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第六章:魔物と勇者と、魔法使い
幕間:オリーブ
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ふう、と大きく息を吐いて剣を鞘に納める。
宝剣『ささみ3号』は勇者ではなくなった今でも素直に従ってくれる。
どうやら勇者の力ではなく、わたくし自身に従ってくれているらしい。
目の前の魔物の山を見る。
重さが無い剣のおかげで正確に急所を打ち抜けたオークレギオンの群れ約百匹が、その身を血に染めながら横たわっていた。
「オリーブ様、あまり前に出られるのは……」
後から追いついて来たグレーズ軍の髭を蓄えた男が、渋い表情で話しかけて来た。
「ごめんなさいね。私のわがままで」
皆が敵の最前線のオーク達を抑えている間、わたくしはその中心を押し通り、主力であるレギオンに単身突撃していった。
一人で処理出来たから良いものの、もしもわたくしに怪我でもさせたらどうしようかと、彼はハラハラしたのかもしれない。
理由は簡単だった。
彼はわたくしの正体を知る軍の重役だ。
かつてはこの国の王女で最強の勇者。しかし今は勇者ですらないただの人で、特別軍事顧問。
そんなわたくしがもしも怪我でもしようものなら、彼は首が飛ぶとでも思ったのだろう。
それでも無理を言って、わたくしはその作戦を遂行させてもらった。
何故ならそれが一番効率的に敵を処理出来る方法だったのだから。
オーク達はジェネラルの指示の下、軍を築くことがある。その配下にあるレギオンは強力に強化され、更にその影響下にあるオーク達は非常に高い統率力を得る。
その為真正面から戦うだけでは無駄な体力と時間の浪費が多くなり、レギオンに辿り着く頃には一対一では軽く蹴散らせる勇者達であっても苦戦してしまうことが多々あるのだった。
だからこそジェネラルから倒せればそれが理想なのだけれど、そうはいかない。
オーク達の中には魔法使いも混ざっており、遠隔攻撃も器用に撃ち落とされることがあるし、中心を押し通ろうとすれば、最前線以外の全てのオーク達の敵意がそちらに向くことになる。
何故なら魔物達は習性として真っ先に勇者を狙うのだから。
そんな時、わたくしは一般人だった。
彼ら魔物にとっては殆ど気配のない、ただの人。
だからこそ中心を無理に通り抜けたところで気付く者はその付近にいた者だけで、統率されているとしても全体にその敵意が広がることはない。
つまり、一人でレギオン達を倒せる戦力を持った一般人がいれば、その人を突撃させることによって大幅に戦力を削ぐことが出来るのだった。
もちろんそんなことが可能な一般人など、普通は存在しないのだけれど。
「……あまり無茶をされると困ります。私も五人の子どもがいますので」
責任は自分が取ることになる、と暗に男は言った。
それでも、わたくしは止まる気は無かった。
「大丈夫よ。私が死んでも誰もあなたを責めないわ。国王に言ってあるもの」
現国王はわたくしの可愛い弟だ。今の年齢で可愛いと言ったら怒られるのかもしれないけれど、血を分けた弟なのだから仕方ない。
そんな弟にお願いをしてあるのだから、わたくしがどれだけ無茶をしたとして、それを止められなかった彼が責められることはあり得ない。
それでも、彼は心配な様子だった。
「貴女は、何故戦うのですか?」
もう十分過ぎるほどに役目を果たしたはずなのに。
そんな意味を込めた様に、彼は尋ねて来た。
だからわたくしはこう答える。
「それはきっと、私が馬鹿だからでしょうね」
言いながら、死体の先を見る。
オークジェネラルが、遠くからこちらを見ていた。
今のわたくしでは、一対一では決して勝てない化け物。
それを見て、髭の彼は溜め息を吐く。
「息子の為、師の為、妹分の為、世界の為、色々あるとは思いますが、もう貴女の出番は終わりですよ」
わたくしを押し退けて、ジェネラルに対峙した。
勇者の中でも一流を超えるとその膂力は一般人では逆らいようもなく、後ろに数歩ふらふらと下がってしまう。
