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第十章:未来の為に
第百三十四話:世界のことよりも
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「そういうことで、アリエル、女王エリーゼはレインさんにも会いたいって言ってましたよ」
「そうか。俺がやったことで迷惑をかけたな。お前にも、女王にも、宰相にもな」
「私の責任でもありますから」
次の日、これまでのことをレインに説明する。
なんとかアリエル・エリーゼの協力を得られたこと、オリヴィアが友好の証としてではないけれど騎士団を鍛えていること、ルークとエレナの協力も得られたこと、彼ら二人だけを強化してあげたこと。
「やっぱり少し、自分勝手でしたよね。研究員のエイミーさん位強化した方が良かったでしょうか」
「いいや、構わないさ。俺達は既に魔王を二体倒してる」
「倒したのは両方レインさん一人なんですけど……」
「俺達が手を出しすぎてもな……。サニィが今いる魔法使いを全員強化したらどうなる?」
「うーん、確かに。きっちり8年後に出てくるなら良いかもですけど、50年後に出たら、困りますね」
魔王がいつ出現するのかは、乗り移られたサニィ自身にも分かっていない。
8年後かもしれないし、100年後かもしれない。分かっているのは、次の魔王が取り敢えずは区切りの魔王となっている、という事だけ。
魔王出現が遅くなるほど、今後必要となるのはサニィの強化ではなく地力の強化となる。
サニィに頼ってしまえば次代が育たない可能性すらある。サニィが次々と強化してしまえば、サニィが死んで以降の魔法使いは全てが才能のない魔法使い。それではそもそも、やる気すら出ない。
「あの二人は頭が良い。お前が何も言わなくとも強くなった理由を理解するし、あの二人はそもそもが特別だ。むしろ、これ以上大人数の強化はしない方が良いだろう」
「そういうものですかー」
「お前はそう言う意味では運が悪い。なんでも出来すぎるからな。だから、女王エリーゼのことだって、もっと俺のせいにしていいんだ。そもそも、そこからの話だ」
「でも、能力ある者はそれを行使するのが義務だってレインさん言ってましたよぉ」
説得しても、サニィの心の中の罪悪感はそう簡単には消えない。
魔王に乗り移られてから、どうしてもこういった場面が多く見られるようになってしまった。
陰のマナの影響で凶暴化等の悪影響が見られる様になってしまったが、彼女自身それが理由なのか、本人の性格故なのか、分からなくなってしまっている部分もあるのかもしれない。
それなら、少し考えを変えたほうがいいのかもしれない。
「そうか。それじゃ、こうだ。お前には呪いを解除する能力など無かった。なんでも出来るなんて思い上がるんじゃない。お前は俺の言うとおりにだけしていれば良い」
「……あはは、さっき言ったことと真逆じゃないですか」
「実際のところ、お前は自分の力の及ばないこともあるってことは理解したほうが良いかもしれない。
お前に出来ないってことは、この世界の誰にも出来ない。だから、そんなに気負う必要はない。
悪い悪くないで言ってしまえば、自分では出来ない癖に他人に期待する者だって悪いだろう」
「なんか、言ってることめちゃくちゃな気もしますけど……」
「そうでもないさ。能力は行使しなければならないってのは、能力を持っている者が考えることで、他人が押し付けて良いものではない」
「だから、女王エリーゼのことに関しては両方悪いってことですか?」
そういうことだ、と答えるレインに対して、サニィはそこまで納得は出来ない。
でも、よくよく考えてみれば確かに、治すと豪語した自分も悪いけれど、宰相と前女王、レインは助けられないと予測していたらしい。それを、余りにも期待する現女王に誰一人として伝えられなかった。
それでも、自分が彼女に嘘を吐いてしまったことには変わりがないけれど……。
「私には分かりません……」
「それもまた答えだ。ま、俺は何があってもお前の味方。いつでも頼ってくれ」
上手く纏められてしまった様な、誤魔化されただけの様な。
それでも、確かにたった一人になってしまってからずっと、この人は自分の味方でいてくれた。
この人を助けたいと考えてグレーズ王国を出発したけれど、結局のところは助けられてばかりだった様な気もする。
魔王化してから、確かに色々と考えすぎだった所はあったかもしれない。
「それならレインさん、なるべく早めにアリエルちゃんの所に戻りたいです。エリーちゃんの修行はどうですか?」
結局の所、落ち込んだ最大の原因は魔王化よりも彼女を悲しませてしまった所にある。
少しだけ残りの時間を消費してしまうかもしれないけれど、彼女笑顔をまた見たい。
レインと三人で、また笑顔で遊ぶことが出来れば、少しは救われるかもしれない。
ただの我が儘かもしれない。その為にレインの寿命を削ってしまうし、魔王対策も遅れてしまうかもしれない。
きっと、世界的に見たら悪いことだ。
「エリーとアリスに確認をしてこよう」
