284 / 592
第四章:最弱の英雄と戦士達
第四十七話:最終目標は一人一魔王ですもの
しおりを挟む
敵は強大だった。
まあ、普通に国が相手にするなら前回のキマイラ、オーガロードと同程度かそれ以上だっただろうか。
合計で47匹のなんとかドラゴンが波状で現れた。
「ふう、30匹ですわ」
「……9匹だ」
「8匹……」
それでも、三人からしたら大したことではない。
特にオリヴィアはその性質上中程度の強さの敵が程よい数来る場合に最高の強さを発揮すると言っても良い。
ドラゴンやオーガロードの様に硬いわけでもなく、無駄に数だけが多いわけでもない。
急所を一突きにすればそれなりに倒せるレベルというのは、言ってみれば必中の餌食でしかないわけだ。
「まあ、あれだよクーリア姉、私の負けだから」
「あ、ああ」
「えーと、わたくしの勝ちということで?」【何の話でしたっけ?】
思い返してみれば、オリヴィアはその話をした時には既に遠くにいて、話を聞いていなかったわけだ。
「えーとね、オリ姉、クーリア姉とどれだけ魔物倒せるか勝負してたの」
そう言われて、オリヴィアも二人が戦闘前に笑い合っていたのを思い出す。
「あ、あーと、ごめんなさい」
その理由がクーリアの自信を取り戻させる為だったことを、流石に王女も理解して言う。
「二人ともそんなに気を使わなくて良い。実際に二人と戦ってみて、意外とアタシも捨てたものじゃないと分かったのは本当だ」
その言葉に偽りはなかった。
本日相手にした魔物達は、全ての魔物の中でもデーモンよりも上位に位置するものばかりだ。それを一刀両断出来る力があるというのは、確かに誇るべきことではあっても悲観すべきことではない。
しかも、エリーよりも少ない手数で倒している。それだけは事実だった。
「今回の魔物はこれで終わりらしい。アタシ達はエリーのアドバイス通り一度ウアカリに行ってみるが、お前達はどうする?」
「私達はアリエルちゃんの所行ってくるよ。久しぶりに遊んであげないとそろそろグレちゃうから」
「はっはっは、女王がグレたら大変だな。分かった。二人ともありがとう。オヴリヴィア、エリー、二人とも見違える程に強くなったな」
嬉しそうに、少し悔しそうに、クーリアはエリーの背を叩く。
「あはは、目標はクーリア姉とマルスさんが戦わなくて良い位強くなることだから」
「そうですわ。レイン様を継ぐ以上は最終目標は一人一魔王ですもの」
強がりでもなんでもなく、二人は言う。
決して超えられない目標かもしれない。しかしそれでも、師匠がその英雄である以上はそれを目標にしなければならない。いくらその師匠が二人の幸せを願っているのが分かっているとはいえ、それでも。
だからこそ、それを分かっているクーリアは言う。
「お前達なら必ずやれる。アタシもどうにか強くなれないか努力してみるさ。それじゃ、まずは目の前のことを解決しに行こうと思う。可愛い妹のイリスすらも置き去りにしてしまってるからな……」
「ん、イリス姉も大丈夫。強いから」
そうして三人でマルスや兵士達の元へと戻る。
不変の二人は、少しの挨拶を交わして、そのまま転移屋へと入って行った。
――。
「クーリア姉、やっぱ強いよ。まあ、人間だから色々思う所はあるけどね」
「そうですわね。人間ですもの、恋をすることもありますわ」
「私殆ど何もしてないのに心が回復してるもん」
未だ人を信じるのが難しいエリーにとってその強さは羨ましくもあり、手ごたえを感じない寂しいものでもある。
大切なものを守りたいだけで戦うエリーにとって、クーリアの強さは少しだけ理解が難しいものだった。
まあ、普通に国が相手にするなら前回のキマイラ、オーガロードと同程度かそれ以上だっただろうか。
合計で47匹のなんとかドラゴンが波状で現れた。
「ふう、30匹ですわ」
「……9匹だ」
「8匹……」
それでも、三人からしたら大したことではない。
特にオリヴィアはその性質上中程度の強さの敵が程よい数来る場合に最高の強さを発揮すると言っても良い。
ドラゴンやオーガロードの様に硬いわけでもなく、無駄に数だけが多いわけでもない。
急所を一突きにすればそれなりに倒せるレベルというのは、言ってみれば必中の餌食でしかないわけだ。
