2 / 25
2話 11月14日
しおりを挟む
「ふ、ふふ。あははっ。そうか。貴女は私の授業じゃなくて、私を見に来てたのね」
「そうなの!私、あなたのこと、すごく気に入っちゃったから」
そう言うと、深雪はまた笑った。
(面白いなぁ、この子)
思わず吹き出してしまう深雪。
「いいよ。内緒にしてあげる。またおいで。私も、最近は貴女を見つけることが癖になっちゃったんだ」
それから深雪は、本当にレティが潜りであることを誰にも言わなかった。
深雪は授業の最初にレティを探した。レティは決まって1番後ろの一番端に座っていた。深雪はレティと目を合わせると決まって笑いかけてくれた。
「では、今日はここまで」
深雪が授業を締めた後、レティは深雪が教室を出るまで動かない。
だから、誘うのは容易だった。
「ご飯、一緒に食べない?食堂行きましょ」
2限目の授業終わり、深雪はレティを誘った。レティは最初、声をかけられたことに唖然としていたが、みるみるうちにその頬を紅潮させながら頷いた。
学生食堂は第2校舎を出て中庭を進んだ先にある。レティは始めて入る場所に少し緊張した様子で、深雪の後ろにぴったりとついて行った。
深雪に案内され、窓際の端の席に着く。
深雪は自分の弁当を開いた。
「ねぇ、本当に食べないの?」
「はい。あまりお腹空いてなくて」
死神はご飯を食べない。そもそも空腹という概念が無かった。それでも着いてきたのは、深雪ともっと長くいたいから。単純に彼女と仲良くなりたかった。
彼女は俯いて自分の弁当を食べ始めている。伏せられた瞼に、暗めのアイシャドウが塗られている。
「白石先生」
「ん?」
「んふふ、呼んでみただけ」
「え?なにそれ」
「呼んだらこっち向いてくれるじゃない」
レティは深雪の視線が弁当から自分に向いたことに満足そうに口角を上げた。
深雪が昼食を食べている間、レティはずっと深雪を見つめていた。
「そんなに見つめられると緊張する」
「そんなこと言わずに、また行きましょう?」
彼女達の昼食会は深雪の授業がある日は、毎日のように開かれた。そのうち、レティが昼食を何故だか食べないことを察して、深雪は自分の研究室で昼食を摂ることを提案した。レティはとても嬉しそうだった。
「先生はいつもここで研究をしているの?」
「そうね。授業がない時はだいたいここにいるわ」
レティは部屋の中を一通り見回した。
入って1番手前に応接用のソファとローテーブル、その奥にパソコンが2台置かれた机と、座り心地が良さそうな椅子が配置されている。壁際には研究に使うと思われる本がずらりと積み上がっていた。
その中でも気になったのは、砂時計だ。机の上、ローテーブルの上、本棚や窓際にもいくつか置かれている。全てデザインが違うものだ。アンティーク調の物から、色がついた砂が入った現代的な物もある。
「砂時計、好きなの?」
「わかる?」
「これだけ置いてあればね」
深雪は面白そうに笑った。
「好き、だね。砂時計は、ほら。引っ繰り返せば何度でも始まりがくるでしょう?それって何度でもやり直せるって意味があると思わない?」
「そうなの!私、あなたのこと、すごく気に入っちゃったから」
そう言うと、深雪はまた笑った。
(面白いなぁ、この子)
思わず吹き出してしまう深雪。
「いいよ。内緒にしてあげる。またおいで。私も、最近は貴女を見つけることが癖になっちゃったんだ」
それから深雪は、本当にレティが潜りであることを誰にも言わなかった。
深雪は授業の最初にレティを探した。レティは決まって1番後ろの一番端に座っていた。深雪はレティと目を合わせると決まって笑いかけてくれた。
「では、今日はここまで」
深雪が授業を締めた後、レティは深雪が教室を出るまで動かない。
だから、誘うのは容易だった。
「ご飯、一緒に食べない?食堂行きましょ」
2限目の授業終わり、深雪はレティを誘った。レティは最初、声をかけられたことに唖然としていたが、みるみるうちにその頬を紅潮させながら頷いた。
学生食堂は第2校舎を出て中庭を進んだ先にある。レティは始めて入る場所に少し緊張した様子で、深雪の後ろにぴったりとついて行った。
深雪に案内され、窓際の端の席に着く。
深雪は自分の弁当を開いた。
「ねぇ、本当に食べないの?」
「はい。あまりお腹空いてなくて」
死神はご飯を食べない。そもそも空腹という概念が無かった。それでも着いてきたのは、深雪ともっと長くいたいから。単純に彼女と仲良くなりたかった。
彼女は俯いて自分の弁当を食べ始めている。伏せられた瞼に、暗めのアイシャドウが塗られている。
「白石先生」
「ん?」
「んふふ、呼んでみただけ」
「え?なにそれ」
「呼んだらこっち向いてくれるじゃない」
レティは深雪の視線が弁当から自分に向いたことに満足そうに口角を上げた。
深雪が昼食を食べている間、レティはずっと深雪を見つめていた。
「そんなに見つめられると緊張する」
「そんなこと言わずに、また行きましょう?」
彼女達の昼食会は深雪の授業がある日は、毎日のように開かれた。そのうち、レティが昼食を何故だか食べないことを察して、深雪は自分の研究室で昼食を摂ることを提案した。レティはとても嬉しそうだった。
「先生はいつもここで研究をしているの?」
「そうね。授業がない時はだいたいここにいるわ」
レティは部屋の中を一通り見回した。
入って1番手前に応接用のソファとローテーブル、その奥にパソコンが2台置かれた机と、座り心地が良さそうな椅子が配置されている。壁際には研究に使うと思われる本がずらりと積み上がっていた。
その中でも気になったのは、砂時計だ。机の上、ローテーブルの上、本棚や窓際にもいくつか置かれている。全てデザインが違うものだ。アンティーク調の物から、色がついた砂が入った現代的な物もある。
「砂時計、好きなの?」
「わかる?」
「これだけ置いてあればね」
深雪は面白そうに笑った。
「好き、だね。砂時計は、ほら。引っ繰り返せば何度でも始まりがくるでしょう?それって何度でもやり直せるって意味があると思わない?」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
フリー声劇台本〜モーリスハウスシリーズ〜
摩訶子
キャラ文芸
声劇アプリ「ボイコネ」で公開していた台本の中から、寄宿学校のとある学生寮『モーリスハウス』を舞台にした作品群をこちらにまとめます。
どなたでも自由にご使用OKですが、初めに「シナリオのご使用について」を必ずお読みくださいm(*_ _)m
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
イケメン歯科医の日常
moa
キャラ文芸
堺 大雅(さかい たいが)28歳。
親の医院、堺歯科医院で歯科医として働いている。
イケメンで笑顔が素敵な歯科医として近所では有名。
しかし彼には裏の顔が…
歯科医のリアルな日常を超短編小説で書いてみました。
※治療の描写や痛い描写もあるので苦手な方はご遠慮頂きますようよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる