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帝国の城、捕われのクロウ

白き英姫

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無数にうねうねとクロウさん救出を妨害してくる白髪さん。
その無尽蔵な力は驚嘆に値する。
どうにかあの鉄球を外したいのに、全然許してくれない。
切っても切っても生え続ける。
これが愛の力だなんて納得はしたくないけど、その想いの強さは認めます。

もう一度トライ!

いや、やっぱり駄目でした。
ずっとこの繰り返しきりがない。

「くへへへ、無駄よ無駄。決してクロウにまで届かせないわ。」

くっ早くしないと折角気絶させた人達も目を覚まして1からやり直しになっちゃう。

どうしたら、どうしたらいいの…。



「クゥー!」


触手蠢く異様な空間の中で聴こえる小さなお姫様の鳴き声。
どこ?

頭の上だと危険だから隅で待っててもらったはず、なのにそこに姿はない。
辺りをキョロキョロと探してようやく発見。

チビうささんはクロウさんの側でぴょんぴょんしていた。
前足には外された鉄球へと繋ぐ枷を掲げた状態で。

「「えっ?」」

二人の驚きが重なった。
僕と白髪さんだよ。
クロウさんはちょっと頬ずりされすぎて意識が遠のいてるから。
どうやって外したんだろう?
爪をビシッとさせている。
まさかね…。

「な、な…このもふもふでふわふわな小動物風情が私達の愛の邪魔をしないでよ!」

発狂したかのような金切り声で触手を動かす。
目標はクロウさん近くでぴょんぴょんするチビうささん。
まずいっ…間に合わない。

一本だけでも十分に屠る力を持つ触手をいくつも伸ばし、親友の娘さんへと迫りくる。


やめて!

届かないと思っても手を伸ばす。

「ククゥー!」

チビうささんは僕を見て可愛らしく鳴く。
い、嫌だ…そんなお別れみたいな挨拶をしないでよ!

「死ね。」

白髪さんの宣告。
いくつもの触手が僕の視界からチビうささんの姿を消す。

僕は支えを失ったように膝から崩れ落ちた。

「うぅ、あ…あぁ…。」

声にならない呻きが漏れる。

「クゥー」

失った絶望が幻聴を流す。

「クゥー」

幻聴がしつこい。

「ククゥー!」

あれ生きてる?
バッと顔を上げて改めて確認。
よく見れば触手達は動きを止めて白髪さんは悔しそうにしてる。

どうして?

「この可愛いもふもふな小動物め、卑怯よ!」

歯をぎりぎりとさせて睨む視線の先にチビうささんは居た。
クロウさんの背中越しから片足をピッと上げて僕に手を振っていた。
そうか、クロウさんを盾にしたんだね。

幾ら何でも白髪さんも愛する人をグジュグジュにしないもんね。

「クロウに他所の女が触れてんじゃないわよ!」

そして始まるキャットファイト。
でも、捕まえようと白髪さんが手を伸ばすもチビうささんは煽るように鳴きながら上手く躱している。


これだけ小さな勇者にお膳立てされたんだ良い加減決着を着けようか。

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