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第1話

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 朝六時に目を覚まし、朝食を食べ、準備をして家を出る。
 まだ空いている電車に乗り、十五分程揺られた後に降りた。
 歩いてビルまで行き、エントランスのゲートを社員証をかざして潜る。
 エレベーターに乗り七階に着くとそれから降りて、自分のデスクに座りパソコンの電源を入れた。
 パソコンにつけていた付箋を取り、そこに書いている昨日残した仕事を始めて、始業時間までに終わらせた。


「おはよう、堂山どうやま君。」
「おはよう、新木あらきさん。」


 隣のデスクに座った女性の新木さん。いつも綺麗な服装で隙の無い強気な女性に見える。完全に俺のタイプだ。


「今日も早いのね。何かトラブルでもあった?」
「いや、昨日残してた仕事があったからそれを終わらせに早く来ただけ。」
「そう。」


 その内他の社員もやってきて、仕事の準備をし始める。ワイワイとした空気だけれど、俺と新木さんの空気は違う。そしてフロアも少し周りとは離されている。
 その理由は性別。
 男女の二つだけではなくて、アルファ・ベータ・オメガのさらに三つある性別のせい。

 俺は男性アルファで、新木さんは女性アルファだ。
 アルファであれば、男女は関係なく妊娠させることが出来る機能を持っている。
 逆にオメガであれば、男女は関係なく妊娠できる機能がある。

 このフロアに居るアルファは俺と新木さんだけ。他は全員ベータと言われる、人口的に最も多い一般的な人達だ。特別変わった機能は持っていない。

 そしてこのフロアには一人として居ないのがオメガ性を持っている人間。
 彼らは最も希少な性別だ。けれど三ヶ月に一度、一週間もの期間、本人の意思は関係なく発情期ヒートというものが起きて強いフェロモンを撒き散らす。そしてアルファやベータを見境なく誘うのだ。
 その一週間は発情と繁殖以外に何もできなくなる。だからオメガ性は冷遇され差別される事が多い。

 そんなオメガは、唯一アルファ性の人間とつがいになることが出来て、男女を問わずに妊娠が出来るわけだ。


「今朝電車でオメガを見たのよ。珍しいから皆ジロジロ見てたわ。居心地悪そうにしてて可哀想だった。」


 突然新木さんがそんな話をしだした。
 オメガは発情期中、アルファにうなじを噛まれると番となってしまう。
 そうならない為に、チョーカーを着けているオメガが多い。
 その電車にいたその人はきっとチョーカーを着けていたんだろう。だから新木さんはその人がオメガだと分かった。


「それはその電車に乗ったオメガが悪いと思うけど。」
「オメガの専用車両なんてないんだから仕方ないじゃない。」


 新木さんはオメガ性に対して偏見はないらしい。


「堂山君はどうしてそうオメガ性を冷たく見るの?」
「ところ構わず盛って見境なく誰でも誘惑するから。」
「それは本人の意思は関係ないけど?」
「抑制剤だってあるんだし、自分の体の事は自分で面倒見るべきだろ。」


 発情期を抑えることができる唯一の方法が抑制剤。
 錠剤タイプと注射型の二つの種類がある薬。
 発情したオメガがそれを摂取するとフェロモンを抑えることができる。
 アルファにも一応そういった物があって、発情したオメガに惑わされないように常に飲んでいる人も多い。俺もその一人。
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