213 / 592
第十五章:帰還、そして最後の一年
第二百十三話:魔法使いの躍進
しおりを挟む
姿を隠してルーカス魔法学校を見に行ってみると、その授業は既にサニィの理論をきっちりと組み込んだ授業が行われていた。
教授達は教授達で、専門家としての意地もあったらしく、その理論は分野ごとにサニィよりも詳しく語られたりしている。
呪文に関しての研究はまだまだ途中の様で、そういうものがあるということ位。
とは言え、彼らのレベルは4年前に訪れた時とは比べものにならない位に成長していた。
「それにしても、蔦の魔法使いが多いですね」
「確実にお前の影響だろうな」
見ると、4人に1人は蔦の魔法を中心にしている様に見える。
「なんだか恥ずかしいものがありますね」
「まあ、あくまでイメージが重要な以上、お前の強力なそれを見てしまえばやりやすいんだろうな」
「ああ、当時にしては限界のやつ見せましたもんね」
そうして蔦の魔法を訓練している生徒を追いかけてみると、花壇へとたどり着く。
そこには蔦魔法研究用と書かれたコーナーがある。
「なるほど、蔦の魔法を使いこなす為にアサガオを育てようって、面白いですね」
「人によってはヘチマとかもあるみたいだな」
「私は小さな頃からうちでずっとお花を育ててましたけど、みんなもこうやって私と同じことを自然とする様になるって、なんだか可愛いです」
サニィの理論では、より強く理解して実感することが重要だ。その為に、植物を育てると言うのはそのままその実感を強化することに繋がる。
小さい頃、日がな一日アサガオの成長をのんびりと眺めていたり、朝に印を付けて夜にはこれだけ伸びてた、なんてことをやっていた懐かしい思い出が蘇ってくる。
「良いなぁ。初めて言いますけどお花も動物も大好きなんですよ私」
「とっくに知ってる」
「あはは、そうですよね」
今迄散々動物についてレインに語ってきたのだ。知らないわけがない。
生徒達が植物を育てているのを見て、サニィはほんの少し寂しそうだ。
「それじゃ、そんな珍しい花や動物でも探しにジャングルに入るか」
なので、気分転換も兼ねて次へ行こうと提案する。
「前回はレインさんのせいであんま見られなかったですからね」
すると、こんな返事が返ってくる。
「いや、十分見ただろう。と言うか俺のせいってなんだよ……」
「レインさんがしっかりドラゴン仕留めてくれないから不安でタマリンしか見た記憶ないです」
「そ、そうか……」
なんだかやたらと興奮していた記憶がレインにはあったが、サニィがそう言うなら仕方ない。
どっちにしろ、好きなだけ時間はとってやるつもりだ。
「よし、行くか」
「あ、ちょっと待ってください」
言って、サニィは建物の方へと歩き出した。
中に入り、一つの部屋の前で立ち止まると、探知で中を確認する。
「さて、中には居ないですね。ちょっと行ってきますね」
そう言うなり、中へと転移していく。
数分後、サニィは戻ってくると「行きましょっか」と言う。
「何をして来たんだ?」
「私が書いた魔法書を手紙付きで置いて来たんです。複製の魔法が使えるとこういう時便利です」
サニィの魔法書。それは旅の間、時間を見つけてはコツコツと書き上げてきたサニィの努力の結晶だ。
サニィの知っている全てがそこには書いてある。
魔法を使うにはより正確に事象をイメージする為に、しっかりと仕組みを理解することが大切だということを始め、陰陽のマナの存在、触媒を使った魔法、呪文、そして魔物の出現方法、何故勇者を優先的に狙うのか、それぞれの魔物に応じた弱点、魔王の目的。
更には、ある日を境に使える様になる各地への転移魔法の呪文。
それら全てが記してある。
既にマナスル魔法研究所とグレーズ王、アリエル、クーリアなどには渡してあるものと同じもの。
後に、『聖女の魔法書』と呼ばれるもの。
一魔法学校には過ぎた物かも知れないが、きっと役に立つもの。
それを、サニィは以前世話になったここの教頭の机にこっそりと置いて来たのだった。
「それじゃ、ジャングル行きましょ」
「ああ、行こうか」
今回の旅は、基本的に見守る為のものだ。
だから、生徒達が随分と成長しているのを見て、挨拶をするのもやめておくことに決めた。
そんな2人が校門を出て姿を表すと、すぐに気付いた教頭が、ひっそりと頭を下げた。
教頭にも、流石に聖女がサニィだということはとっくに分かっている。
金髪碧眼、巨大な白樺とルビーの杖を持った可愛らしい女性魔法使いと言えば、以前の魔法を見ればそんなものはサニィのことだと直ぐに分かる。
だからこそ、もう一度来てくれたことに、教頭は感謝を示した。
「あなたのおかげで、魔法使いでも勇者と一緒に十分戦えるんだと分かったのです。それはとても大きなこと。それだけで、感謝を」
そう言う教頭の言葉が二人に届くことはなかった。とは言え、これから活躍していく魔法使い達のことを考えると、教頭は頭を下げざるを得なかった。
もちろん、部屋に戻って魔法書を見つけた瞬間、教頭が聖女の信奉者を自称することになったのは、ここでは置いておくことにしよう。