レインは微笑むと、立ち上がって部屋を出て行った。
その際に「俺は世界よりもサニィの方が大切だ」そんな風に呟いたのが、聞こえた気がした。
「そうか。俺がやったことで迷惑をかけたな。お前にも、女王にも、宰相にもな」
「私の責任でもありますから」
次の日、これまでのことをレインに説明する。
なんとかアリエル・エリーゼの協力を得られたこと、オリヴィアが友好の証としてではないけれど騎士団を鍛えていること、ルークとエレナの協力も得られたこと、彼ら二人だけを強化してあげたこと。
「やっぱり少し、自分勝手でしたよね。研究員のエイミーさん位強化した方が良かったでしょうか」
「いいや、構わないさ。俺達は既に魔王を二体倒してる」
「倒したのは両方レインさん一人なんですけど……」
「俺達が手を出しすぎてもな……。サニィが今いる魔法使いを全員強化したらどうなる?」
「うーん、確かに。きっちり8年後に出てくるなら良いかもですけど、50年後に出たら、困りますね」
魔王がいつ出現するのかは、乗り移られたサニィ自身にも分かっていない。
8年後かもしれないし、100年後かもしれない。分かっているのは、次の魔王が取り敢えずは区切りの魔王となっている、という事だけ。
魔王出現が遅くなるほど、今後必要となるのはサニィの強化ではなく地力の強化となる。
サニィに頼ってしまえば次代が育たない可能性すらある。サニィが次々と強化してしまえば、サニィが死んで以降の魔法使いは全てが才能のない魔法使い。それではそもそも、やる気すら出ない。
「あの二人は頭が良い。お前が何も言わなくとも強くなった理由を理解するし、あの二人はそもそもが特別だ。むしろ、これ以上大人数の強化はしない方が良いだろう」
「そういうものですかー」
「お前はそう言う意味では運が悪い。なんでも出来すぎるからな。だから、女王エリーゼのことだって、もっと俺のせいにしていいんだ。そもそも、そこからの話だ」
「でも、能力ある者はそれを行使するのが義務だってレインさん言ってましたよぉ」
説得しても、サニィの心の中の罪悪感はそう簡単には消えない。
魔王に乗り移られてから、どうしてもこういった場面が多く見られるようになってしまった。
陰のマナの影響で凶暴化等の悪影響が見られる様になってしまったが、彼女自身それが理由なのか、本人の性格故なのか、分からなくなってしまっている部分もあるのかもしれない。
それなら、少し考えを変えたほうがいいのかもしれない。
「そうか。それじゃ、こうだ。お前には呪いを解除する能力など無かった。なんでも出来るなんて思い上がるんじゃない。お前は俺の言うとおりにだけしていれば良い」
「……あはは、さっき言ったことと真逆じゃないですか」
「実際のところ、お前は自分の力の及ばないこともあるってことは理解したほうが良いかもしれない。
お前に出来ないってことは、この世界の誰にも出来ない。だから、そんなに気負う必要はない。
悪い悪くないで言ってしまえば、自分では出来ない癖に他人に期待する者だって悪いだろう」
「なんか、言ってることめちゃくちゃな気もしますけど……」
「そうでもないさ。能力は行使しなければならないってのは、能力を持っている者が考えることで、他人が押し付けて良いものではない」
「だから、女王エリーゼのことに関しては両方悪いってことですか?」
そういうことだ、と答えるレインに対して、サニィはそこまで納得は出来ない。
でも、よくよく考えてみれば確かに、治すと豪語した自分も悪いけれど、宰相と前女王、レインは助けられないと予測していたらしい。それを、余りにも期待する現女王に誰一人として伝えられなかった。
それでも、自分が彼女に嘘を吐いてしまったことには変わりがないけれど……。
「私には分かりません……」
「それもまた答えだ。ま、俺は何があってもお前の味方。いつでも頼ってくれ」
上手く纏められてしまった様な、誤魔化されただけの様な。
それでも、確かにたった一人になってしまってからずっと、この人は自分の味方でいてくれた。
この人を助けたいと考えてグレーズ王国を出発したけれど、結局のところは助けられてばかりだった様な気もする。
魔王化してから、確かに色々と考えすぎだった所はあったかもしれない。
「それならレインさん、なるべく早めにアリエルちゃんの所に戻りたいです。エリーちゃんの修行はどうですか?」
結局の所、落ち込んだ最大の原因は魔王化よりも彼女を悲しませてしまった所にある。
少しだけ残りの時間を消費してしまうかもしれないけれど、彼女笑顔をまた見たい。
レインと三人で、また笑顔で遊ぶことが出来れば、少しは救われるかもしれない。
ただの我が儘かもしれない。その為にレインの寿命を削ってしまうし、魔王対策も遅れてしまうかもしれない。
きっと、世界的に見たら悪いことだ。
「エリーとアリスに確認をしてこよう」
レインは微笑むと、立ち上がって部屋を出て行った。
その際に「俺は世界よりもサニィの方が大切だ」そんな風に呟いたのが、聞こえた気がした。
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