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第3章 銀髪の兄弟と国を揺るがす大戦
『111、イルマス教の内乱(十)』
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あの後も必死で頭を捻った。
フェブアーを――大切な騎士であり、理解者である彼女を失うわけにはいかない。
「あーもう!こういう時に限って策が浮かばない!」
「戦の予定時間まであと2刻しかないからな。昔の記憶を探ろうにも魔法なんて・・・」
転生組しかいない部屋でボーランが呟く。
誰もいないため、最小限の警戒だけで本来の人格が出せる時間だ。
俺は小さく頷いた。
「魔法への対処の仕方なんて知らない。だけどライフ・バーンを使わせるわけには・・・」
「そうよね。怪我だけなら治せるけど、命だけは直せないわ」
フローリーの回復魔法も、現代医療の知識と組み合わせることによって効果が上昇する。
最も、彼女は前世では中学生で死んでしまっているので俺たちの指導が必要だが。
「1つだけ策はあるけど・・・成功する保証はない」
「そんなに危険な策なのか。使うのを控えようと言いたいが、時間が足りなさすぎる」
準備には最低でも1刻はかかる。
即ち、あと1刻で作戦の準備から各隊の動きまでをシュミレーションしなければならない。
あまりにも時間が足りなすぎた。
「フェブアーたち臣下だけは絶対に死なせない。これは俺の命題でもあるんだから」
「そうか・・・。策の概要を聞かせてくれ」
ボーランたちも作戦に協力するつもりなんだろうが、この策は1人で十分だ。
むしろ人が多ければ多いほどややこしくなる。
「大丈夫だよ。ボーランたちは普通に戦ってもらえば成功する作戦を考えた」
「無茶はしないでよね。仲間を治療するのほど辛いことはないわ」
俺は言葉に詰まった。
誰の助けも必要としない策――つまりは自分が出来るだけ働かなければいけない策だ。
怪我しない保証なんてどこにもない。
「善処する。僕としても仲間に治療してもらうのは心苦しいしね」
「・・・・・・」
思案顔のボーランと心配そうなフローリーに手を振ってから、ゆっくりと部屋を出る。
室内の明かりに照らされた指輪が怪しく光っていた。
日差しの届かない暗い廊下を進み、外に出ると春のうららかな空気が俺を包む。
「気持ちいいな。あと何回この空気を吸えるんだろう」
「どういう意味ですか?」
頭の中で思っていただけのつもりだったが、口から漏れていたらしい。
心配をかけるのも申し訳ないので首を横に振る。
「何でもない。それよりも戦の準備は出来てるよね。兵数は今までで一番少ないけど」
「6年前の戦が異常だっただけです。これくらいが普通ですよ」
エーリル将軍が呆れたような顔をした。
その後は天幕に案内され、作戦についての説明を受けていると鐘の音が鳴り響いた。
敵が来たみたいだね。
「敵兵が視認できました。敵兵の数は・・・っ!?」
「かなりの数がいますね。推測人数は15000ですね。うち5000が魔法兵です」
報告に全員の顔が強張る。
再度確認するが、俺たちが使える兵は3600だ。
村の攻略を担当している黒龍騎士を連れてきても太刀打ちできる数ではない。
「撤退準備!今すぐ陣を焼き払え!」
「さすがに太刀打ち出来ませんね。ライフ・バーンを使っても無理です!」
フェブアーも諦めたようだ。
ライフ・バーンを使うのを諦めているわけではないのが痛いところだが。
「待ってください。後ろからも来ました。兵数10000。うち1000近くが魔法兵です」
「か、囲まれました!」
報告する兵士の顔も青色を通り越して白くなっている。
エーリル将軍は舌打ちをした後、覚悟を決めたのか剣に魔力を込め始める。
本物の魔剣士の構えだ。
それを確認したボーランも同じように剣に魔力を込めて前方を睨みつけた。
「前後を合わせると25000か。完全な負け戦だな」