教授達は教授達で、専門家としての意地もあったらしく、その理論は分野ごとにサニィよりも詳しく語られたりしている。
呪文に関しての研究はまだまだ途中の様で、そういうものがあるということ位。
とは言え、彼らのレベルは4年前に訪れた時とは比べものにならない位に成長していた。
「それにしても、蔦の魔法使いが多いですね」
「確実にお前の影響だろうな」
見ると、4人に1人は蔦の魔法を中心にしている様に見える。
「なんだか恥ずかしいものがありますね」
「まあ、あくまでイメージが重要な以上、お前の強力なそれを見てしまえばやりやすいんだろうな」
「ああ、当時にしては限界のやつ見せましたもんね」
そうして蔦の魔法を訓練している生徒を追いかけてみると、花壇へとたどり着く。
そこには蔦魔法研究用と書かれたコーナーがある。
「なるほど、蔦の魔法を使いこなす為にアサガオを育てようって、面白いですね」
「人によってはヘチマとかもあるみたいだな」
「私は小さな頃からうちでずっとお花を育ててましたけど、みんなもこうやって私と同じことを自然とする様になるって、なんだか可愛いです」
サニィの理論では、より強く理解して実感することが重要だ。その為に、植物を育てると言うのはそのままその実感を強化することに繋がる。
小さい頃、日がな一日アサガオの成長をのんびりと眺めていたり、朝に印を付けて夜にはこれだけ伸びてた、なんてことをやっていた懐かしい思い出が蘇ってくる。
「良いなぁ。初めて言いますけどお花も動物も大好きなんですよ私」
「とっくに知ってる」
「あはは、そうですよね」
今迄散々動物についてレインに語ってきたのだ。知らないわけがない。
生徒達が植物を育てているのを見て、サニィはほんの少し寂しそうだ。
「それじゃ、そんな珍しい花や動物でも探しにジャングルに入るか」
なので、気分転換も兼ねて次へ行こうと提案する。
「前回はレインさんのせいであんま見られなかったですからね」
すると、こんな返事が返ってくる。
「いや、十分見ただろう。と言うか俺のせいってなんだよ……」
「レインさんがしっかりドラゴン仕留めてくれないから不安でタマリンしか見た記憶ないです」
「そ、そうか……」
なんだかやたらと興奮していた記憶がレインにはあったが、サニィがそう言うなら仕方ない。
どっちにしろ、好きなだけ時間はとってやるつもりだ。
「よし、行くか」
「あ、ちょっと待ってください」
言って、サニィは建物の方へと歩き出した。
中に入り、一つの部屋の前で立ち止まると、探知で中を確認する。
「さて、中には居ないですね。ちょっと行ってきますね」
そう言うなり、中へと転移していく。
数分後、サニィは戻ってくると「行きましょっか」と言う。
「何をして来たんだ?」
「私が書いた魔法書を手紙付きで置いて来たんです。複製の魔法が使えるとこういう時便利です」
サニィの魔法書。それは旅の間、時間を見つけてはコツコツと書き上げてきたサニィの努力の結晶だ。
サニィの知っている全てがそこには書いてある。
魔法を使うにはより正確に事象をイメージする為に、しっかりと仕組みを理解することが大切だということを始め、陰陽のマナの存在、触媒を使った魔法、呪文、そして魔物の出現方法、何故勇者を優先的に狙うのか、それぞれの魔物に応じた弱点、魔王の目的。
更には、ある日を境に使える様になる各地への転移魔法の呪文。
それら全てが記してある。
既にマナスル魔法研究所とグレーズ王、アリエル、クーリアなどには渡してあるものと同じもの。
後に、『聖女の魔法書』と呼ばれるもの。
一魔法学校には過ぎた物かも知れないが、きっと役に立つもの。
それを、サニィは以前世話になったここの教頭の机にこっそりと置いて来たのだった。
「それじゃ、ジャングル行きましょ」
「ああ、行こうか」
今回の旅は、基本的に見守る為のものだ。
だから、生徒達が随分と成長しているのを見て、挨拶をするのもやめておくことに決めた。
そんな2人が校門を出て姿を表すと、すぐに気付いた教頭が、ひっそりと頭を下げた。
教頭にも、流石に聖女がサニィだということはとっくに分かっている。
金髪碧眼、巨大な白樺とルビーの杖を持った可愛らしい女性魔法使いと言えば、以前の魔法を見ればそんなものはサニィのことだと直ぐに分かる。
だからこそ、もう一度来てくれたことに、教頭は感謝を示した。
「あなたのおかげで、魔法使いでも勇者と一緒に十分戦えるんだと分かったのです。それはとても大きなこと。それだけで、感謝を」
そう言う教頭の言葉が二人に届くことはなかった。とは言え、これから活躍していく魔法使い達のことを考えると、教頭は頭を下げざるを得なかった。
もちろん、部屋に戻って魔法書を見つけた瞬間、教頭が聖女の信奉者を自称することになったのは、ここでは置いておくことにしよう。
0
お気に入りに追加
401
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる