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第七章:グレーズ王国の魔物事情と
第七十四話:二人の旅立ちと安心の祖国
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「それでは俺達はこれで発つ。オリヴィア、ディエゴ、また戻ってくるが、エリーと共にこの国を頼む」
「私達は世界を救わないといけませんからね。レインさんの妄言が本当になるとは思いませんでしたけど、魔王が復活した以上は倒さないとですから」
二人は今日グレーズ王国を旅立ち、北に向かう。
今後の魔物対策は予言の上では問題なし。後は残る者達に任せるしかない。
本当は二人の英雄を引き止めたい所ではあるが、流石に呪いのことを知ってしまっては彼らの思いを尊重せざるを得なかった。
しかし、二人が王都に寄ってくれた事で新たな道が開かれた。
それだけで今回は、最良の結果が得られたことだろう。
「はい。ディエゴ超えはもう少し。弟、王子も生まれることですし、お任せ下さい」
「とは言え極力戦闘はお控え下さいね。基本的には騎士団が戦います。もちろん私もオリヴィア様に負けるつもりはありません」
やる気満々のオリヴィアにディエゴは苦言を呈すものの、最早彼女のやる気は止められないだろう。
弟が出来た理由はレイン達の三角関係に久しぶりに興奮した王達が盛り上がった、と言うことは隠しておくが、9ヶ月もすれば元気な男児が生まれる。王国に更なる発展をもたらす善王になる星の下に生まれる子、という予言すら出ている以上、誰もオリヴィアを止められはしない。
「あ、良いことを思いつきましたわ! 弟をスムーズに次代の王へと即位させる為にも、わたくしは徐々に引きこもりのろくでなし姫と言う設定にしましょう! マイケル、手伝いを頼みますわ! 姉弟子のエリー様にも会いにも行かなければなりません!」
「何を言っているのですかあなたは! エリー君は私がレインから頼まれた案件です! 彼女はいつか騎士団で面倒を見ることになるんですから。と言うよりあなたがそんな簡単に王都を出てはいけません!」
「いいえ、わたくしが行きます! マイケルは騎士団長、あなたが王都を離れたらわたくしが最前線に出て戦うことになりますよ? ……うん、それも良いですわね。わたくしもレイン様の弟子な以上、英雄になる義務があるのですわ! さあ、早くエリー様の所に行くが良いです!」
相変わらずディエゴは大変そうだ。
オリヴィアもレインに憧れていただけあってか、実際に弟子入りしてか、自由さが増している。
それが良いのか悪いのか、最早分かりはしないが。
まあ、この様子であればこの国の魔物事情に関しては問題ないだろう。
彼らはまだまだ強くなる。見ている限り、それが分かっている。
「よし、エリーのことはオリヴィアに任せる。ただし、ディエゴを超えてからだ。模擬戦三連勝を条件とする」
「お、おいレイン……。お前な……」
ディエゴは頭を抱える。そろそろ頭皮が心配なレベルだ。
「お転婆が居ない方がいくらか仕事も楽になるってもんだ。このお姫様なら心配する必要はない」
「レイン様ぁ……、やはり、次に会うときにはわたくしを……。もちろんお姉さまもご一緒に」
「それは俺とサニィを超えてからだ。油断してるとすぐエリーに抜かれるぞ」
「あ、はい」
オリヴィアの味方をしたレインに彼女はうっとりとした表情を浮かべるが、レインは弟子に萌えない。
いや、それはどうでも良い。レインの目的はオリヴィアの存在がエリーの起爆剤に、そしてエリーもまたオリヴィアの起爆剤に、そうなれば良いと考えただけだった。
エリーに教えた剣技は相手の心理を読む変速技。心を読むエリーただ一人にしか出来ない特殊な技術の基本だった。
それに対してオリヴィアの剣技は実直さが基本。型に倣った王道の剣術。最短最速で相手を仕留める技術。
二人の弟子がお互いに高め合えばどんな魔物にも対応出来る様になる。
そんな計らいだ。
「ま、あとは任せる。騎士団の皆も気力は十分。この国はお前達が守ってくれると信じている」
「本当に私、いや、まあ今くらいは良いだろう。俺は大変なんだ。今後は魔法使いの強化にも努めなければならない。全く、お前にそんなことを言われたら出来ないとは言えないじゃないか。
オリヴィア様、本当に気をつけてくださいね。ピーテルと王妃様は俺が説得を手伝いますから。
ただし、レインが言った通り、俺を倒してからだ。まだまだ負けんぞ?」
「ええディエゴ。いつもありがとう。ご褒美に一刻も早くボコボコにしてあげましょう」
結局のところ面倒見の良いディエゴだった。
彼の苦労人ポジションは今後もずっと続くだろう。何せ、王も王妃もアレで、王女までアレだ。生まれる王子がどんなものなのか分かったものではない。有能なのは間違いないだろうが、それは苦労をしないということではない。
「さて、行くかサニィ。自分の育った国は、思った以上に面白いところだった」
「あはは、デスワームだけはもう二度とごめんですけど。北の国も面白いところだと良いですね」
二人は王都から北に向かって旅立つ。
ライバルであるディエゴ・ルーデンスと弟子オリヴィアに見守られながら。
いつの間にか増えていた、王と王妃、騎士団、そして、影は薄いが確かに居た、家臣たちに見守られながら。
次に向かうは北の国。巨大な永久凍土を国土に持つこの大陸一の大国だ。
残り【1583日】
「私達は世界を救わないといけませんからね。レインさんの妄言が本当になるとは思いませんでしたけど、魔王が復活した以上は倒さないとですから」
二人は今日グレーズ王国を旅立ち、北に向かう。
今後の魔物対策は予言の上では問題なし。後は残る者達に任せるしかない。
本当は二人の英雄を引き止めたい所ではあるが、流石に呪いのことを知ってしまっては彼らの思いを尊重せざるを得なかった。
しかし、二人が王都に寄ってくれた事で新たな道が開かれた。
それだけで今回は、最良の結果が得られたことだろう。
「はい。ディエゴ超えはもう少し。弟、王子も生まれることですし、お任せ下さい」
「とは言え極力戦闘はお控え下さいね。基本的には騎士団が戦います。もちろん私もオリヴィア様に負けるつもりはありません」
やる気満々のオリヴィアにディエゴは苦言を呈すものの、最早彼女のやる気は止められないだろう。
弟が出来た理由はレイン達の三角関係に久しぶりに興奮した王達が盛り上がった、と言うことは隠しておくが、9ヶ月もすれば元気な男児が生まれる。王国に更なる発展をもたらす善王になる星の下に生まれる子、という予言すら出ている以上、誰もオリヴィアを止められはしない。
「あ、良いことを思いつきましたわ! 弟をスムーズに次代の王へと即位させる為にも、わたくしは徐々に引きこもりのろくでなし姫と言う設定にしましょう! マイケル、手伝いを頼みますわ! 姉弟子のエリー様にも会いにも行かなければなりません!」
「何を言っているのですかあなたは! エリー君は私がレインから頼まれた案件です! 彼女はいつか騎士団で面倒を見ることになるんですから。と言うよりあなたがそんな簡単に王都を出てはいけません!」
「いいえ、わたくしが行きます! マイケルは騎士団長、あなたが王都を離れたらわたくしが最前線に出て戦うことになりますよ? ……うん、それも良いですわね。わたくしもレイン様の弟子な以上、英雄になる義務があるのですわ! さあ、早くエリー様の所に行くが良いです!」
相変わらずディエゴは大変そうだ。
オリヴィアもレインに憧れていただけあってか、実際に弟子入りしてか、自由さが増している。
それが良いのか悪いのか、最早分かりはしないが。
まあ、この様子であればこの国の魔物事情に関しては問題ないだろう。
彼らはまだまだ強くなる。見ている限り、それが分かっている。
「よし、エリーのことはオリヴィアに任せる。ただし、ディエゴを超えてからだ。模擬戦三連勝を条件とする」
「お、おいレイン……。お前な……」
ディエゴは頭を抱える。そろそろ頭皮が心配なレベルだ。
「お転婆が居ない方がいくらか仕事も楽になるってもんだ。このお姫様なら心配する必要はない」
「レイン様ぁ……、やはり、次に会うときにはわたくしを……。もちろんお姉さまもご一緒に」
「それは俺とサニィを超えてからだ。油断してるとすぐエリーに抜かれるぞ」
「あ、はい」
オリヴィアの味方をしたレインに彼女はうっとりとした表情を浮かべるが、レインは弟子に萌えない。
いや、それはどうでも良い。レインの目的はオリヴィアの存在がエリーの起爆剤に、そしてエリーもまたオリヴィアの起爆剤に、そうなれば良いと考えただけだった。
エリーに教えた剣技は相手の心理を読む変速技。心を読むエリーただ一人にしか出来ない特殊な技術の基本だった。
それに対してオリヴィアの剣技は実直さが基本。型に倣った王道の剣術。最短最速で相手を仕留める技術。
二人の弟子がお互いに高め合えばどんな魔物にも対応出来る様になる。
そんな計らいだ。
「ま、あとは任せる。騎士団の皆も気力は十分。この国はお前達が守ってくれると信じている」
「本当に私、いや、まあ今くらいは良いだろう。俺は大変なんだ。今後は魔法使いの強化にも努めなければならない。全く、お前にそんなことを言われたら出来ないとは言えないじゃないか。
オリヴィア様、本当に気をつけてくださいね。ピーテルと王妃様は俺が説得を手伝いますから。
ただし、レインが言った通り、俺を倒してからだ。まだまだ負けんぞ?」
「ええディエゴ。いつもありがとう。ご褒美に一刻も早くボコボコにしてあげましょう」
結局のところ面倒見の良いディエゴだった。
彼の苦労人ポジションは今後もずっと続くだろう。何せ、王も王妃もアレで、王女までアレだ。生まれる王子がどんなものなのか分かったものではない。有能なのは間違いないだろうが、それは苦労をしないということではない。
「さて、行くかサニィ。自分の育った国は、思った以上に面白いところだった」
「あはは、デスワームだけはもう二度とごめんですけど。北の国も面白いところだと良いですね」
二人は王都から北に向かって旅立つ。
ライバルであるディエゴ・ルーデンスと弟子オリヴィアに見守られながら。
いつの間にか増えていた、王と王妃、騎士団、そして、影は薄いが確かに居た、家臣たちに見守られながら。
次に向かうは北の国。巨大な永久凍土を国土に持つこの大陸一の大国だ。
残り【1583日】
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