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お茶会2 -フィラード殿下-
しおりを挟む私はすぐに母へ相談した。父から2回目の呼び出しとあっては婚約者確定だと噂が流れるのは目に見えている。
「任せなさい!オッズレンのところだったらアリアでしょう?私も会いたかったのよー!ほら、王族になったらほいほい会えないでしょう?」
母は行動力がある人だ。すぐに動いてくれるだろう。予想通りすぐにお茶会の予定が組まれた。公爵夫人には母の部屋に行ってもらい、シエンナ嬢と2人になれるよう手配した。2人といっても近くに侍女数人と少し離れたところに騎士達もいる。
そして待ちに待った瞬間なのだが・・・。彼女は、戻っていた。あの時の笑顔が嘘のように、怯えている。
私と目を合わせようとせず、質問にも淡々と答えるのみ。もしかしたら、私の勘違いで、私だけではなく王族が怖いのか?そうすると王族に知られたくない秘密をもってるとか?失礼かもしれないが、単刀直入に聞く。
しかし、彼女の顔には疑問しか浮かんでいない。やっぱりか。
「そうだよな・・・父上には普通だったしな・・・私だけに対してか?」
だとすれば尚更謎だ。私は彼女に対してなにもしていない、原因が私ではないとすると、やはり何者かが「王子の為」というよくわからない理由で彼女になにか害があったのでは?
「ふふっ」
バッと顔を上げる。クスクスと笑う彼女に苛立つ。これだけ人を悩ませておいて笑うとはどういうことだ。すると、彼女から何を知りたいのかを尋ねられた。尋問されて笑い出すなんて、彼女は変わってる。
聞きたいこと・・・たくさんあるが、なにをどう聞けばいいのか、彼女を見つめたまま悩んでいると、こてんと首を傾げ私を見ている。
ゔっかわいいじゃないか
今日は逃げないことを指摘すると、謝ろうとする。ちがう!謝らせたいわけじゃない!そこからは止まらなかった。
彼女は笑って答えてくれた。
私がかわいい!?ち、違う!今はそこじゃない。
顔が怖い??本当に?気を抜いた覚えもなければ、そんなこと言われたこともないし、令嬢に怖がられたこともない。
理由を聞いていくと、表情か・・・考えたこともなかった。いつも王族として余裕のある顔を心掛けていたし、このところは意識していなくてもできるようになった。その顔が怖かっただと?
それにしても、原因が私でよかった。
もうこんな思いはたくさんだ。納得はできていないが、原因がはっきりしたことで幾分かスッキリした気分だ。今さら敬称呼びもないだろうと思ったが、愛称呼びは却下された。あぁ、それもそうか。
慌ててる彼女は珍しい。彼女は私と違っていろんな顔を見せてくれる。もっと知りたい。
今度は、疑いや怯えなどなくして、またシエンナと会話がしたい。
ちょうど良く、シエンナの母上が迎えにきたようだ。公爵夫人は「楽しい時間を過ごされたようで・・・」とにこにこしている。
妙に居心地が悪くなり踵を返し城へと戻る。なんだ?別に聞き慣れた言葉だ。
歩きながらシエンナの言葉を思い出す。
・・・今日、私はどんな顔をしていた?気は張れていただろうか、いや、それどころじゃなかったな。だいぶ抜けていた。婚約者でもなんでもない彼女にフィルと呼べと言ってしまうくらい抜けていた。
あぁそうだな、公爵夫人。
私は今日とても楽しかったんだ。
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