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ギルド3
しおりを挟むスキル『転移』。
このスキルで多くの人が想像するのは移動手段。街から街へ一瞬で辿り着ける優れものって印象だろう。
でも、これはそこまで便利ではない。
そんな何キロもの長距離を瞬間移動なんて出来ません。せいぜい無課金で10メートル、限界突破や課金でようやく100メートルまで引き伸ばせる。
でも、街移動には使えなくても戦闘においては非常に重宝されるスキルだ。
MP消費量も少なくノーモーションで敵の背後に回れる。
時空間系スキル持ちがいたら対策しようがあるけど、こんなチンピラ風情の中に居るとは思えない。
ましてや、相手の動きがゆっくり観察出来るくらいのステータス差。
ノロノロとやって来る刃に会釈して転移を使ってメロンの後ろに移動。
まだ俺が目の前から消えた事実を認識出来ていない。なら今のうちに次々と足を折っていく。
最後の一人も折り終わった頃には、ようやくメロンから順に俺が消えた事と自分の片足が折れた事を気付いていく。
「う、うあぁぁ!!俺の俺の足がぁ!?」
「痛い、い痛い!!」
通称教育場で鳴り響く悲鳴に絶叫。
地面で痛みにのたうち回るメロン御一行。集団で甚振ろうと仕掛けて来た罰だよ。
ふと観覧席を見る。
先程までどう俺が甚振られるのか楽しそうに眺めていた面々は揃いも揃って目をまん丸にさせて驚いていた。
どんなもんじゃい。
さて仕返しも出来たから宿屋に帰りますか。
痛みに泣いたり叫んだりする人達の横を通って階段へ向かう。
念話で始末しやすかと囁いてくるクロコを落ち着かせながらこの場を後にしようとする。
「何事だ、上まで聞こえたぞ!!」
しようとしたけどまた現れる新たな面倒くさそうな輩。
頬に十字傷を装備したマッチョマン。服の上からでも分かるほど筋肉でパンパンだ。
この人が例のギルドマスターかな?
なにはともあれ関わる気が無いので横をすり抜けさせてもらおう。
「ちょっと待て貴様!お前がこいつらをこんな目に遭わせたのか!」
問うというより怒鳴りつける聞き方。
何人も足を押さえて転がる中、呑気に一人歩いていたら当たり前か。
「正当防衛です。皆で寄ってたかって剣を向けて来たので対応したまでです。観ていた人達が証言してくれるはずです。」
「なに?」
筋肉ダルマは観覧席を見渡す。
「そこに居るお前達!こいつが言っている事は本当か?」
誰も反応しない。
関わりたく無いのか目を逸らしている者やそそくさとその場から逃げる者も居る。
アミルって奴はもう既に居ない。
「誰も証言しないぞ。残ったのはお前がガロン達に暴力を振るった事実だけだ。」
何言ってんだこいつ?
暴力じゃなくて正当防衛って言っているじゃん。
「いやですから、あっちが全員で襲って来たから返り討ちにしただけですけど。」
「うるさい。どっちにしろこんな騒動を引き起こした原因は貴様にもある。罰としてこいつらの怪我の治療費でも払え。」
ますます訳分からん。
なんで一方的に絡まれて最終的に金を払わないといけない。
メロンの名前を知っているみたいだし知り合いか?
「なんでこいつらの治療費を払わないといけないんですか。こっちが被害者なのに。」
「一方的に怪我を負わせたんだ払うのが当たり前だろう。」
「嫌です。」
「もし払わないなら貴様は冒険者ギルドの一員にはさせられんぞ、いいのか?」
またニヤニヤ顔。
このギルドに所属する奴はニヤけ顔の研修でも受けているのか。
「冒険者を剥奪されたくないなら大人しくギルドマスターである俺の言う事を聞け。」
ぷち。
俺は懐にしまっていたギルドカードを地面に叩き付ける。
「剥奪で結構です。こんなギルドこちらから願い下げです。」
「なっ!?」
途端に顔を真っ赤にさせた筋肉ダルマ。
それを無視して階段へ向かう。
「貴様なんぞ、永久に剥奪してやる!!俺に歯向かったことを後悔させてやるからな!」
しっかり怒声を頂き、振り向く事なく地上へ戻る。
俺が受付所へ姿を現すとお通夜のように静まり返る。
突っかかって来られるよりよっぽどマシ。
あらゆる視線を無視して冒険者ギルドを去って行く。
二度と来ません。
コンゴの宿屋に帰る前に一度門番の所へ行く。
幸いにもまだモルドさんが居てくれた。
滞在許可証を一月分に延長してもらう。どうして身分証を作らないのかとても疑問視されたけどどうにか延ばして貰うことに成功しました。
今日の予定はこれにて終了。
コンゴの宿屋に戻り、晩御飯へ。
あのギルドでの一幕のせいでもう夜になってしまった。
異世界に来て初めての料理。
成長おにぎりで飢えを凌いでいたけどまともな物が食える。
そう思っていたけど、異世界あるあるがここでも発動。
焼かれたお肉の味付けは塩胡椒のみ。
出されたサラダは切った野菜だけでドレッシングはかかっていない。マヨネーズも無い。
パンもやや固い。
食の水準が低い。
俺以外に別の世界から来た人は居ないのか?
でも、出されたお酒はまともな味。
マーロさん曰く、一部のドワーフ達が酒造りに没頭している為色んなお酒が誕生しているらしい。
食に関してはひとまず諦めよう。決して不味いわけでもない。
ただ単調なだけでいずれ飽きそう、ただそれだけ。
いずれお金が溜まったら料理が得意な配下と地球の食材を解放すれば良い。
今は我慢、我慢だ。
色々あった一日はこれで終了。
明日は図書館があれば情報収集に無ければ迷宮へ行こう。
お休みなさい。
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