口食べる。
 思わず目を見開いて彼を見た。


「美味しい!」
「よかった」
「凪さんもお酒飲む?」
「ううん。今日はいいかな」


 笑う彼もタコライスを一口食べて、ウンウンと頷いた。


「我ながら美味しい。」


 話しながらご飯を食べていると、少し時間がかかってしまった。
 空になった食器を下げ、皿洗いをする。


「風呂、洗っておいたから入っておいで。」
「え、凪さんが先に入って。疲れたでしょ?」
「じゃあ一緒に入ろうよ」
「あはは、いいよ。」


 彼のお皿も洗い、着替えを持って一緒にお風呂場に向かった。
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