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終末のダンジョン

ヴァルさんVSプリミス3

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我輩はまだ情けなかったのである。
眼前で涎を撒き散らせ頬を擦り付けられて心がまいっていたのである。
でも、親友が奮い立たせてくれた。

大丈夫ではないけれどまだ諦める訳にはいかない。

今一度自分に活を入れ目を見開く。
我輩は正妻を名乗る変態雌竜を睨む。

「ムフ、ヴァルたんそんなに見詰められると照れちゃう。」

「き、気持ち悪いのである!」

また怯みそうになったけれど、二度目はやらない。元々離されないよう尻尾でくるくると巻き付けられているが、更に我輩自身がこの女を逃さないようにしっかりとしがみつく。

「ヴァ、ヴァルたんなんて大胆な…。でも、こんな人前でも私はいいよ。子供は百体作ろうね、くへへへへ。」

「もう、もうお主は黙っとれい!」

これ以上聞いていられない。
気味の悪い笑い声をあげて悦に浸る変態を無視してダンジョンの天井ぎりぎりまで飛び上がる。

「ヴァルたん、空中プレイ?」

もう嫌。
我輩は必殺技であるヴァルさんアタックの勢いで地面へと急転落下する。
ただし今回のヴァルさんアタックは改造版。今まで加えていた回転だけでなく得意の黒炎も纏う。

これで地面へと激突した時の我々への衝撃はかなりのものとなるだろう。
変態を倒す為なら覚悟がいる。無傷ではいられない。

「ヴァ、ヴァルたん、ちょっと熱いよ。積極的で嬉しいけど熱いよ。」

「そうか熱くて結構である。そして、そのまま逝くといい。」

「ヴァルたん!?」

幾ら変態でも危機感を感じたようだ。少しもがくももう遅い。
地面へと新婚旅行が出来たんだ彼女も喜ぶことだろう。



ダンジョンとはとても強固に出来ており、普通なら少しの振動も少しのひびすら出来ない普通であれば。

しかし、最強種2体が音を超えた速度で激突すればそれはもう普通ではない。
結果、大きなクレーターと大地震がダンジョン内部を襲った。ここを創った誰かが見てたら頭を抱えたことだろう。


そして、無駄に演出掛かった土煙の中立ち上がったのは一つの大きな影だけ。


やがて土煙もおさまり、影が本来の姿を現す。


立ち上がったのは終焉の黒炎竜のヴァルさん。
勝利の咆哮は歓喜に満ちていた。


一つの戦いがひとまず終了を迎えた。
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