「ここで将軍様や王子を死なせるわけにはいきません。奥義を発動します!」
「サン・ライズからの結界!」
フェブアーがライフ・バーンを発動する前に、先手を打って結界を出して敵に突撃。
戦場の中心に結界を置くことで敵の行動を制限しようという狙いだ。
「リレン王子、何を!?」
「戦場の真ん中に結界・・・まさか両端から来た敵を葬れるようにということか!?」
カルスとエーリル将軍が驚きながらも冷静に分析していく。
彼女たちの推測は正解だ。俺は敵の行動の選択肢を削ぐためにここにいる。
「結界を破壊しながら進め。王子は殺すな」
「はっ!」
こちらに聞こえるくらいの大声で指示した指揮官が不敵に嗤う。
王子を助けようとこちら側の兵が突出したところを叩こうと考えているのだろうな。
隠すべき意図がバレバレである。
「魔法兵用意!あの結界に向けて発射しろっ!」
「はっ!仰せのままに!」
太った豚みたいな男が魔法兵の近くでうろついている。
マイセスと似た衣装を着ているから、彼が敵の総大将であるデーガン大司教か。
こちら側の総大将は名目上は俺だからここで龍虎まみえるってわけね。
そんなことを考えている間にも、敵の将軍の指示で魔法が次々と結界に打ち込まれる。
そろそろ維持が厳しくなってきた。
「リレン王子を守れっ!全軍は突撃せよ!」
「わざわざ敵の罠に嵌まるなっ!軍を二手に分けて両脇で待機。進んでくる兵を殺せ!」
エーリル将軍の指示を上書きしていく。
王子の指示に逆らえるわけがないから、これで敵の意図を崩せたはず。
後は・・・俺の体次第か。
「古代魔法の参、ライフ・バーン・エクスプロージョン!結界よ、敵の攻撃を跳ね返せ!」
「あの技は何でしょう?」
カルスの問いかけを背に聞きながら、俺はありったけの魔力を結界に詰め込んだ。
結界は徐々に金色に変わる。
------------------------------------------------------------
※お知らせ
私用のため、7/29~31日更新分の1話の文字数がかなり少なくなります。
ご容赦ください。
いつも稚拙な作品をお読みいただき、ありがとうございます。
フェブアーを――大切な騎士であり、理解者である彼女を失うわけにはいかない。
「あーもう!こういう時に限って策が浮かばない!」
「戦の予定時間まであと2刻しかないからな。昔の記憶を探ろうにも魔法なんて・・・」
転生組しかいない部屋でボーランが呟く。
誰もいないため、最小限の警戒だけで本来の人格が出せる時間だ。
俺は小さく頷いた。
「魔法への対処の仕方なんて知らない。だけどライフ・バーンを使わせるわけには・・・」
「そうよね。怪我だけなら治せるけど、命だけは直せないわ」
フローリーの回復魔法も、現代医療の知識と組み合わせることによって効果が上昇する。
最も、彼女は前世では中学生で死んでしまっているので俺たちの指導が必要だが。
「1つだけ策はあるけど・・・成功する保証はない」
「そんなに危険な策なのか。使うのを控えようと言いたいが、時間が足りなさすぎる」
準備には最低でも1刻はかかる。
即ち、あと1刻で作戦の準備から各隊の動きまでをシュミレーションしなければならない。
あまりにも時間が足りなすぎた。
「フェブアーたち臣下だけは絶対に死なせない。これは俺の命題でもあるんだから」
「そうか・・・。策の概要を聞かせてくれ」
ボーランたちも作戦に協力するつもりなんだろうが、この策は1人で十分だ。
むしろ人が多ければ多いほどややこしくなる。
「大丈夫だよ。ボーランたちは普通に戦ってもらえば成功する作戦を考えた」
「無茶はしないでよね。仲間を治療するのほど辛いことはないわ」
俺は言葉に詰まった。
誰の助けも必要としない策――つまりは自分が出来るだけ働かなければいけない策だ。
怪我しない保証なんてどこにもない。
「善処する。僕としても仲間に治療してもらうのは心苦しいしね」
「・・・・・・」
思案顔のボーランと心配そうなフローリーに手を振ってから、ゆっくりと部屋を出る。
室内の明かりに照らされた指輪が怪しく光っていた。
日差しの届かない暗い廊下を進み、外に出ると春のうららかな空気が俺を包む。
「気持ちいいな。あと何回この空気を吸えるんだろう」
「どういう意味ですか?」
頭の中で思っていただけのつもりだったが、口から漏れていたらしい。
心配をかけるのも申し訳ないので首を横に振る。
「何でもない。それよりも戦の準備は出来てるよね。兵数は今までで一番少ないけど」
「6年前の戦が異常だっただけです。これくらいが普通ですよ」
エーリル将軍が呆れたような顔をした。
その後は天幕に案内され、作戦についての説明を受けていると鐘の音が鳴り響いた。
敵が来たみたいだね。
「敵兵が視認できました。敵兵の数は・・・っ!?」
「かなりの数がいますね。推測人数は15000ですね。うち5000が魔法兵です」
報告に全員の顔が強張る。
再度確認するが、俺たちが使える兵は3600だ。
村の攻略を担当している黒龍騎士を連れてきても太刀打ちできる数ではない。
「撤退準備!今すぐ陣を焼き払え!」
「さすがに太刀打ち出来ませんね。ライフ・バーンを使っても無理です!」
フェブアーも諦めたようだ。
ライフ・バーンを使うのを諦めているわけではないのが痛いところだが。
「待ってください。後ろからも来ました。兵数10000。うち1000近くが魔法兵です」
「か、囲まれました!」
報告する兵士の顔も青色を通り越して白くなっている。
エーリル将軍は舌打ちをした後、覚悟を決めたのか剣に魔力を込め始める。
本物の魔剣士の構えだ。
それを確認したボーランも同じように剣に魔力を込めて前方を睨みつけた。
「前後を合わせると25000か。完全な負け戦だな」
「ここで将軍様や王子を死なせるわけにはいきません。奥義を発動します!」
「サン・ライズからの結界!」
フェブアーがライフ・バーンを発動する前に、先手を打って結界を出して敵に突撃。
戦場の中心に結界を置くことで敵の行動を制限しようという狙いだ。
「リレン王子、何を!?」
「戦場の真ん中に結界・・・まさか両端から来た敵を葬れるようにということか!?」
カルスとエーリル将軍が驚きながらも冷静に分析していく。
彼女たちの推測は正解だ。俺は敵の行動の選択肢を削ぐためにここにいる。
「結界を破壊しながら進め。王子は殺すな」
「はっ!」
こちらに聞こえるくらいの大声で指示した指揮官が不敵に嗤う。
王子を助けようとこちら側の兵が突出したところを叩こうと考えているのだろうな。
隠すべき意図がバレバレである。
「魔法兵用意!あの結界に向けて発射しろっ!」
「はっ!仰せのままに!」
太った豚みたいな男が魔法兵の近くでうろついている。
マイセスと似た衣装を着ているから、彼が敵の総大将であるデーガン大司教か。
こちら側の総大将は名目上は俺だからここで龍虎まみえるってわけね。
そんなことを考えている間にも、敵の将軍の指示で魔法が次々と結界に打ち込まれる。
そろそろ維持が厳しくなってきた。
「リレン王子を守れっ!全軍は突撃せよ!」
「わざわざ敵の罠に嵌まるなっ!軍を二手に分けて両脇で待機。進んでくる兵を殺せ!」
エーリル将軍の指示を上書きしていく。
王子の指示に逆らえるわけがないから、これで敵の意図を崩せたはず。
後は・・・俺の体次第か。
「古代魔法の参、ライフ・バーン・エクスプロージョン!結界よ、敵の攻撃を跳ね返せ!」
「あの技は何でしょう?」
カルスの問いかけを背に聞きながら、俺はありったけの魔力を結界に詰め込んだ。
結界は徐々に金色に変わる。
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ご容赦ください。
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