「まあ、あれだよクーリア姉、私の負けだから」
「あ、ああ」
「えーと、わたくしの勝ちということで?」【何の話でしたっけ?】
思い返してみれば、オリヴィアはその話をした時には既に遠くにいて、話を聞いていなかったわけだ。
「えーとね、オリ姉、クーリア姉とどれだけ魔物倒せるか勝負してたの」
そう言われて、オリヴィアも二人が戦闘前に笑い合っていたのを思い出す。
「あ、あーと、ごめんなさい」
その理由がクーリアの自信を取り戻させる為だったことを、流石に王女も理解して言う。
「二人ともそんなに気を使わなくて良い。実際に二人と戦ってみて、意外とアタシも捨てたものじゃないと分かったのは本当だ」
その言葉に偽りはなかった。
本日相手にした魔物達は、全ての魔物の中でもデーモンよりも上位に位置するものばかりだ。それを一刀両断出来る力があるというのは、確かに誇るべきことではあっても悲観すべきことではない。
しかも、エリーよりも少ない手数で倒している。それだけは事実だった。
「今回の魔物はこれで終わりらしい。アタシ達はエリーのアドバイス通り一度ウアカリに行ってみるが、お前達はどうする?」
「私達はアリエルちゃんの所行ってくるよ。久しぶりに遊んであげないとそろそろグレちゃうから」
「はっはっは、女王がグレたら大変だな。分かった。二人ともありがとう。オヴリヴィア、エリー、二人とも見違える程に強くなったな」
嬉しそうに、少し悔しそうに、クーリアはエリーの背を叩く。
「あはは、目標はクーリア姉とマルスさんが戦わなくて良い位強くなることだから」
「そうですわ。レイン様を継ぐ以上は最終目標は一人一魔王ですもの」
強がりでもなんでもなく、二人は言う。
決して超えられない目標かもしれない。しかしそれでも、師匠がその英雄である以上はそれを目標にしなければならない。いくらその師匠が二人の幸せを願っているのが分かっているとはいえ、それでも。
だからこそ、それを分かっているクーリアは言う。
「お前達なら必ずやれる。アタシもどうにか強くなれないか努力してみるさ。それじゃ、まずは目の前のことを解決しに行こうと思う。可愛い妹のイリスすらも置き去りにしてしまってるからな……」
「ん、イリス姉も大丈夫。強いから」
そうして三人でマルスや兵士達の元へと戻る。
不変の二人は、少しの挨拶を交わして、そのまま転移屋へと入って行った。
――。
「クーリア姉、やっぱ強いよ。まあ、人間だから色々思う所はあるけどね」
「そうですわね。人間ですもの、恋をすることもありますわ」
「私殆ど何もしてないのに心が回復してるもん」
未だ人を信じるのが難しいエリーにとってその強さは羨ましくもあり、手ごたえを感じない寂しいものでもある。
大切なものを守りたいだけで戦うエリーにとって、クーリアの強さは少しだけ理解が難しいものだった。
0
お気に入りに追加
401
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
名前を書くとお漏らしさせることが出来るノートを拾ったのでイジメてくる女子に復讐します。ついでにアイドルとかも漏らさせてやりたい放題します
カルラ アンジェリ
ファンタジー
平凡な高校生暁 大地は陰キャな性格も手伝って女子からイジメられていた。
そんな毎日に鬱憤が溜まっていたが相手が女子では暴力でやり返すことも出来ず苦しんでいた大地はある日一冊のノートを拾う。
それはお漏らしノートという物でこれに名前を書くと対象を自在にお漏らしさせることが出来るというのだ。
これを使い主人公はいじめっ子女子たちに復讐を開始する。
更にそれがきっかけで元からあったお漏らしフェチの素養は高まりアイドルも漏らさせていきやりたい放題することに。
ネット上ではこの怪事件が何らかの超常現象の力と話題になりそれを失禁王から略してシンと呼び一部から奉られることになる。
しかしその変態行為を許さない美少女名探偵が現れシンの正体を暴くことを誓い……
これはそんな一人の変態男と美少女名探偵の頭脳戦とお漏らしを楽しむ物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる