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5.アリス・ピロウ男爵令嬢の困惑
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その日の学園。
アリス・ピロウは普段通り登校したが、いつもと違う状況に戸惑っていた。
自分の周囲に居た友人が誰も居ないのだ。
「あれぇ……?」
可愛らしく首を傾げてみても、いないものはいない。
すぐさま可愛いなぁと褒めてくれる男達が、誰も自分の傍にいないのである。
「何処に居るんだろぅ……」
騎士科の修練場に、図書館に、生徒会室。
授業が始まるまで探し回っていたが、誰もいない。
「皆学校休んでるのかなぁ?何でぇ?」
昨日までは皆で楽しく過ごしていた。
この一年ずっと、人数は増えても減る事は無かったのだ。
仕方なく授業を受けるために教室へと向かう。
教室に入っても、話しかけてくる人は誰も居ない。
それどころか、近くにも寄ってこない。
「ねぇ、ねぇ、今日、一緒にお昼ご飯食べませんかぁ?」
教室の中でも身分の高い、見栄えもいい男子を見つけてアリスは声をかけた。
可愛い自分に微笑んで誘われたら断らないだろう、と思って。
だが、その生徒は首を横に振った。
「婚約者と先約があるので」
「ぇえ~……私と食べた方が、きっと楽しいよ?」
唇を尖らせて、上目遣いに見るけれど、男子生徒は見向きもせずに、もう一度言った。
「婚約者と先約があるので、お断りする」
「ひどぉい。何で冷たくするのぉ……」
じわり、と大きな目に涙を浮かべるが、呆れたような声が背後から聞こえた。
「冷たいも何も、先に約束が入ってるんだろ」
「何で自分を優先させようとしてるんだよ。厚かましい」
その声の方を見るが、誰が言ったのかは分からない。
だが、確実なのはアリスが泣けば守ってくれる「友人」が今は居ないという事だ。
「じゃぁいいもん。他の人誘うから。……ね、一緒にお昼ご飯…」
次は身分よりも顔で選んだのか、美形で人気が高い男子生徒に声をかけるが、誘っている途中で断られる。
「無理」
「えっ?」
思わず聞き返すが、赤い髪の美形男子は、フンと鼻で笑った。
「未来の王太子妃とは恐れ多くてご一緒できません、と言えば分かるか?」
「え、えぇと……それって、記念になるんじゃない?」
一瞬真顔になった男子生徒は、呆れたように続けた。
「王太子に不貞だと言われたら、処刑されるぞ」
「えぇ~?レンダー様は優しいからそんな事しないよぉ」
「駄目だ話が通じねぇ」
辺りでクスクスと忍び笑いが聞こえるが、アリスはそう言われても一人で食事をしたくなかった。
「ねぇ、いいでしょう?」
「話が通じねぇから無理」
面倒臭そうに言うと、男子生徒は立ち上がって教室を出て行ってしまった。
追いかけようか迷ったが、入れ違いに先生が入ってきてしまったので、アリスは仕方なく席に着く。
結局その日、アリスは一人で食事をする羽目になってしまった。
女生徒と食事はしたくないし、見栄えの悪い男子はもっと嫌だったのだ。
「オリゼー様のせい、なのかなぁ……」
昨日中庭であった出来事を、ぼんやりとアリスは思い出していた。
レンダーはよく、オリゼーが悪いと言っていたのだ。
アリスがクラスで浮いてるのも、苛められるのも。
けれど、オリゼーはアリスを褒めてくれたし、レンダーの正式な妃になるように応援してくれたのだ。
「オリゼー様はいい人だよねぇ?じゃぁ誰が悪いんだろぅ…」
悪いのは誰か気づかないまま、アリスは溜息を吐くのだった。
アリス・ピロウは普段通り登校したが、いつもと違う状況に戸惑っていた。
自分の周囲に居た友人が誰も居ないのだ。
「あれぇ……?」
可愛らしく首を傾げてみても、いないものはいない。
すぐさま可愛いなぁと褒めてくれる男達が、誰も自分の傍にいないのである。
「何処に居るんだろぅ……」
騎士科の修練場に、図書館に、生徒会室。
授業が始まるまで探し回っていたが、誰もいない。
「皆学校休んでるのかなぁ?何でぇ?」
昨日までは皆で楽しく過ごしていた。
この一年ずっと、人数は増えても減る事は無かったのだ。
仕方なく授業を受けるために教室へと向かう。
教室に入っても、話しかけてくる人は誰も居ない。
それどころか、近くにも寄ってこない。
「ねぇ、ねぇ、今日、一緒にお昼ご飯食べませんかぁ?」
教室の中でも身分の高い、見栄えもいい男子を見つけてアリスは声をかけた。
可愛い自分に微笑んで誘われたら断らないだろう、と思って。
だが、その生徒は首を横に振った。
「婚約者と先約があるので」
「ぇえ~……私と食べた方が、きっと楽しいよ?」
唇を尖らせて、上目遣いに見るけれど、男子生徒は見向きもせずに、もう一度言った。
「婚約者と先約があるので、お断りする」
「ひどぉい。何で冷たくするのぉ……」
じわり、と大きな目に涙を浮かべるが、呆れたような声が背後から聞こえた。
「冷たいも何も、先に約束が入ってるんだろ」
「何で自分を優先させようとしてるんだよ。厚かましい」
その声の方を見るが、誰が言ったのかは分からない。
だが、確実なのはアリスが泣けば守ってくれる「友人」が今は居ないという事だ。
「じゃぁいいもん。他の人誘うから。……ね、一緒にお昼ご飯…」
次は身分よりも顔で選んだのか、美形で人気が高い男子生徒に声をかけるが、誘っている途中で断られる。
「無理」
「えっ?」
思わず聞き返すが、赤い髪の美形男子は、フンと鼻で笑った。
「未来の王太子妃とは恐れ多くてご一緒できません、と言えば分かるか?」
「え、えぇと……それって、記念になるんじゃない?」
一瞬真顔になった男子生徒は、呆れたように続けた。
「王太子に不貞だと言われたら、処刑されるぞ」
「えぇ~?レンダー様は優しいからそんな事しないよぉ」
「駄目だ話が通じねぇ」
辺りでクスクスと忍び笑いが聞こえるが、アリスはそう言われても一人で食事をしたくなかった。
「ねぇ、いいでしょう?」
「話が通じねぇから無理」
面倒臭そうに言うと、男子生徒は立ち上がって教室を出て行ってしまった。
追いかけようか迷ったが、入れ違いに先生が入ってきてしまったので、アリスは仕方なく席に着く。
結局その日、アリスは一人で食事をする羽目になってしまった。
女生徒と食事はしたくないし、見栄えの悪い男子はもっと嫌だったのだ。
「オリゼー様のせい、なのかなぁ……」
昨日中庭であった出来事を、ぼんやりとアリスは思い出していた。
レンダーはよく、オリゼーが悪いと言っていたのだ。
アリスがクラスで浮いてるのも、苛められるのも。
けれど、オリゼーはアリスを褒めてくれたし、レンダーの正式な妃になるように応援してくれたのだ。
「オリゼー様はいい人だよねぇ?じゃぁ誰が悪いんだろぅ…」
悪いのは誰か気づかないまま、アリスは溜息を吐くのだった。
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