161 / 358
真逆を向く二人
しおりを挟む
続いて餌を貰ったルーナも、おっかなびっくりフクロウに餌を与えると、マリアローゼと笑顔を見せ合っている。
「じゃあ、次は腕に止らせてみましょうか」
皮手袋を嵌めた小さな手を片手で支えて、もう片方の手をマリアローゼに近づけると、フクロウはのしのしと小さな手へと移った。
「まっ…まあ、ずっしりしてますわ!」
はあっと驚いて、感心したようにフクロウを見て、マリアローゼはふわふわの羽毛を優しく撫でた。
「はぁぁ、本当に可愛いです。可愛いしかないです」
「本当ですわねえ」
柔らかい羽毛をもふもふっと撫でながら、マリアローゼは絶賛するユリアに相槌を打つ。
同じ方向を向いているようで真逆を向いている二人を、カンナは生暖かい目で見守った。
「私も触っていいでしょうか?」
「ええ、構いませんわ?」
不思議そうにフクロウから手を引っ込めたマリアローゼの頭を、ユリアがナデナデと撫でる。
「え?……あら?」
まさか自分に降りかかるとは思っていなかったマリアローゼがぽかんと口を開ける。
カンナは苦笑して、ルーナはユリアの手の甲を摘んで制止した。
「もうその辺で」
「あ、痛…はい……ツヤツヤのサラサラでした!」
満足げな笑顔を見せるユリアに、マリアローゼもふふっと笑う。
「この子には敵いませんわ。フワフワでとても可愛らしい…」
またフクロウを撫で始めたマリアローゼを、大きな目でフクロウが見ている。
「わたくしのこと、覚えてくれたかしら?」
「そりゃあ覚えましたよ。覚えないわけがないです。覚えなかったら痛い目みせますよ」
うんうん頷きながらユリアが物騒な事を言う。
マリアローゼは困った顔でユリアを見上げた。
「意地悪してはいけませんわ」
「マリアローゼ様がそう仰るなら!……では、そろそろ籠に戻しますね」
ユリアがフクロウをよいしょっと持ち上げて、籠の中に入れる時、腕からフクロウの重さが消えたのを
寂しく思うマリアローゼだった。
もっと触れ合いたいけれど、動物にとってはストレスにもなるだろう。
マリアローゼは籠に顔を近づけて、小さく挨拶をした。
「また会いましょうね」
その可愛い仕草に、天を仰いでいたユリアが、目隠し用の布を籠の周りに垂らした。
「ちょうど、公爵家の従魔師の方が鳥を連れているので、一緒に面倒見てくれるってことになって。
また、預けてきますね。あ、カンナさんの腕に止めるのは次回で!」
「了解です」
カンナは然程残念そうでもなく、にこやかに手を振ってユリアwithフクロウを見送った。
ユリアが去った後に、マリアローゼは手荷物をごそごそと探り、例のロバを机に並べ始める。
「どなたかにあげるのですか?」
「ええ、オリーヴェとリトリーに差し上げますの」
何時ものように色々な角度から眺めて選び、やっと二匹を選び出して小さな手提げ袋に手紙と共に入れた。
公爵邸用の手紙の束は別の袋に入れて、マリアローゼは何事か考え込む。
「ルーナ、お兄様をお呼びして欲しいの」
「はい。行って参ります」
ぺこりとお辞儀をしてルーナが部屋を出て行き、程なくシルヴァインを伴って戻って来た。
「じゃあ、次は腕に止らせてみましょうか」
皮手袋を嵌めた小さな手を片手で支えて、もう片方の手をマリアローゼに近づけると、フクロウはのしのしと小さな手へと移った。
「まっ…まあ、ずっしりしてますわ!」
はあっと驚いて、感心したようにフクロウを見て、マリアローゼはふわふわの羽毛を優しく撫でた。
「はぁぁ、本当に可愛いです。可愛いしかないです」
「本当ですわねえ」
柔らかい羽毛をもふもふっと撫でながら、マリアローゼは絶賛するユリアに相槌を打つ。
同じ方向を向いているようで真逆を向いている二人を、カンナは生暖かい目で見守った。
「私も触っていいでしょうか?」
「ええ、構いませんわ?」
不思議そうにフクロウから手を引っ込めたマリアローゼの頭を、ユリアがナデナデと撫でる。
「え?……あら?」
まさか自分に降りかかるとは思っていなかったマリアローゼがぽかんと口を開ける。
カンナは苦笑して、ルーナはユリアの手の甲を摘んで制止した。
「もうその辺で」
「あ、痛…はい……ツヤツヤのサラサラでした!」
満足げな笑顔を見せるユリアに、マリアローゼもふふっと笑う。
「この子には敵いませんわ。フワフワでとても可愛らしい…」
またフクロウを撫で始めたマリアローゼを、大きな目でフクロウが見ている。
「わたくしのこと、覚えてくれたかしら?」
「そりゃあ覚えましたよ。覚えないわけがないです。覚えなかったら痛い目みせますよ」
うんうん頷きながらユリアが物騒な事を言う。
マリアローゼは困った顔でユリアを見上げた。
「意地悪してはいけませんわ」
「マリアローゼ様がそう仰るなら!……では、そろそろ籠に戻しますね」
ユリアがフクロウをよいしょっと持ち上げて、籠の中に入れる時、腕からフクロウの重さが消えたのを
寂しく思うマリアローゼだった。
もっと触れ合いたいけれど、動物にとってはストレスにもなるだろう。
マリアローゼは籠に顔を近づけて、小さく挨拶をした。
「また会いましょうね」
その可愛い仕草に、天を仰いでいたユリアが、目隠し用の布を籠の周りに垂らした。
「ちょうど、公爵家の従魔師の方が鳥を連れているので、一緒に面倒見てくれるってことになって。
また、預けてきますね。あ、カンナさんの腕に止めるのは次回で!」
「了解です」
カンナは然程残念そうでもなく、にこやかに手を振ってユリアwithフクロウを見送った。
ユリアが去った後に、マリアローゼは手荷物をごそごそと探り、例のロバを机に並べ始める。
「どなたかにあげるのですか?」
「ええ、オリーヴェとリトリーに差し上げますの」
何時ものように色々な角度から眺めて選び、やっと二匹を選び出して小さな手提げ袋に手紙と共に入れた。
公爵邸用の手紙の束は別の袋に入れて、マリアローゼは何事か考え込む。
「ルーナ、お兄様をお呼びして欲しいの」
「はい。行って参ります」
ぺこりとお辞儀をしてルーナが部屋を出て行き、程なくシルヴァインを伴って戻って来た。
218
お気に入りに追加
5,743
あなたにおすすめの小説
【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい
梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。
会えないままな軍神夫からの約束された溺愛
待鳥園子
恋愛
ーーお前ごとこの国を、死に物狂いで守って来たーー
数年前に母が亡くなり、後妻と連れ子に虐げられていた伯爵令嬢ブランシュ。有名な将軍アーロン・キーブルグからの縁談を受け実家に売られるように結婚することになったが、会えないままに彼は出征してしまった!
それからすぐに訃報が届きいきなり未亡人になったブランシュは、懸命に家を守ろうとするものの、夫の弟から再婚を迫られ妊娠中の夫の愛人を名乗る女に押しかけられ、喪明けすぐに家を出るため再婚しようと決意。
夫の喪が明け「今度こそ素敵な男性と再婚して幸せになるわ!」と、出会いを求め夜会に出れば、なんと一年前に亡くなったはずの夫が帰って来て?!
努力家なのに何をしても報われない薄幸未亡人が、死ぬ気で国ごと妻を守り切る頼れる軍神夫に溺愛されて幸せになる話。
※完結まで毎日投稿です。
(完結)お姉様を選んだことを今更後悔しても遅いです!
青空一夏
恋愛
私はブロッサム・ビアス。ビアス候爵家の次女で、私の婚約者はフロイド・ターナー伯爵令息だった。結婚式を一ヶ月後に控え、私は仕上がってきたドレスをお父様達に見せていた。
すると、お母様達は思いがけない言葉を口にする。
「まぁ、素敵! そのドレスはお腹周りをカバーできて良いわね。コーデリアにぴったりよ」
「まだ、コーデリアのお腹は目立たないが、それなら大丈夫だろう」
なぜ、お姉様の名前がでてくるの?
なんと、お姉様は私の婚約者の子供を妊娠していると言い出して、フロイドは私に婚約破棄をつきつけたのだった。
※タグの追加や変更あるかもしれません。
※因果応報的ざまぁのはず。
※作者独自の世界のゆるふわ設定。
※過去作のリメイク版です。過去作品は非公開にしました。
※表紙は作者作成AIイラスト。ブロッサムのイメージイラストです。
間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜
舞桜
ファンタジー
初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎
って、何故こんなにハイテンションかと言うとただ今絶賛大パニック中だからです!
何故こうなった…
突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、
手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、
だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎
転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?
そして死亡する原因には不可解な点が…
様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、
目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“
そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪
*神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのかのんびりできるといいね!(希望的観測っw)
*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています
奪われる人生とはお別れします ~婚約破棄の後は幸せな日々が待っていました~
水空 葵
恋愛
婚約者だった王太子殿下は、最近聖女様にかかりっきりで私には見向きもしない。
それなのに妃教育と称して仕事を押し付けてくる。
しまいには建国パーティーの時に婚約解消を突き付けられてしまった。
王太子殿下、それから私の両親。今まで尽くしてきたのに、裏切るなんて許せません。
でも、これ以上奪われるのは嫌なので、さっさとお別れしましょう。
◯完結まで毎週金曜日更新します
※他サイト様でも連載中です。
◇2024/2/5 HOTランキング1位に掲載されました。
◇第17回 恋愛小説大賞で6位&奨励賞を頂きました。
本当にありがとうございます!
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
錬金術師カレンはもう妥協しません
山梨ネコ
ファンタジー
「おまえとの婚約は破棄させてもらう」
前は病弱だったものの今は現在エリート街道を驀進中の婚約者に捨てられた、Fランク錬金術師のカレン。
病弱な頃、支えてあげたのは誰だと思っているのか。
自棄酒に溺れたカレンは、弾みでとんでもない条件を付けてとある依頼を受けてしまう。
それは『血筋の祝福』という、受け継いだ膨大な魔力によって苦しむ呪いにかかった甥っ子を救ってほしいという貴族からの依頼だった。
依頼内容はともかくとして問題は、報酬は思いのままというその依頼に、達成報酬としてカレンが依頼人との結婚を望んでしまったことだった。
王都で今一番結婚したい男、ユリウス・エーレルト。
前世も今世も妥協して付き合ったはずの男に振られたカレンは、もう妥協はするまいと、美しく強く家柄がいいという、三国一の男を所望してしまったのだった。
ともかくは依頼達成のため、錬金術師としてカレンはポーションを作り出す。
仕事を通じて様々な人々と関わりながら、カレンの心境に変化が訪れていく。
錬金術師カレンの新しい人生が幕を開ける。
※小説家になろうにも投稿中。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる