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第三章:少女の夢の第一歩
第二十五話:それは未来へと繋がる
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二人は次の日、紙とペンを受け取ると街を出発した。
目的地は勿論南方のジャングル。
それほど街から遠くもなければ、出てくる魔物も二人にとっては大した強さではない。
しかし、そこは生のサイクルが廻り廻る楽園。様々な魔物や、一般的に言えば危険な猛獣がひしめいている。
既に予想以上の強さになってしまったサニィの、自分の強さを認める心の準備をするには良い場所だろう。彼女はまだまだ、半人前の意識だった。
そう思いつつ、街を出ようとすると、何やら多くの人がいる。
「姉御ー!! 親分ー!!」
そんな声が聞こえる。
「あいつら、俺達を見送る為にわざわざ集まったのか。流石は優秀だな」
「あはは。負けた瞬間忠実になるって、なんか単純で面白いですね」
まだ名前も知らぬ彼ら4人組は、二人を見送る為にわざわざ大勢の学生を集めて待っていたらしい。雑魚っぽくて面白い。そんな感想を漏らされていることなど露知らず。
彼らの所まで辿り着くと、何やら口々に感謝の言葉を述べられる。
「見送り感謝する。礼としてお前らの名前を覚えてやろう」
そんなレインの上から目線の発言に、4人組は尻尾を振って応じる。喋る順にジョン、ジョニー、ジョージ、そして喋らない奴がサム。
レインとサニィはそれぞれ覚えたと応じると、彼らは二人のサインを求めて来た。
「お二人は魔法の歴史を変える人っす! 俺達もそんな手助けがしたい! だから、頑張る為にも、自分を戒める為にも役立つと思うんで、サイン下さい!」
彼らは実際優秀だった。サニィの理論を聞いて、その日最も才能を伸ばしたのがこの4人。そんな彼らが自分達の手助けをしてくれると言う。
それがどう言うことなのかはサニィはイマイチ分かっては居なかったが、笑顔の二つ返事で了承した。
「はい。では、これからも頑張って下さいね。私達はこの街に戻って来られるかは分かりませんけれど、皆さんの活躍を期待しています」
「「「ありがとうございます姉御!いえ、サニィ師匠!!」」」
「あはは、まだまだ私も半人前だから。お互い頑張りましょう」
4人の熱い尊敬の念に照れつつも、満更ではないサニィ。一方で、レインは鋭い顔をしていた。
「お前らがサニィを師と呼ぶからには、俺の弟子でもあるわけだ。俺は弟子にサイン等やらん。かかってこい」
「「「……はい」」」
恐らくこれも『狛の村流』なのだろう。
そう理解した優秀な4人組は、各々自分達が極めると決めた魔法を一斉に繰り出した。
それは侵入した二人を仕留めようと放った魔法とは全く別のレベル。彼らは二人の授業が終わってから、必死になって鍛錬と勉強をしていたのだ。夜中の間ずっと。この時の為に。
まだ少しイメージに時間はかかるものの、これを放てる時間さえ確保出来れば、これを素早く放てるようにさえなれば、彼らは切り札にすらなるだろう。
そんな威力だった。
「オーガ6匹分。4人で連携も合わせれば35匹分。合格だろう」
「「「オーガ!あのオーガですか!?」」」
「ああ、あのオーガだ。更に鍛錬を重ねろ。お前達は強くなる。ただ、驕るなよ」
「「「はい!!」」」
オーガは学生では決して手を出していけない魔物の1つ。一対一で勝てるなら最早優秀な戦士だと言われている。そんな相手の35匹分。
サニィの両親合わせて、50匹と予測されていた中でのそれだ。
それは彼らにとってこれ以上無い賛辞だった。
彼らはまだまだ若い。
これからの伸び代は、まだまだあるだろう。
そして、レイン自身は気付いていないが、そんな連携の魔法を全力で撃たれてけろっと打ち消しているレインを前に、4人の驕りの気持ちは完全になくなっていた。
たった1日の間の訓練だけど、誰しもが驚愕する程になった魔法を、オーガ35匹と称された魔法を、まるで何事もなかった様に打ち消す。そんな化け物を目の当たりにしたのだ。
彼らの辞書からその日、驕りの文字は消え去っていた。
「では、私達は先へ進みますね。みなさん見送りありがとうございます」
二人は再び歩き出す。
青い花の川を咲かせながら。
その川を、大勢の人が目撃しているとも知らず、先へ向かって進んでいく。
彼らはまだ気付いていない。その花の川は、永久に咲き続けることを。サニィの能力は、魔法の一言で片付けられるものではないことを。
そして、彼らは決して知ることがない。二人の弟子となったジョン、ジョニー、ジョージ、サムは、しっかりと二人の教えを受け継ぎ、後世に名を残す魔法使いとなることを。
