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面倒くさいお馬さん
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「ああ、系統は同じかもしれない。君と同じかそれ以上に厄介な叔父なんだよ」
「え……うっざ…!」
思わずユリアの口から零れた言葉に、マリアローゼはおま言う?と突っ込みたくなったが、両方共略語なので、こちらの言語で適した言葉が無い。
言ってしまえば転生者だとモロバレしてしまうのである。
伝わらない事に気がついたユリアが言い直す。
「とても、鬱陶しい方ですね?」
「貴女が言ってしまいますか?それを」
言いたかった言葉をカンナが正しく言ってくれたので、マリアローゼは思わずふふっと笑った。
「楽しい御方のようですね」
「……まあ、俺は楽しくないけどね。父上も。…ああでも双子には懐かれてたなぁ」
遠い目をしたシルヴァインが、窓の外に視線を向ける。
どんよりと生暖かい雰囲気で、何やら重苦しい。
「一緒にやらかして、父上に物凄く怒られてたっけ…」
「まあ…それはお気の毒に…お父様……」
想像がつくような、つかないような…面倒くさい人であることは確かなようだ。
けれど、尻尾を起点としても、何故か思い出せずに、マリアローゼは首をこてん、と傾げた。
「うーん……何故だか思い出せませんわ。後頭部しか……」
「……ああ、君は起きてる間、抱っこされるか背中に乗っていたからね」
ん?背中?
マリアローゼは眉を顰めて兄を見上げた。
「……尻尾を掴んで、お馬さんにしてたんだよ」
おんぎゃああああああ!
叫びだしそうになって、マリアローゼはほっぺではなく今度は両手で口を塞いだ。
「そ、そんな羨ましい事を!?!?!」
別の意味で興奮したユリアが立ち上がる。
「座ってください、馬として定評もあるユリアさん」
ぐいっとカンナに手を引かれて、ユリアが座席にぽすりと座った。
「ひどいですカンナさん、売り込みの台詞をとらないでくださいよぉぉ」
マリアローゼは暗い、くらーい顔をして力なくシルヴァインに凭れかかった。
口から降ろした手も膝の上に力なく投げ出されている。
生気を失くしたマリアローゼを見て、慌ててルーナがその手を両手で挟み込んだ。
「今はルーナがお側にいます。安心なさってください」
「そ、そうですわ。それにもうわたくし立派な淑女ですので!お馬さんは卒業ですの」
生き返ったマリアローゼは、ルーナと視線を交わして、二人でこくりと頷いた。
微笑ましい二人の誓いに、カンナとユリアもにこにこと和んでいるが、
シルヴァインだけは浮かない顔をしている。
「……そうかぁ…5年も領地に…叔父上の側で暮らさなきゃいけないのか……」
不吉なシルヴァインの呟きに、マリアローゼは一瞬固まったが、ルーナに手をぎゅっと握られて、頷く。
「大丈夫です。ルーナがいますもの」
「え……うっざ…!」
思わずユリアの口から零れた言葉に、マリアローゼはおま言う?と突っ込みたくなったが、両方共略語なので、こちらの言語で適した言葉が無い。
言ってしまえば転生者だとモロバレしてしまうのである。
伝わらない事に気がついたユリアが言い直す。
「とても、鬱陶しい方ですね?」
「貴女が言ってしまいますか?それを」
言いたかった言葉をカンナが正しく言ってくれたので、マリアローゼは思わずふふっと笑った。
「楽しい御方のようですね」
「……まあ、俺は楽しくないけどね。父上も。…ああでも双子には懐かれてたなぁ」
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「一緒にやらかして、父上に物凄く怒られてたっけ…」
「まあ…それはお気の毒に…お父様……」
想像がつくような、つかないような…面倒くさい人であることは確かなようだ。
けれど、尻尾を起点としても、何故か思い出せずに、マリアローゼは首をこてん、と傾げた。
「うーん……何故だか思い出せませんわ。後頭部しか……」
「……ああ、君は起きてる間、抱っこされるか背中に乗っていたからね」
ん?背中?
マリアローゼは眉を顰めて兄を見上げた。
「……尻尾を掴んで、お馬さんにしてたんだよ」
おんぎゃああああああ!
叫びだしそうになって、マリアローゼはほっぺではなく今度は両手で口を塞いだ。
「そ、そんな羨ましい事を!?!?!」
別の意味で興奮したユリアが立ち上がる。
「座ってください、馬として定評もあるユリアさん」
ぐいっとカンナに手を引かれて、ユリアが座席にぽすりと座った。
「ひどいですカンナさん、売り込みの台詞をとらないでくださいよぉぉ」
マリアローゼは暗い、くらーい顔をして力なくシルヴァインに凭れかかった。
口から降ろした手も膝の上に力なく投げ出されている。
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「今はルーナがお側にいます。安心なさってください」
「そ、そうですわ。それにもうわたくし立派な淑女ですので!お馬さんは卒業ですの」
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微笑ましい二人の誓いに、カンナとユリアもにこにこと和んでいるが、
シルヴァインだけは浮かない顔をしている。
「……そうかぁ…5年も領地に…叔父上の側で暮らさなきゃいけないのか……」
不吉なシルヴァインの呟きに、マリアローゼは一瞬固まったが、ルーナに手をぎゅっと握られて、頷く。
「大丈夫です。ルーナがいますもの」
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