その背中を柔らかく受け止める感触があった。
振り返ると、軍で何度も稽古を付けてあげた女の子がわたくしを支えていた。
どうやら後ろのオーク達は全て処理して追いついて来たらしく、人が壁の様に並んでいた。
最前線は作戦通りの配置のまま、誰一人怪我をした様子もない。
わたくしを受け止めた女の子は言った。
「オリーブ様のお陰で誰一人怪我をせずにここまでやって来れました。後はお任せください」
それを聞いて緊張が解けてしまったのだろうか、急に脚に力が入らなくなって座り込んでしまう。
勇者ではなくなってから随分と軟弱になったものだと思いながら、彼女達の戦いを見守るのだった。
――。
ジェネラルを仕留めたのは、先程わたくしを受け止めてくれた女の子だった。
まだ若いのに、かなりの才能がある。
その戦いは堅実で、まるでかつてのわたくしを見ているかの様だった。
とても素直で、基本に忠実な剣。
基本の大切さをとてもよく理解していて、努力を怠らない可愛い勇者。
そんな彼女を自分に重ねていると、どうしても思い出すことがある。
クラウスの、最愛の息子の剣のこと。
どんな勇者とも違う、傷付くことを恐れない剣のこと。
クラウスの剣は、彼らと同じだった。
今は魔人と呼ばれる、狛の村の人達。
体内にあるマナは真逆のはずなのに、その剣の残虐さは全くと言って良いほど変わらない。
彼らが振るうのは、本質的に人を殺す為の剣。
そう、クラウスは狛の村の人々ととてもよく似ている。
それこそクラウスを育てる為にエイミーさんが立ち上げた新たな狛の村の子達を参考にした程に。
彼らの経験を元に、クラウスを立派に育て上げることが出来たと自称できるくらいには、クラウスは狛の村の人々と近しい本能を持っていた。
彼ら新しい狛の村の子達が苦しい経験をしてくれたお陰でクラウスは良い子に育ってくれたのだから、彼らには感謝している。
だから、息子一人の為に多くの傷付いた人々を良しとするのだから、わたくしはその罪を償う為にもやっぱり最前線で戦わないといけない。
それで少しでも傷付く人を減らす為、なんていう矛盾を感じながらも。
宝剣『ささみ3号』は勇者ではなくなった今でも素直に従ってくれる。
どうやら勇者の力ではなく、わたくし自身に従ってくれているらしい。
目の前の魔物の山を見る。
重さが無い剣のおかげで正確に急所を打ち抜けたオークレギオンの群れ約百匹が、その身を血に染めながら横たわっていた。
「オリーブ様、あまり前に出られるのは……」
後から追いついて来たグレーズ軍の髭を蓄えた男が、渋い表情で話しかけて来た。
「ごめんなさいね。私のわがままで」
皆が敵の最前線のオーク達を抑えている間、わたくしはその中心を押し通り、主力であるレギオンに単身突撃していった。
一人で処理出来たから良いものの、もしもわたくしに怪我でもさせたらどうしようかと、彼はハラハラしたのかもしれない。
理由は簡単だった。
彼はわたくしの正体を知る軍の重役だ。
かつてはこの国の王女で最強の勇者。しかし今は勇者ですらないただの人で、特別軍事顧問。
そんなわたくしがもしも怪我でもしようものなら、彼は首が飛ぶとでも思ったのだろう。
それでも無理を言って、わたくしはその作戦を遂行させてもらった。
何故ならそれが一番効率的に敵を処理出来る方法だったのだから。
オーク達はジェネラルの指示の下、軍を築くことがある。その配下にあるレギオンは強力に強化され、更にその影響下にあるオーク達は非常に高い統率力を得る。
その為真正面から戦うだけでは無駄な体力と時間の浪費が多くなり、レギオンに辿り着く頃には一対一では軽く蹴散らせる勇者達であっても苦戦してしまうことが多々あるのだった。
だからこそジェネラルから倒せればそれが理想なのだけれど、そうはいかない。
オーク達の中には魔法使いも混ざっており、遠隔攻撃も器用に撃ち落とされることがあるし、中心を押し通ろうとすれば、最前線以外の全てのオーク達の敵意がそちらに向くことになる。
何故なら魔物達は習性として真っ先に勇者を狙うのだから。