彼らは何も知らずに、先のない未来と歩いていく。
目的地は勿論南方のジャングル。
それほど街から遠くもなければ、出てくる魔物も二人にとっては大した強さではない。
しかし、そこは生のサイクルが廻り廻る楽園。様々な魔物や、一般的に言えば危険な猛獣がひしめいている。
既に予想以上の強さになってしまったサニィの、自分の強さを認める心の準備をするには良い場所だろう。彼女はまだまだ、半人前の意識だった。
そう思いつつ、街を出ようとすると、何やら多くの人がいる。
「姉御ー!! 親分ー!!」
そんな声が聞こえる。
「あいつら、俺達を見送る為にわざわざ集まったのか。流石は優秀だな」
「あはは。負けた瞬間忠実になるって、なんか単純で面白いですね」
まだ名前も知らぬ彼ら4人組は、二人を見送る為にわざわざ大勢の学生を集めて待っていたらしい。雑魚っぽくて面白い。そんな感想を漏らされていることなど露知らず。
彼らの所まで辿り着くと、何やら口々に感謝の言葉を述べられる。
「見送り感謝する。礼としてお前らの名前を覚えてやろう」
そんなレインの上から目線の発言に、4人組は尻尾を振って応じる。喋る順にジョン、ジョニー、ジョージ、そして喋らない奴がサム。
レインとサニィはそれぞれ覚えたと応じると、彼らは二人のサインを求めて来た。
「お二人は魔法の歴史を変える人っす! 俺達もそんな手助けがしたい! だから、頑張る為にも、自分を戒める為にも役立つと思うんで、サイン下さい!」
彼らは実際優秀だった。サニィの理論を聞いて、その日最も才能を伸ばしたのがこの4人。そんな彼らが自分達の手助けをしてくれると言う。
それがどう言うことなのかはサニィはイマイチ分かっては居なかったが、笑顔の二つ返事で了承した。
「はい。では、これからも頑張って下さいね。私達はこの街に戻って来られるかは分かりませんけれど、皆さんの活躍を期待しています」
「「「ありがとうございます姉御!いえ、サニィ師匠!!」」」
「あはは、まだまだ私も半人前だから。お互い頑張りましょう」
4人の熱い尊敬の念に照れつつも、満更ではないサニィ。一方で、レインは鋭い顔をしていた。
「お前らがサニィを師と呼ぶからには、俺の弟子でもあるわけだ。俺は弟子にサイン等やらん。かかってこい」
「「「……はい」」」
恐らくこれも『狛の村流』なのだろう。
そう理解した優秀な4人組は、各々自分達が極めると決めた魔法を一斉に繰り出した。
それは侵入した二人を仕留めようと放った魔法とは全く別のレベル。彼らは二人の授業が終わってから、必死になって鍛錬と勉強をしていたのだ。夜中の間ずっと。この時の為に。
まだ少しイメージに時間はかかるものの、これを放てる時間さえ確保出来れば、これを素早く放てるようにさえなれば、彼らは切り札にすらなるだろう。
そんな威力だった。
「オーガ6匹分。4人で連携も合わせれば35匹分。合格だろう」
「「「オーガ!あのオーガですか!?」」」
「ああ、あのオーガだ。更に鍛錬を重ねろ。お前達は強くなる。ただ、驕るなよ」
「「「はい!!」」」
オーガは学生では決して手を出していけない魔物の1つ。一対一で勝てるなら最早優秀な戦士だと言われている。そんな相手の35匹分。
サニィの両親合わせて、50匹と予測されていた中でのそれだ。
それは彼らにとってこれ以上無い賛辞だった。
彼らはまだまだ若い。
これからの伸び代は、まだまだあるだろう。
そして、レイン自身は気付いていないが、そんな連携の魔法を全力で撃たれてけろっと打ち消しているレインを前に、4人の驕りの気持ちは完全になくなっていた。
たった1日の間の訓練だけど、誰しもが驚愕する程になった魔法を、オーガ35匹と称された魔法を、まるで何事もなかった様に打ち消す。そんな化け物を目の当たりにしたのだ。
彼らの辞書からその日、驕りの文字は消え去っていた。
「では、私達は先へ進みますね。みなさん見送りありがとうございます」
二人は再び歩き出す。
青い花の川を咲かせながら。
その川を、大勢の人が目撃しているとも知らず、先へ向かって進んでいく。
彼らはまだ気付いていない。その花の川は、永久に咲き続けることを。サニィの能力は、魔法の一言で片付けられるものではないことを。
そして、彼らは決して知ることがない。二人の弟子となったジョン、ジョニー、ジョージ、サムは、しっかりと二人の教えを受け継ぎ、後世に名を残す魔法使いとなることを。
彼らは何も知らずに、先のない未来と歩いていく。
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