雨の世界の終わりまで

七つ目の子

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第四章:三人の旅

幕間の弐:宝剣の親子

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 世界には、三つの規格外の宝剣がある。



 一つ目は【始まりの剣】

 千年も前に偶然作られ、世界を奇跡で満たした剣。

 産まれてから直ぐに二つに分かれ、しばらくして消失してしまった最古の奇跡。

 その時代は人々が互いに争い、日々戦争を繰り返していた時代だった。

 それが産まれた理由は、世界には奇跡が起こる余地があったから、としか説明が出来ない正真正銘偶然の産物だ。



 二つ目は【破魔の小剣】

 英雄ベルナールの時代、魔王が産まれるとほぼ同時に産まれた剣。

 誰かの作品ではなく、夢で魔王を打ち倒せとお告げを受けたベルナールが、ある日目覚めた時に枕元に置いてあったのだという。

 魔王ですら三振りの内に討伐出来たと言われる最強の矛。

 その剣が生まれると、世界中の魔物の動きが鈍くなったのだと言われている。

 その剣は、『失敗作である強き魔王』を倒す為に生まれ、その役目を終えるとぼろぼろに崩れ去った。

 現在ではそれは極々一部の人の中でわ世界の意思によって作られたと言われている。



 三つ目は【不壊の月光】

 まだ魔物であった狛の村の住人が偶然作ってしまったと言われている、決して壊れない剣。

 その力の本質は、ただ壊れないことではなく、決して本来の姿を忘れないこと。

 その影響力は周囲にまで及び、魔物であった狛の村の住人はかつて人であったことを思い出し、一度死んで魔王になってしまったレインすら、最期に人間に戻したと言われている。

 そして、その剣が持つ力は、それだけに留まっていない。

 この剣は、世界に影響を及ぼす二つ目の奇跡にして、この剣の影響で産まれた、鬼神レイン専用の武器だった。



 それはレインが死んで三十年が経った今となっても、文字通り。

 例え月光自体が二人の弟子を持ち主だと認めていても、その理由は、『レインの弟子だから』だ。



 そう、そもそも。



【英雄レインの力は間違っていた】



 現代の英雄達は、しばしばこんな議論をしている。



「弱い僕には見当も付かないのだけれど、もしも世界中全てのマナを吸収してしまったクラウス君とレイン、戦ったらどちらが勝つ?」

「十中八九レインさんですね」

「私もそう思いますよ。ただ、100%と言っても良いかもしれません」

「原初の奇跡に、その欠片が対抗出来るものなのか?」

「魔人様の力って、そもそも常識じゃないわ」

「確かに、この力は勇者の根本を覆してますわね。いや、そもそも勇者ではないわたくしがデーモンを倒すことなど、本来なら出来るはずが無いのですから」

「ぶっちゃけ、月光の強い部分ってあれだよね。師匠を作れたところ」



 本当にあの男は奇跡の塊だ。



 そんな結論で幕を閉じる議論も、もうすぐその真実が証明されようとしている。

 二十年近い研究の結果、本来なら、クラウスはレインだったらしい。

 月光さえ生まれなければ、レインがクラウスのポジション、つまり、始まりの剣を宿す存在だったらしい。

 そんなやたらと複雑になってしまった英雄の話も、実はレインが産まれたことで、解決を見せようとしている。



 何も知らない人々にとっては忌むべき対象となってしまった英雄が、実は世界を守る鍵などと今更言えないところが、英雄達にとっては悩ましい所だった。

 何故ならそれを公表すれば、人類の敵はその息子になってしまうのだから。
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