そんな時、わたくしは一般人だった。
彼ら魔物にとっては殆ど気配のない、ただの人。
だからこそ中心を無理に通り抜けたところで気付く者はその付近にいた者だけで、統率されているとしても全体にその敵意が広がることはない。
つまり、一人でレギオン達を倒せる戦力を持った一般人がいれば、その人を突撃させることによって大幅に戦力を削ぐことが出来るのだった。
もちろんそんなことが可能な一般人など、普通は存在しないのだけれど。
「……あまり無茶をされると困ります。私も五人の子どもがいますので」
責任は自分が取ることになる、と暗に男は言った。
それでも、わたくしは止まる気は無かった。
「大丈夫よ。私が死んでも誰もあなたを責めないわ。国王に言ってあるもの」
現国王はわたくしの可愛い弟だ。今の年齢で可愛いと言ったら怒られるのかもしれないけれど、血を分けた弟なのだから仕方ない。
そんな弟にお願いをしてあるのだから、わたくしがどれだけ無茶をしたとして、それを止められなかった彼が責められることはあり得ない。
それでも、彼は心配な様子だった。
「貴女は、何故戦うのですか?」
もう十分過ぎるほどに役目を果たしたはずなのに。
そんな意味を込めた様に、彼は尋ねて来た。
だからわたくしはこう答える。
「それはきっと、私が馬鹿だからでしょうね」
言いながら、死体の先を見る。
オークジェネラルが、遠くからこちらを見ていた。
今のわたくしでは、一対一では決して勝てない化け物。
それを見て、髭の彼は溜め息を吐く。
「息子の為、師の為、妹分の為、世界の為、色々あるとは思いますが、もう貴女の出番は終わりですよ」
わたくしを押し退けて、ジェネラルに対峙した。
勇者の中でも一流を超えるとその膂力は一般人では逆らいようもなく、後ろに数歩ふらふらと下がってしまう。
その背中を柔らかく受け止める感触があった。
振り返ると、軍で何度も稽古を付けてあげた女の子がわたくしを支えていた。
どうやら後ろのオーク達は全て処理して追いついて来たらしく、人が壁の様に並んでいた。
最前線は作戦通りの配置のまま、誰一人怪我をした様子もない。
わたくしを受け止めた女の子は言った。
「オリーブ様のお陰で誰一人怪我をせずにここまでやって来れました。後はお任せください」
それを聞いて緊張が解けてしまったのだろうか、急に脚に力が入らなくなって座り込んでしまう。
勇者ではなくなってから随分と軟弱になったものだと思いながら、彼女達の戦いを見守るのだった。
――。
ジェネラルを仕留めたのは、先程わたくしを受け止めてくれた女の子だった。
まだ若いのに、かなりの才能がある。
その戦いは堅実で、まるでかつてのわたくしを見ているかの様だった。
とても素直で、基本に忠実な剣。
基本の大切さをとてもよく理解していて、努力を怠らない可愛い勇者。
そんな彼女を自分に重ねていると、どうしても思い出すことがある。
クラウスの、最愛の息子の剣のこと。
どんな勇者とも違う、傷付くことを恐れない剣のこと。
クラウスの剣は、彼らと同じだった。
今は魔人と呼ばれる、狛の村の人達。
体内にあるマナは真逆のはずなのに、その剣の残虐さは全くと言って良いほど変わらない。
彼らが振るうのは、本質的に人を殺す為の剣。
そう、クラウスは狛の村の人々ととてもよく似ている。
それこそクラウスを育てる為にエイミーさんが立ち上げた新たな狛の村の子達を参考にした程に。
彼らの経験を元に、クラウスを立派に育て上げることが出来たと自称できるくらいには、クラウスは狛の村の人々と近しい本能を持っていた。
彼ら新しい狛の村の子達が苦しい経験をしてくれたお陰でクラウスは良い子に育ってくれたのだから、彼らには感謝している。
だから、息子一人の為に多くの傷付いた人々を良しとするのだから、わたくしはその罪を償う為にもやっぱり最前線で戦わないといけない。
それで少しでも傷付く人を減らす為、なんていう矛盾を感じながらも。
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