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入領?

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 この場合、領とは・・・どこからどこまでが獣人領かと問われれば・・・はっきりとしないのが現状であろう。そもそも魔素の濃いこの森の中、明確な範囲を決めたところで・・・あまり意味がない。なので

「獣人領へようこそ!」

 うさ耳のお姉さんが両手を広げて宣言したのは、先ほど食事をとった場所から100mと経たない場所でだった

「ここが?」

「そうだよ?この切株は見覚えがあってね?この切株とこの切株を結んだ先に門があるのさ」

 目印っと・・・確かにナビも同じ方向にルートを表示している

「さっき狼?の青年に指示出してたけど?話の感じからするとこの双子の姉妹を探す算段をしてた感じ?」

「・・・人族ってのはこんなにも聡いのかい?驚きだね」

「全員が全員ってわけじゃないけどね?」

 というか、この程度でその言われようって・・・どんだけ脳筋ばっかりなんだよ・・・って疑っちゃうね

「その通りさ。考えるよりも体の方が先に動くような奴ばかりだからね?あの子も私の制止を聞かずに飛び出して行っちゃったからね・・・許してやってくれないか?」

 訳あり・・・っと

「実害があったわけでもないし、別に気にしてないよ?っと、そろそろかな?」

 石壁とその中央に両開きの門があり、その周囲には門番?にしては数が多いし、なぜか武装している。ぁ、武装っても門番としての軽武装じゃなく、戦争?敵対?的な武装を・・・あれ?歓迎されてない??

「来たぞ!お嬢様を奪い返せ!」

 ぉぃぉぃ穏やかじゃないな・・・奪い返す?ボクが奪ったということ?

「サム!何言ってんだい!さっき言ったろ?帰って準備してろって。何武装準備してるんだい!」

「人族が攻めてきてるじゃないか!しかもお嬢様を人質にして!何姐さんも懐柔されてるんすか!」

 姉妹は下を向き、うさ耳姐さんは・・・小柄な体のどこにそんな筋肉量が?って位・・・パンプアップして肩を震わせ・・・姿が消えた

「あれ?」

 まぁ、捉えられない速度じゃないけど、不意をつかれたら危ないかもね?
 そう、姐さんは狼青年の元へ一足飛びに移動し、下腹部と急所の間・・・鍛えにくい箇所へと必殺の蹴りを・・・ここで狼青年に運がなかったのは、そのまま後方に何もなければ、吹っ飛んで転がって・・・で済んだのだが、ここは門の前。しかも青年の背後には堅牢な石壁・・・そんな硬い物に姿が消えるくらいの速度でぶつかれば・・・

「・・・流石は姐さんだ。この壁にヒビを入れるなんざ、獣人領広しと言えど、数えるほどしか・・・」

 その場にいた色んな種類の獣人は多分名物なのだろう・・・そんな2人を見て和やかに会話していた・・・いや、初見のボクが言うのもなんだけど、少しは心配してあげようよ・・・なんか色々出てきちゃいけないものが出てるようにも・・・自然治癒かな?回復していってるな・・・人と違って種族特性があるみたいだね。さっきの姐さんの脚力強化にしろ、自然治癒力にしろね?

「あのぉ~?はそろそろお腹いっぱいなので、中に入っても良いですか?」

「/////夫婦/////!」

「漫才・・・」

 姐さんが顔を赤くし、青年は青い顔を・・・

「そうじゃったそうじゃった。坊やがお嬢様達を連れてきてくれたのか。ありがとうの」

 そう言ってきたのは白髪と白髭と白い体毛・・・って、白い毛が動いてるようにしか見えんわ!

「長!」

 長自ら前線に立ってたんかい!ってもまぁ、狼青年少年の戯言だったけど

「ソレはそうと、多種族・・・でも十数年ぶり、人族なんて数十年ぶりの来客だ。どうぞゆっくりしていってくだされ」

 十年以上近親交配・・・そりゃ血も濃くなるか・・・

「どうも、お邪魔します」

 入場に関して検査や調べらしきものはなかった。超直感的なもので判断してるのかな?気配等の匂いとかで・・・
 門の中は家が騒然と並び・・・といってもほとんどが木造で、レンガ等の家は見当たらなかった。なので必然的に二階が多く、所々にそれ以上の家屋があったが、家といよりも櫓に壁がついてる感じだった。

「とりあえず宿かな?」

「いや!」
「お兄ちゃんはうちに来て!」

 姉妹からそう懇願され、姉妹の家に向かうことにすると

「周りの視線がおかしいな・・・」

 さっきまであれほど『お嬢様』『お嬢様』言ってた彼らが今は何も言わない・・・門に入ってからか?門の外では毛むくじゃらもうさ耳姐さんも心底心配していただったが、門に入ってからは・・・普通あそこまで騒ぎ立ててれば、礼なり宿の手配なりを・・・と、生前読んでいたラノベ等でのテンプレ集があったが・・・これは・・・姉妹の話とさっきのうさ耳姐さんの話の違和感が噛み合ったような気がした

「どこもってわけじゃないってことか・・・」

 程なくして入った門とは別の門付近のこれは・・・いつ崩れてもおかしくない家の裏手に回り込み、さらに小さな小屋の前で

「いらっしゃいまちぇ!」
「ここが私達の家だよ!」

 姉が盛大に噛んだ・・・そして真っ赤っかだ

「じゃぁ、お邪魔するね」

 そう言って家の中に招かれて驚愕・・・小屋の中には・・・何もなかった・・・そう、家具や調度品といったものはもちろん、窓も何も・・・床板すらなかったのだ・・・

「・・・2人はいつもここで?」

「うん!」
「良いでしょ!」

 2人は満面の笑みでそこにあたかもがあるかのように、身振り手振りで色々説明してくれた。勿論ボクの目には見えはしなかったが、ある程度の話を聞いたあたりで2人の頭に手を乗せて撫でてあげると、蕩けそうな笑顔になってくれた。

「これ気に入ってくれたみたいだから出すね?」

 そういって人どころか誰しもをダメにするクッションを取り出すと、大好きなおもちゃを見つけた猫のように飛びつき、感触を確かめ・・・静かに寝に入った

「・・・この2人に何があったんだろう・・・それに、にも・・・今のところボクは何も影響を受けてない感じなのは、人族だからか?色んな意味で怖いな・・・」

 もしかしたらこの街自体にナニカ巨大な結界や呪いがかけられていて、壁の外ではその影響を受けない・・・だから、うさ耳姐さんも毛の爺さんも優しさ溢れる態度だったのかもしれない。その2人が門を潜った瞬間・・・無機質で無気力で無関心になるなんて、よほど強力な・・・自己暗示かもしれないけど、その線は・・・なさそうだね

「とりあえず壁を強化して、接敵アラームを設置して・・・土床も強化してっと・・・2人が寝たから、ぼくも寝るとしますかね・・・昨夜のこともあるし」

 2人がダイブした結果、カーリングの様にクッションは出した場所から離れたところに滑っていって、その上で丸くなって寝ている双子・・・その姿は獣化で・・・クッションの模様にも見える。起こさないようにそっとクッションを移動し、その間に大きめのクッションを出してそこに体を預けて寝る体制に・・・

「この位置なら2人が昨夜のように寝床を移してきてもすぐだし、落ちることはないよね?」

 むしろこのままボクの両脇に抱えてきて、その美しい毛並みを堪能しながら寝る・・・という選択肢もあったのだが、お年頃な女の子だ・・・こちらからは敢えて手を出さない・・・が、来るなら拒まない!バッチコーイ!

「は、ともかくとして・・・街の問題・・・双子の問題・・・山積みだな」

 最悪2人をエルフ領観光ってのもありだけどね?この街の中は・・・危険な匂いが・・・
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