218 / 218
終末のダンジョン
終わった………?
しおりを挟む以前、何度か見掛けた騎士風のお兄さん。
何処からともなく突然現れたかと思えば、なんと邪な神様の像を破壊してくれた。
今日から僕らの中で勇者様と認定します。
像を砕かれた神様はギョッと目を見開いている。自分の依代がぶっ壊れて驚愕した様子。
それに気付けばララお姉ちゃん達は糸が切れたようにバタリと倒れていた。
「な、な、いつの間に…。全くこの私に感知されず近づくなんて…まさかダンジョンの一部にでも同化していたとでもいうの。」
誰も彼がただ単に存在感が薄かっただけと知ることは無かった。
「くっ…私の悲願が…。ま、まだです!この婚姻届にサインさせれば既成事実です。神界に返却される前になんとか。」
まだ諦めを知らない変態は紙と羽根ペンを手に迫ってくる。足の先から徐々に霧のように消えていってるにも関わらずその目は死んでいない。
僕の元まであと一歩。
でも、もう遠いよ。だって、僕らのお母さんがそれを許さない。
「この戯けが。いい加減反省せい。」
「お、王ちゃん。くっ…ご、後生ですー。ちょっとサインしてもらったらすぐ帰るんで、ね?」
「はいそうですかって言う訳無かろうが!!」
リアル雷がトドメとばかりに神様へ直撃した。
焼き焦げた匂いと煙が舞う中、ようやく神様が顔面から倒れてくれた。
「ふむ、よし儂はこれを連れて帰るとするかのう。コータよ、これのお仕置きは既存の100倍コースにするから安心せい。」
「は、はいお願いします。その、ありがとうございました。」
「よいよい。お主らはよく頑張った。これからの未来が楽しいものであることを祈っておるぞ。」
ニカッと笑ってそう言うと、丸焦げの神様の顔面をわし掴んで帰っていった。
もう下半身が消えてて上半身だけで不気味だったけど、あの神様にはお似合いかもしれない。
そして、ついにストーカー対策用品の転移石を手に入れる時が来ました。
既に小型に戻ったヴァルさんとチビうささんを頭に乗せて、棺の中の丁寧に保管された石を取る。
これまでの苦労を思い出すと涙が出てくる。隣ではクロウさんもやったなやったなと咽び泣いていた。
ヴァルさん?
ヴァルさんはもう涙と鼻水だらけだよ。
ひとまず全員が落ち着き、最後に助けに来てくれた勇者様にお礼を伝える。
「助けに入って頂き本当にありがとうございました。」
「いや、お礼なんていらない。俺こそ遅くなってすまなかった。」
邪神を追い払ったのにとても謙虚な勇者様だ。
しばらくお互いに感謝や謝罪の繰り返しが続いたけど、チビうささんの一鳴きで終了した。
さっきまでの戦いで僕らと勇者様以外は気絶中。なんだかとても安心する。
気絶した人達の対処は勇者様がしてくれることとなった。
感謝してもしきれないよ。
棺の前でもう一度勇者様と固い握手を交わしていよいよ転移。
複数人で転移する場合は所持者に触れていなければならないらしい。ヴァルさん達は頭でクロウさんは僕の肩を触る。
懐かしき友のいる森を思い浮かべて。
「転移。」
薄暗いダンジョンから一変して目の前は緑でいっぱい。
久しぶりのユーリル大森林だ。
それだけでまた瞳が潤んでくる。
チビうささんが森中に響かせるように大きく鳴く。
それに返事するようにチビうささんとは違う鳴き声が返ってきた。
何日経とうとも友の声は忘れない。
僕は声のする方へがむしゃらに走った。
走って走ってそして。
「クックゥー!」
懐かしい丸くて真っ白。
親友は変わらず僕の胸へと飛び込んできた。
力をなくしたようにその場へ膝をつく。
もうダムは完全に決壊。
頭のてっぺんから顎の先まで涙と鼻水だらけになっちゃった。
そして、僕はうさぎさんに返事を返す。
「うん、ただいま!」
こうして、僕達の長かった逃避行に一区切り付ける事が出来た。
めでたしめでたし。
「はぁ、はぁ何ヶ月も森で待機した甲斐がありましたわ。」
「久しぶりすぎて鼻血が止まりませんわ。」
茂みの奥で潜むボロボロの箱とボロボロになったドレスが妖しく揺れていた。
彼ら彼女らの激しい逃亡戦はまだまだこれからだ。
0
お気に入りに追加
1,071
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(333件)
あなたにおすすめの小説
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
召喚アラサー女~ 自由に生きています!
マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。
牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子
信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。
初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった
***
異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います
かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います
魔力吸収体質が厄介すぎて追放されたけど、創造スキルに進化したので、もふもふライフを送ることにしました
うみ
ファンタジー
魔力吸収能力を持つリヒトは、魔力が枯渇して「魔法が使えなくなる」という理由で街はずれでひっそりと暮らしていた。
そんな折、どす黒い魔力である魔素溢れる魔境が拡大してきていたため、領主から魔境へ向かえと追い出されてしまう。
魔境の入り口に差し掛かった時、全ての魔素が主人公に向けて流れ込み、魔力吸収能力がオーバーフローし覚醒する。
その結果、リヒトは有り余る魔力を使って妄想を形にする力「創造スキル」を手に入れたのだった。
魔素の無くなった魔境は元の大自然に戻り、街に戻れない彼はここでノンビリ生きていく決意をする。
手に入れた力で高さ333メートルもある建物を作りご満悦の彼の元へ、邪神と名乗る白猫にのった小動物や、獣人の少女が訪れ、更には豊富な食糧を嗅ぎつけたゴブリンの大軍が迫って来て……。
いつしかリヒトは魔物たちから魔王と呼ばるようになる。それに伴い、333メートルの建物は魔王城として畏怖されるようになっていく。
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!
夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ)
安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると
めちゃめちゃ強かった!
気軽に読めるので、暇つぶしに是非!
涙あり、笑いあり
シリアスなおとぼけ冒険譚!
異世界ラブ冒険ファンタジー!
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
誰にでもできる簡単なお仕事です。
純粋どくだみ茶
ファンタジー
ホームセンターで女神様と雇用契約を結んだ。誰でもできる簡単な仕事。それは"女神様が貸与した武具の回収"だった。女神様が勇者や転生者に武具をポンポン貸与するから女神印の武具で世界が溢れそうだ。異世界のバランスが崩れる前に武具を改修するんだ。さあ、旅立て凡人。ヘタレの君がいなくても異世界は平和だ。
ところが最近はそうでもないらしい。魔族が攻めてきた。勇者でもない主人公が魔族と魔王と戦っている。迷走するファンタジーどうなる異世界。
シリアスな話、コメディな話、ちょとエッチな話を織り交ぜてお送りいたしております。
■どくだみ茶について
作者の名前の由来になっている「どくだみ茶」は、デトックス効果、高血圧予防、動脈硬化予防、糖尿病予防などの効果がある反面、合わない人が飲むと下痢をしたり、肝臓機能が低下している人は飲まない方がよいとされいます。
作者も血糖値対策として毎食毎に愛飲しています。
このお話も万人受けするお話ではないかもしれません。それを踏まえて作者名を「純粋どくだみ茶」としています。そのことを踏まえてこのお話を読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
本当にお疲れ様でした。
まだ2人居ましたねー(笑)
忘れてました。
話に入り込み過ぎてイライラムカムカモヤモヤしてましたが、お母さんが邪神をボコボコにしてくれたのでちょっとスッキリしました(笑)
また続きを楽しみに待ってます。
蘭 紅葉さん、いつも読んで頂きありがとうございました!
また更新することがございましたら、是非読んで頂けると幸いです!
お疲れ様ですm(*_ _)m
あっやっぱりこっちで張ってるやつがいた…
aya-maruさん、今まで読んで頂きありがとうございました!
最後までストーカーは居ます…(-_-;)
ディー!よくやったー!
これで奴らも終わりじゃー!
スカイアさん、コメントありがとうございます!
今までの中で不遇な場面しか無かった人なので…(-_-;)