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---積み重なる嫉妬
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最後に向かうのは、商会の本拠地となる場所だ。
馬車はジェレイドの町屋敷の見える場所で停まる。
ジェレイドの町屋敷は目抜き通りの上に、街の中心部に位置しているのだが、そんな所に商会の土地を用意出来たのか?と不審げな顔をするシルヴァインに、ギラッファが説明した。
「商会の土地はマリアローゼ様の生誕の際にご用意したもので、現在の名義人もマリアローゼ様であらせられます」
扉を開けて、不審げな顔をする主人にそういうと、ギラッファは入口方面にさっと手を向けた。
「今までは王都で取り扱われるような高級ドレスを売る店として活用していましたが、三階建てに建て増ししたそうです」
「そうか」
予言の力、予知、そういった能力があるというのは聞いていた。
便利なものだ、と思う傍ら、マリアローゼの望むものを先回りして用意しているその力に嫉妬さえ覚える。
シルヴァインは店の中に案内されて、表通りから見るよりも遥かに、店内が広い事に更に驚いた。
間口は普通の店と変わらないが、奥の土地も広く買い取ったのだろう。
1つの店舗としてはかなり広く、王都でもこれだけの規模は聞いた事も見たこともなかった。
「お待ちしておりました。アイテール支店を担当させて頂くメイヤールと申します。中々に広いでしょう。一階はサロンも併設致しまして、軽食やお紅茶を頂きながら、買物を目で見て楽しむ事が出来るように致します」
商会の支部長である、メイヤールが笑顔で言った。
銀髪を後ろで束ねて、糸の様に細い眼でにっこりと微笑む。
王城で会ったマローヴァに良く似ているのは、従兄弟だからだ。
「二階は美容品とドレスや靴の試着、発注、等が出来る場所となっておりまして、宝飾品も取り扱う予定です」
だが階段が見当たらない。
「上にはどうやって行くのですか?」
キースが疑問をぶつけると、ああ、というように笑顔を向けて、メイヤールが奥に案内をした。
「こちらの昇降機を使ってご案内します。今はまだ準備中なので使用は出来ませんが、各階に案内人を用意致しますので、初めての方でも安心してご利用頂けます。そして、三階はお食事処となっておりまして、風光明媚な風景を見ながら、楽しんで頂ける様になっております」
「この昇降機というのは…?」
「ジェレイド様と工房で開発なさったとか。壊れた時の為や緊急の場合の為に、外にも屋根つきの階段が二つございますのでご安心を。裏手にあるので、普段は職人や従業員しか利用しません」
「そうか、案内ご苦労だった」
「はい。開店に向けて準備を急ぎますので、もう暫くお待ちください」
「宜しくお願いします」
最後はキースが挨拶をして、三人は屋敷へ戻った。
「そういえば、最初に尾行すると言っていた方はどうしたでしょうか?」
「ああ、何となく気配はあったから、ついてきていただろうけど、姿は見えなかったな」
「……そうですか」
キースはシルヴァインほど武に秀でているわけではないし、気配を読み取る域まで達していない。
ジェレイドの手回しのよさに打ちひしがれている様子の兄、シルヴァインもまた常人ではないだろう、とキースは苦笑を浮かべた。
馬車はジェレイドの町屋敷の見える場所で停まる。
ジェレイドの町屋敷は目抜き通りの上に、街の中心部に位置しているのだが、そんな所に商会の土地を用意出来たのか?と不審げな顔をするシルヴァインに、ギラッファが説明した。
「商会の土地はマリアローゼ様の生誕の際にご用意したもので、現在の名義人もマリアローゼ様であらせられます」
扉を開けて、不審げな顔をする主人にそういうと、ギラッファは入口方面にさっと手を向けた。
「今までは王都で取り扱われるような高級ドレスを売る店として活用していましたが、三階建てに建て増ししたそうです」
「そうか」
予言の力、予知、そういった能力があるというのは聞いていた。
便利なものだ、と思う傍ら、マリアローゼの望むものを先回りして用意しているその力に嫉妬さえ覚える。
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間口は普通の店と変わらないが、奥の土地も広く買い取ったのだろう。
1つの店舗としてはかなり広く、王都でもこれだけの規模は聞いた事も見たこともなかった。
「お待ちしておりました。アイテール支店を担当させて頂くメイヤールと申します。中々に広いでしょう。一階はサロンも併設致しまして、軽食やお紅茶を頂きながら、買物を目で見て楽しむ事が出来るように致します」
商会の支部長である、メイヤールが笑顔で言った。
銀髪を後ろで束ねて、糸の様に細い眼でにっこりと微笑む。
王城で会ったマローヴァに良く似ているのは、従兄弟だからだ。
「二階は美容品とドレスや靴の試着、発注、等が出来る場所となっておりまして、宝飾品も取り扱う予定です」
だが階段が見当たらない。
「上にはどうやって行くのですか?」
キースが疑問をぶつけると、ああ、というように笑顔を向けて、メイヤールが奥に案内をした。
「こちらの昇降機を使ってご案内します。今はまだ準備中なので使用は出来ませんが、各階に案内人を用意致しますので、初めての方でも安心してご利用頂けます。そして、三階はお食事処となっておりまして、風光明媚な風景を見ながら、楽しんで頂ける様になっております」
「この昇降機というのは…?」
「ジェレイド様と工房で開発なさったとか。壊れた時の為や緊急の場合の為に、外にも屋根つきの階段が二つございますのでご安心を。裏手にあるので、普段は職人や従業員しか利用しません」
「そうか、案内ご苦労だった」
「はい。開店に向けて準備を急ぎますので、もう暫くお待ちください」
「宜しくお願いします」
最後はキースが挨拶をして、三人は屋敷へ戻った。
「そういえば、最初に尾行すると言っていた方はどうしたでしょうか?」
「ああ、何となく気配はあったから、ついてきていただろうけど、姿は見えなかったな」
「……そうですか」
キースはシルヴァインほど武に秀でているわけではないし、気配を読み取る域まで達していない。
ジェレイドの手回しのよさに打ちひしがれている様子の兄、シルヴァインもまた常人ではないだろう、とキースは苦笑を浮かべた。
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