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楽しい旅行

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配下数人を残して王都への旅行を開始した。
相変わらず町の入口まで住人達には避けられ続けている、少し悲しい。でも、兵服ではなく私服なモルドさん達だけはお土産よろしくといつもの調子で見送ってくれた。
それだけで心が軽くなる。


それから始まった旅行。
町の中と違って魔物がちらほらと居る。
しかし、俺達の元まで訪れる前に配下の誰かしらが始末してしまう。

気楽に行けるけど鈍るといけないから少しは戦いたい。

「いえいえご主人様の手を煩わせる訳にはいけません。ここは我々にお任せ下さいませ。ご主人様はごゆっくり景色を堪能をして下さい。もしくは私達の誰かと一発いかがですか?」

そんなお茶飲む感覚で迫らないで。
今日も今日とて昼間っから配下達の欲望は絶好調のようだ。

あの夜みたいな強行はないものの隙あらばここぞとばかりにお誘いしてくる。
ヘタレは旅行の開放感でも治らない。

「悪いけど遠慮しておきます。それより周囲に例の王家からの精鋭さん方は居そう?」

「いえ、今のところ敵影無しです。仮に居たとしてもご主人様のお目を汚さないよう裏で処理しておきます。」

綺麗な顔して敵には容赦が無い。
配下達にこの世界の人達をどう思うか意識アンケート調査をしたけど、誰も彼もがそこらに飛ぶ羽虫程度にしか見えていないみたい。
唯一、コロックさんやジンさん達は虫の中でも昆虫くらいの位置には置いているらしい。
もう少しこの世界の人とも交流を持っても良いんだけどなぁ。

「程々にね。」

「はい!」

それからの旅は夜這いをされる以外は軒並み順調に進む。
王都までの道のりには村がいくつか点在しているが一応俺達は賞金首の犯罪者扱い。宿に泊まらせてくれないかもしれないし、そもそも村自体に入らせてもらえない可能性だってある。

好戦的な彼女達なら村の住人を殲滅してからゆっくり適当な家で過ごしましょうと提案してくるだろう、うん本当に提案してきたけど…。
流石に何の罪も無い人を殺すのは俺の僅かばかりの良心が痛むので野宿で決定。

でも、野宿でも大丈夫。

解放欄にある仮設住宅ってのがあれば暗い夜も明るく過ごせる。
お値段は………配下3人分。
へへ、またお財布が淋しくなる。


けれど、7人全員が入ってもまだ余裕の空間が残るくらいには広い。
お買い得お買い得お買い得…。

寝る時は右にクロコで左にココちゃんのケモ耳サンドイッチ。
偶にココちゃんのお尻尾様が俺のお腹に触れる時がある。

お陰でここ最近は寝不足気味。


そんな幸せな日々を続けて数日。
王都までの描写は特に無く、無事到着した。結局、旅の途中で襲われる事もなかった。

「襲われなかったね。」

「フフフ…。」

アイリスは笑うのみ。
うん、襲われなかったね。

王都への入口はシュトールと同様に門番が配備されている。検問の列はシュトールと違って結構な行列が出来ている。

「さてこのまま並んでも大丈夫かな?絶対王都にも俺達は犯罪者として触れ回っているだろうから並んでたら兵に囲まれるかも。」

「ご主人様そもそも並ぶのが間違っております。ご主人様の行く手を阻むなど断じてあってはなりません。堂々と入れば良いのです。」

「「うんうん」」

「えー…。」

割り込みどころの騒ぎじゃない。
犯罪者じゃなくても兵士に囲まれる事案だ。しかし、配下達はクロコですらそれが当然とばかりに頷いている。
主最優先の皆だから仕方がない。

「いやいや、並んでる人達に悪いから俺達も並ぼう。兵士なり冒険者なりに囲まれたら軽く相手してついでにお城の場所を聞こうか。」

「むぅ…ご主人様がそう仰るのであれば致し方ありません。ですが、愚か者共の処理は私達で行なわせて頂きます。」

「あ、うん。」

兵士、冒険者各位どうか絡んで来ませんように。
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