185 / 218
帝国の城、捕われのクロウ
小話 ディーのつぶやき
しおりを挟むララちゃんとの旅が始まってもう何日経ったんだろうか。
こんな綺麗なお嬢さんとの旅だ、普通なら浮かれる。道中の間で恋心が芽生えたりなんてことも………ある訳が無い。
正直、早くスロウハート王国に帰りたい。
ララちゃんとの旅でドキドキはない。
別の意味でなら心臓の鼓動はえげつなく激しくなるけどさ。
この前も逃げた坊主を追う為に再度準備し直してミストリア王国を出た時だ。いきなり空から降ってきた巨大な白い竜が俺達に激突しそうになった。混乱の中で死を悟ったのに何の衝撃も無かった。恐る恐る咄嗟に閉じた目を開けると片手で迫ってきた白竜を受け止めているララちゃんの姿が。
乙女とはなんぞや、俺は何度も問いたくなる。
生物の頂点に位置するドラゴンを顔色一つ変えず受け止める人間なんてそれはもう人間なのか?
そして、そんなのに追われる坊主の不憫さたるや。
でも、俺には何も出来ないし、してやれない。
お嬢の命令は絶対。
あの坊主を探し出すまでこの指令は終わらない。
少年へと黙祷を捧げる。
貴重なドラゴンに一切の興味も無く、王国方面に捨てるように放り投げていく。そして何事もなかったかのように坊主の辿った道のりを進むララちゃん。
痕跡も何もないはずなのに第六感という名の本能でオルスタル帝国へと侵入した。
まだミストリアのどこかにいるのでは?
そう問いかけて見ると…。
「そんなわけ無いですよ。だって、帝都方面からコータくんの気配を感じます。私達は運命の鎖で結ばれてますので間違いありません。」
曇りなき眼ではっきりと告げた。
自信なんて可愛いもんじゃない盲信と断定だ。
少年に逃げ場なんてないのかもしれない。
俺は心の中で謝り続けた。
そして、帝都に到着。
結果から言うと、ララちゃんの言葉は正解していた。
坊主は帝都に訪れていた。
しかし、賞金首として本格的に色んな奴らから追われる形となっていた。
簡潔にまとめると帝国の姫様の旦那を攫ったらしい。
だが、あの少年が無闇に悪事を働くとは思えない。何らかの事情があるのだろう。わざわざ姫様本人でなく旦那を攫ったんだからな。
2つの国から追われる少年。
俺はその不遇さを神様にでも呪われているのではないかと思いました。
0
お気に入りに追加
1,071
あなたにおすすめの小説
【完結】混沌の闇は子育てに奮闘する!~普通の子どもはそんなに強くはならないと思う~
かのん
ファンタジー
混沌の闇から世界を救うのは一人の勇者。しかし混沌の闇は呪いのように誓う。
「いずれ我は甦る!その時はこの世界を混沌の闇で呑み込んでやる!」
そう、粋がっていた時もありました。
これは混沌の闇が、人の子を拾い、世界を滅ぼしそうにたまになりながらも、愛を知り、子を育む物語。
第12回ファンタジー小説大賞にエントリーしようと思います!
応援よろしくお願いいたします!
チートなメイドと異世界ライフ
いまち サク
ファンタジー
一度死んでしまった真。
それでもう一度転生するときに不都合で
異世界に送り出された。その時一緒にいた
のは、一人のメイド。さらに真は
ある一国のお姫様。そこから始まる
異世界ライフ。
最強テイマーは外れスキル持ち!?~私だけ好感度が表示される鑑定で、みんなから好かれてます〜
空野進
ファンタジー
誰もが『能力』鑑定をできる世界で、少女カエデの鑑定だけはなぜか『好感度』が表示された。
能力も職業も分からないカエデは、自分に何ができるか分からず困っていたときに魔物使い(テイマー)にならないかと薦められる。
「好感度がわかるなら、魔物も仲間にしやすいんじゃないかな?」
魔物の好感度が最大になったときにだけ、仲間にすることができる。
突然襲ってくる魔物の好感度を上げるのは至難の業で、一体も使役できずに殺される魔物使い(テイマー)も後を絶たない不遇職である。
だが、カエデは相手の好感度やその上げ方が鑑定で判断することができる。
鑑定の結果を元に好感度をあげていくと気がついたときには、カエデの周りにはたくさんの人や魔物たちがいた。
「これだけ仲間がいると寂しくなくていいよね」
のんきなことを考えていたカエデだが、彼女の周りにいたのは伝説級の魔物や実力者たちだった――。
断罪済み悪役令嬢に憑依したけど、ネトゲの自キャラ能力が使えたので逃げ出しました
八華
ファンタジー
断罪済みの牢の中で悪役令嬢と意識が融合してしまった主人公。
乙女ゲームストーリー上、待っているのは破滅のみ。
でも、なぜか地球でやっていたオンラインゲームキャラの能力が使えるみたいで……。
ゲームキャラチートを利用して、あっさり脱獄成功。
王都の街で色んな人と出会いながら、現実世界への帰還を目指します!
お仕置き、しちゃいますよ?
紅子
ファンタジー
ある日突然に知らない場所に召喚された私。私を召喚した人達は知らない。私が召喚された本当の理由を。
身に覚えのある人、気を付けて。お仕置き、しちゃいますよ?
2話完結済
00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
即席異世界転移して薬草師になった
黒密
ファンタジー
ある日、学校から帰ってきて机を見たら即席異世界転移と書かれたカップ麺みたいな容器が置いてある事に気がついた普通の高校生、華崎 秦(かざき しん)
秦は興味本位でその容器にお湯と中に入っていた粉を入れて三分待ち、封を開けたら異世界に転移した。
そして気がつくと異世界の大半を管理している存在、ユーリ・ストラスに秦は元の世界に帰れない事を知った。
色々考えた結果、秦は異世界で生きることを決めてユーリから六枚のカードからスキルを選んだ。
秦はその選んだスキル、薬草師で異世界を生きる事になる。
呪われた悪役令嬢は1000年幽閉された後、過去へ戻され最強を目指す!!~世界を救うなんてついでですわ~
無月公主
ファンタジー
王や聖女嵌められて悪役令嬢となってしまったエルメリーチェ。
不老不死の呪いをかけられ白い塔に1000年幽閉され、外へ出て見ると世界は崩壊していた。
世界最強と謳われた曾祖父の力により過去へ戻され、隠された真実を次々と知る事になる。
世界はどう変動して行くのか!?とんでもない相手を好きになってしまったが実るのか!?世界最強の曾祖父を超えられるのか!?エルメリーチェの人生は始まったばかりだ。
緑の魔女ルチルの開拓記~理想の村、作っちゃいます! 王都に戻る気はありません~
うみ
ファンタジー
緑の魔女と謳われた伯爵令嬢ルチルは順風満帆な暮らしを送っていた。
ところが、ある日突然魔力が消失してしまい国外退去の命を受けることに。
彼女が魔力を失った原因は公子と婚約したい妹による陰謀であったが、彼女が知る由もなかった。
令嬢としての地位を失い、公子との婚約も破棄となってしまったが、彼女は落ち込むどころから生き生きとして僻地へと旅立った。
僻地に住む村人は生気を失った虚ろな目をしており、畑も荒れ放題になっていた。
そこで彼女はもふもふした大賢者と出会い、魔力を取り戻す。
緑の魔女としての力を振るえるようになった彼女はメイドのエミリーや一部の村人と協力し、村を次々に開拓していく。
一方、彼女に国外退去を命じた王国では、第二王子がルチルの魔力消失の原因調査を進めていた。
彼はルチルの妹が犯人だと半ば確信を持つものの、証拠がつかめずにいる。
彼女の妹はかつてルチルと婚約していた公子との婚約を進めていた。
順調に発展していくかに思えた僻地の村であったが――。
※内容的には男性向け、女性向け半々くらいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる