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チャリティーを開きたいお嬢様
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部屋に帰ると、やっとシルヴァインの腕から下りられたマリアローゼは、花を探すためにとてとてと居間と自分の寝室とを探した。
寝室の窓辺に、小さなガラス瓶に生けられた花を見つけて、マリアローゼは側へと小走りに寄る。
「ありましたわ、ルーナ」
「はい、お嬢様」
嬉しそうなマリアローゼを見ながら、ルーナも手荷物の中身を片付けていた。
その手を止めて、マリアローゼに微笑みかける。
「まだ夕食まで間が御座いますので、お着替えを致しましょう。お茶も御用意致します」
「ええ、お願いするわ」
マリアローゼは窓辺から、ルーナの元へととてとてと戻ってくる。
外行きの服から、柔らかめの寛ぎやすいドレスへと手早く着替えさせ、ルーナは紅茶の用意をノクスへと伝えた。
「花売りのリリア、といえば、この町で誰の事だか分かりますかしら?」
「大きな町ではございませんので、多分。後で確認して参りますね」
マリアローゼはこくん、と頷く。
「お家に帰れるのはとても嬉しいですわ。帰りましたらまず、旅で出会った方達へのお礼を差し上げたいの」
「畏まりました」
脱いだ服を片付けた後、ルーナは衣装箪笥から夕食用のドレスを幾つか選び出した。
この旅では袖を通さない服も沢山あるのだが、出来れば違う色が良いだろう、とルーナが選んだのは淡い紫のドレスだ。
銀の刺繍も丹念に施されていて、ガラス製のビジューや胸元の小さな宝石も美しく煌いている。
「今夜のドレスはこちらで如何でしょうか」
「ありがとう、ルーナ。……それにしても、この沢山のドレス……全部着られるのかしら。
もう少し買う頻度と量を落として頂かないと、勿体無いですわ」
「お嬢様は何を着てもお似合いになられるので、ついつい選びすぎてしまうお気持は理解出来ます」
父と母は娘を切望していたと何度も色々な方面から聞き及んでいる。
だから、楽しくて仕方がないのだろうし、その楽しみを奪ってしまうのにも抵抗がある。
しかも公爵家は裕福であり、財を還元する義務もあるのだから、仕方がないのだが。
かつての社蓄だった頃の、節約生活とはあまりに違いすぎて、余ったら捨てる、だの、取り合えず買っておく、というような贅沢な感覚が無駄に感じてしまうのだ。
その無駄こそが推奨される贅沢であり、ある種貴族の嗜みでもあるのだけれど。
ふむぅ、とマリアローゼは顎に拳を当てて考え込む。
両親の趣味を奪えないならば、再利用するしかない。
かといって、売るのも何だかはしたないやら下賤な気もするのだが…。
「そうですわ…!チャリティーをすればいいのでは」
「ちゃりてぃ?とは何のことでしょう」
「ええと、寄付金集めの宴の事ですわ。今後、孤児院や人材派遣の事業をする際に、寄付金を集めようと思っているのだけれど、そこでわたくしの着なくなったドレスに値をつけて頂きますの」
「破産しかねない人々に心当たりがございますが…」
そうだった。
マリアローゼは口をきゅっと引き結んだ。
正直「マリアローゼが着た」「着る予定だった」という付加価値はいらないのである。
出品物は他にも勿論考えるし、ドレスもメインではない。
需要は少ないかもしれないが、丁寧な縫製と美しいデザインのドレスばかりなので、貴族以外の商家の人々にも少しは売れるのではないだろうか。
「一旦、お兄様に相談致しますわ。独断で行えるような事でもありませんし…」
「左様でございますね。王都のお屋敷に戻られてからも、お忙しくなられるでしょうし、私に出来る事がございましたら、何なりと仰って下さい」
「ええ、頼りにしているわ、ルーナ」
そこで、コンコン、とノックの音が響いた。
「どうぞ」
マリアローゼの返事に、姿を現したのはエイラだった。
「お茶の用意が出来ておりますので、居間にお越し下さい」
「ええ、ありがとう。今参りますわ」
寝室の窓辺に、小さなガラス瓶に生けられた花を見つけて、マリアローゼは側へと小走りに寄る。
「ありましたわ、ルーナ」
「はい、お嬢様」
嬉しそうなマリアローゼを見ながら、ルーナも手荷物の中身を片付けていた。
その手を止めて、マリアローゼに微笑みかける。
「まだ夕食まで間が御座いますので、お着替えを致しましょう。お茶も御用意致します」
「ええ、お願いするわ」
マリアローゼは窓辺から、ルーナの元へととてとてと戻ってくる。
外行きの服から、柔らかめの寛ぎやすいドレスへと手早く着替えさせ、ルーナは紅茶の用意をノクスへと伝えた。
「花売りのリリア、といえば、この町で誰の事だか分かりますかしら?」
「大きな町ではございませんので、多分。後で確認して参りますね」
マリアローゼはこくん、と頷く。
「お家に帰れるのはとても嬉しいですわ。帰りましたらまず、旅で出会った方達へのお礼を差し上げたいの」
「畏まりました」
脱いだ服を片付けた後、ルーナは衣装箪笥から夕食用のドレスを幾つか選び出した。
この旅では袖を通さない服も沢山あるのだが、出来れば違う色が良いだろう、とルーナが選んだのは淡い紫のドレスだ。
銀の刺繍も丹念に施されていて、ガラス製のビジューや胸元の小さな宝石も美しく煌いている。
「今夜のドレスはこちらで如何でしょうか」
「ありがとう、ルーナ。……それにしても、この沢山のドレス……全部着られるのかしら。
もう少し買う頻度と量を落として頂かないと、勿体無いですわ」
「お嬢様は何を着てもお似合いになられるので、ついつい選びすぎてしまうお気持は理解出来ます」
父と母は娘を切望していたと何度も色々な方面から聞き及んでいる。
だから、楽しくて仕方がないのだろうし、その楽しみを奪ってしまうのにも抵抗がある。
しかも公爵家は裕福であり、財を還元する義務もあるのだから、仕方がないのだが。
かつての社蓄だった頃の、節約生活とはあまりに違いすぎて、余ったら捨てる、だの、取り合えず買っておく、というような贅沢な感覚が無駄に感じてしまうのだ。
その無駄こそが推奨される贅沢であり、ある種貴族の嗜みでもあるのだけれど。
ふむぅ、とマリアローゼは顎に拳を当てて考え込む。
両親の趣味を奪えないならば、再利用するしかない。
かといって、売るのも何だかはしたないやら下賤な気もするのだが…。
「そうですわ…!チャリティーをすればいいのでは」
「ちゃりてぃ?とは何のことでしょう」
「ええと、寄付金集めの宴の事ですわ。今後、孤児院や人材派遣の事業をする際に、寄付金を集めようと思っているのだけれど、そこでわたくしの着なくなったドレスに値をつけて頂きますの」
「破産しかねない人々に心当たりがございますが…」
そうだった。
マリアローゼは口をきゅっと引き結んだ。
正直「マリアローゼが着た」「着る予定だった」という付加価値はいらないのである。
出品物は他にも勿論考えるし、ドレスもメインではない。
需要は少ないかもしれないが、丁寧な縫製と美しいデザインのドレスばかりなので、貴族以外の商家の人々にも少しは売れるのではないだろうか。
「一旦、お兄様に相談致しますわ。独断で行えるような事でもありませんし…」
「左様でございますね。王都のお屋敷に戻られてからも、お忙しくなられるでしょうし、私に出来る事がございましたら、何なりと仰って下さい」
「ええ、頼りにしているわ、ルーナ」
そこで、コンコン、とノックの音が響いた。
「どうぞ」
マリアローゼの返事に、姿を現したのはエイラだった。
「お茶の用意が出来ておりますので、居間にお越し下さい」
「ええ、ありがとう。今参りますわ」
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