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闘技大会と‥

オカエリナサイ

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王城を脱出し、以前の王都でも泊まった月見亭に行く。
もうすぐ開催される闘技大会のためか人が前に来た時より更に多く賑わっている。
これは空いてないかもしれない。
行くだけ行ってみよう。

宿屋のお姉さんに泊まれるか確認。

残念、とても申し訳なさそうに断られました。
仕方ない、繁忙期だもん。他にも宿屋は沢山ある。片っ端から聞いて行こう。


途中で頭の上でくぅーくぅーお腹を鳴らすチビうささん達のために、果実や串肉を買い食いしつつ泊まれそうな宿屋を探していく。
百科事典によると、王都には高級な貴族向けの宿屋を含めてもおよそ100軒近くはあるらしい。
最悪、多少お金がかかっても良いかもしれない。


しかし、一向に空いてる宿が見つからない。かれこれ数時間は経っている。
高級店も質の高さにびくびくしながらも聞いたけど駄目だった。

今年初めて開催されるイベントだけあって各国からお偉いさんが集まって来ている。
当然、そういう人達に優先される。


どうしようか途方にくれちゃう。
頭の上でヴァルさん達が一生懸命に頭をタシタシと叩いて慰めてくれる。


「あれ、コータ様どうされたのですか?」

少し項垂れ気味の僕の背中に声がかかる。
さっき聴いた声。振り向けば姫さま。
後ろの馬車では、ララお姉ちゃんと箱型アリシアさんが手を振っている。


どうして王族の人には縁もゆかりも無さそうな場所にいるの。
ここは事典では治安の悪さに定評のある女子供は近づかない場所って書いてあるけど。

「え?ひ、姫さまどうしてここに?」

「いえ、お話も終わり散策することになりまして。そしたら、偶々偶然出会い頭に黄昏てるコータ様をお見かけしたので声を掛けたのですが。何かあったのですか?」

「えーと、じ実は‥」

「もしかして急に今年開催される闘技大会のせいで観光客の増加により宿屋が満杯で泊まる場所が見つからないとかですか?」

僕が答える前に満点回答。
すごい、まるで予知してたかの如く当ててくる。

「は、はいその通りです。」

「それは大変お困りですね。もし宜しければ私の所にお泊りになりませんか?」

姫さまのとこって王城ですよね。

「いえ、それは‥」

「大切な友人がお困りなのです。お節介かもしれませんが助けさせて頂けませんか?今まで色々お世話になっておりますし、あわよく‥こほん、お互いに助け合ってこそ真の友人と言えますしね。だ、駄目でしょうか?」

怒涛の早口で畳み掛けてきて、最後はトドメの目を潤ませ上目遣い。

非常に断りづらい雰囲気。
後ろで護衛について来ている女騎士さんが、そうですそうです。姫様の言う通りだと訴えて来ている。

僕の頭の中で激しい葛藤が繰り広げられていく。

それが念話で伝わってしまったのか、ヴァルさんが達観とした顔で諦めよ、吾輩も同じように諦めたことがあると言う。


はい、わかりました‥



僕は馬車に渋々乗り込む背後でニヤリと笑う姫さまに最後まで気づくことはなかった。


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