転生先は乙女ゲーム?

niko

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王族の遊び

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「はぁ~」

「シィ、そんなため息つかないで。」

「だって、、お母様だけ呼ばれるのは分かるけれど、どうして私まで。。前回も王妃様と過ごしたのは僅かで、すぐにフィラード様の部屋に追いやられたじゃない。」

「追いやられたなんて言い方は良くないわ。仲良くして欲しいのよ。ほら、殿下は今大変な時期でしょう?息抜きだって必要だわ。」

「それはわかるけど。。」

 王城へと向かう馬車のなかでぶつぶつと文句を言う。そう、これは初めてじゃない。殿下からお茶のお誘いがなくなったと思ったら、王妃様からお母様と私へお茶会のお誘いが増えた。
 しかも、以前殿下から王妃様が会いたがってるとか渡したいものがあると言って呼び出された時は全く会えなかったのに、王妃様に呼ばれる時はすぐにフィラード様の部屋に通される。
 なに?これが王族の遊びなの?息抜きならクーパー様やアランド様だっていらっしゃるのに。

 私が王城へ呼ばれるとアルが「権力の横暴だ。」と怒っていたけど、その後スキンシップがひどくなるのよね。「殿下にこのようなことをされたら、ちゃんと引っ叩いてくださいね。男はみな危険な生き物ですから。特に殿下の頭の中なんて危険なことだらけですから油断しちゃダメですよ。」とおでこやこめかみや耳にキスが降ってくる。あれは本当に困るわ。






「いらっしゃーい!!シィちゃんもよく来てくれたわ!」

「お招き頂きありがとうございます。」

「そんな堅い挨拶はいいの!さぁくつろいでくつろいで。」

 王妃様は私たち家族にとても良くしてくれる。とてもおおらかな方で行動力があってパワフルな女性だ。陛下が王妃様一筋なのも頷けるわ。


「王妃様。こうして招いて頂けるのは大変光栄ですし、お話できるのも嬉しいのですが・・・ミルド公爵夫人とエルンダ嬢ともお会いしてらっしゃいますか?」

「ぐっ!あれはいつだったかしらねー。」

 お母様が真顔で見つめる。

「だ、だって、あの子達の話はつまんないのよー!仕方ないでしょう?」

「仕方なくありませんわ。はぁ、王妃様。王妃様も女性ならばお分かりになりますでしょう?うまい具合になさらないと、小さな綻びを見つけては、つつきたがる小虫がわいてくるのはよくご存知のはずです。」

 お、お母様。小虫って。。

 アルの口の悪さはお父様じゃなくて、お母様に似たのかもしれないわ・・・。

「私は慣れておりますけど、今つつかれるのは私ではなくシィなんですのよ。」

「わ、わかってるわよー。だけどねぇ、あの子達喋り出すと止まらないし、口を開けば自慢と賛辞ばかりで、フィルと婚約させようと躍起になってて、相手するの、もんのすごーく疲れるのよ。」

「お気持ちは分かりますけれども、そこはお立場を考えて頂きませんと。ですが、殿下は婚約者を望んでいらっしゃらないのですか?王族とあればもっと早くにいてもおかしくないのではないですか?」

「さあねー、少なくともエルンダ嬢とは嫌だと思うけどね。んふふ、シィちゃんは見たことある?フィルったらすっごく笑顔で、すっごく丁寧に対応した後、すんごく長ーい溜息をつくの。ふふっ適当にあしらえばいいのに馬鹿よね。」

「陛下も王妃様も殿下の気持ちを尊重なさっておいでなのですね。」

「これでも私はあの子が可愛いと思ってるの。立場上、普通の親子のように可愛がってはやれないけどね。私に似れば良かったのだけど、陛下に似ちゃって小難しい性格してるのよ。自分に厳しすぎるクセに他人に優しすぎて、自分で自分を追い込んで苦しくなっちゃう子なのよ。これが無自覚だからタチ悪いのよ。だからね!シィちゃん!フィルと遊んであげて!」

「あ、遊ぶ?ですか?」

   追いかけっこや木登りをする年齢ではないし、ましてや異性で、思春期で、王族。
・・・む、難しすぎない??

「でも殿下のそばにはクーパー様やアランド様もいらっしゃるのでは?同姓の方と一緒に過ごす方が楽なのではないですか?」

「チッチッチ、わかってないわねー。確かにオリオンには心を開いているけど、アランドにはまだ開ききれてないのよねー。でね、お互いのことなんて分かりきってるオリオンとずっと一緒にいたら飽きちゃうでしょ?たまには女の子とおしゃべりしたほうが気分転換になるの!楽なだけが息抜きではないのよ。これは息子孝行でもあるから、私のためにも大人しくフィルの部屋にいってちょうだい。」

 そう言うと優雅にお茶を飲む王妃様。
そんな風に言われると断れない、、いや、どんな言い方であれ断るという選択肢はないんだったわ。
 でもあのフィラード様が「女の子だー!」と喜ぶ姿が想像できない。。息子孝行とは。

「ヘレン。案内なさい。」

「かしこまりました。」

 こうしてフィラード様の部屋に連行されることになった。



 フィラード様の部屋がある長ーい廊下に着くと「では、ごゆっくり。」と言って、忍者のように消えていく。またか。王妃様はバレてないと思ってるのかしら?

 カツ カツ カツ カツ


「またお前か。性懲りも無くフィルに媚を売りにきてよっぽど暇なんだな。」

「!・・・クーパー様。ご機嫌いかがですか?」

 でた!野犬のオリオン・クーパー!

 彼はこの廊下によく出没する。
 そして、毎回文句や嫌味攻撃を仕掛けてくるのだ。最初こそ、好きで来てるわけじゃないのになんでこんなに文句言われなきゃなんないのよー!と腹が立っていたものだけど、2回目にはもう慣れてしまった。
 文句を言っている姿が、なにかに似てる気がして、なんだっけぇ、、、あ!!人間に捨てられた懐かない野犬!前の世界のドキュメンタリー番組で、人間を信じられなくなった犬が少しずつ特定の人間にだけ心を開いていく話だ。
 その野犬に見えだしてからは腹も立たなくなっちゃったのよね。フィラード様のように心許せる主が見つかって本当に良かったわ。

「おい!その生暖かい目を止めろといってるだろ!だいたいお茶のためだけにそんなに着飾って、そんなにフィルに褒められたいのか?」

「いやですわクーパー様、私王妃様に呼ばれて参りました。そもそもフィラード様に会うつもりでき来てません。・・・まぁ、今から会うんですけど・・・。」

 それに質素なドレスで王妃様に会うと「シィちゃん!もっと似合うドレスを扱ってる店を知ってるわ!」といって城に呼びかねない。

「そうだよな!お前が会いたいわけじゃないもんな!フィルに呼ぶなって言ってやるよ!お前はフィルの婚約者に相応しくないからな!」

 クーパー様の顔がパァっと笑顔になる。かわいいわ。いつもこれぐらい素直ならいいのに。

「わかってますよ。なる気ないので安心してください。もう耳にタコです。」

「は?たこ?なにわけわかんない事言ってんだ?これでも俺は忙しいんだ。じゃーな♪」

 そいうと手をひらひらさせながら去ってった。ふぅ、番犬も大変ね。でも、ここが乙女ゲームや小説の中ならば、彼はヒロインになんて言うのかしら?顔が整っているし、宰相の息子で殿下の側近とあれば彼も攻略対象者の可能性が非常に高い。やっぱり相応しくないと言って殿下と仲良くなるのを阻止するのかしら?それともあんな彼でも甘い言葉を吐くのだろうか?ふふ、ツンデレっぽいからデレのギャップはすごいんだろうな。

「楽しそうだな。」
 
 ビクッ!

 慌てて顔をあげると、腕を組んで扉に寄りかかっているフィラード様が優雅に微笑んでいる。 
 びっびっくりしたぁー!いつも部屋にいるのに、やめてよー!
 
「フィラード様。ご無沙汰しております。」

 心臓のバクバクが治らないままドレスを摘み頭を下げる。

「ああ、数ヶ月ぶりだな。また母上に言われたんだろう?今日は天気がいいから外にしよう。さぁ入って。」

 王妃様バレてますよー。



 白を基調にした柱や手すりには細やかな細工がされていてバルコニーには枯葉一つ落ちていない。外を見ると庭師によって花や植え込みが綺麗に手入れされた庭が広がっている。上から全体が見渡せるとまた違ってみえる。

「綺麗・・・」

「だろう?庭師も喜ぶよ。今日のお茶は今夫人達の間で流行っている紅茶だそうだ。」

 勧められるまま飲んでみるとふわっと果実の香りがして蜂蜜かしら?ほんのりと優しい甘さが最高に美味しい。

「とても美味しいです。こんな良い香りのお茶を用意していただいてありがとうございます。」

「茶葉はまだあるようだから、帰りに持ち帰るといい。用意しておくよ。」

「わぁ!ありがとうございます!」

「あ、あぁ。」

 嬉しい!今度ティーナ達をお誘いしよっと!

 フィラード様とのお茶会の菓子は、最初は太らせて食べる気?と思ってしまうぐらい何種類ものお菓子があったが、回数を重ねるごとに減っていき今は2、3種類に落ち着いている。これがまた素晴らしい厳選で、私の好きなものばかり。サクサクのチョコパイや甘酸っぱいレモンケーキにカスタードと苺のタルト、もう最高です。

 フィラード様との会話も作物の話や貿易の話や他国の話など面白い話が多くて、ちょっとだけ楽しくなってきてるのはここだけの話。


 でも今日はフィラード様を楽しませることが目的だから。。


「フィラード様。今日はボードゲームしませんか?」

「構わないけど、シエンナはできるの?」

 一般的に女性は刺繍やダンスを嗜む傾向があり、ボードゲームはほぼやらない。
 だけど私は、昔アルがお父様に教わっているのを見て「私もやるー!」といって一緒に教わり、それからは暇さえあればアルと遊んでいた。アルとは互角にやり合えてるし、お父様にはもう負けなくなったから、フィラード様とも少しはやれるはず!

「少しは戦えると思いますよ。」

   
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