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教国の危機、足音は破滅か存立か
見える地雷を踏む阿呆
しおりを挟む俺が非ぬ噂を流した騎士共にどんなお仕置きをして差し上げようか考えているうちに会議が始まってしまった。
会議といってもこれから起こりうる災厄についての説明とそれに各国がどう対処していくかっていう簡単かつ眠くなる話し合いだけ。
災厄の説明は極悪商人のかっちゃんの陰謀や龍王復活について。
特にかっちゃんが人に対して凶暴な力を与えて暴走させることには偉い人達皆が渋い顔をしながら唸っていた。
実際に理由もなく狂ったように暴れ回る人達が各地で目撃されたらしくその驚異を重く捉えているようだ。
確かにアイツらはやたら頑丈で筋肉の膨れ具合が羨ましかったもん。
ん?
でも、サラちゃんは元の姿のままで力だけが理不尽だったような……。
もしかしたらかっちゃんの目指していた完成形は筋肉だらけの塊ではなく元の姿で馬鹿力なのかもしれない。
「それでその龍王の復活ってのはいつ頃か分かっているのだろうか?」
それぞれ思考を巡らす中、小国群代表のデイビット様が質問を放つ。
「いや、それは…。」
その質問を受け止めたのは俺の俺達の王様。
しかし、はっきりとした答えを返せない。
それもそのはず陰謀を働かせるかっちゃんに直接会ったのは俺くらいだ。
だからか王様もチラ…チラチラっと視線を当ててくる。
「私は龍王を復活させようとしている者と直接対峙しましたが、いつ復活させるかなどは分かりませんでした。申し訳ございません。」
「ふん、敵と会っていながら何も聞き出さ」
「まぁ!!その時の状況を考えれば聞き出すのは難しいだろう。うん、仕方がない!!そもそもわざわざ敵が説明するはずもないだろうしな、うん!」
「そ、そうじゃのう!!」
勇者(馬)が嫌味を吐こうとするもそれを強引に断ち切るように王様が割って入ってくれた。
教皇様も賛同するように顔をブンブン縦に振ってくれる。
俺と勇者(鹿)の因縁を知っているからか有り難い。
いちいちあれの相手は面倒くさいもん。
「ふ、ふむということはじゃ、聖女を手に入れたその者達が残り欲するものは大量の血ということじゃな、うん。」
教皇様は冷や汗苦労汗をツゥツゥイと垂らして纏めていく。
苦労しているんだね…。
「…ってなると、民が多く集まる場所を狙うか。それぞれの国の中心地を特に警戒した方がいいかもしれまいな。」
「じゃろうな。」
「相手がどこを狙うか分からん以上、念には念を入れて臣下達にも自身の治める領地へ兵をしかと配備するよう徹底した方が良いであろう。」
王様の言葉に各国の代表が同意した。
これだけ全員で警戒すればいくらかっちゃんでも何もしようが無いでしょ。
「へっ、どいつもこいつもビビり過ぎだろ、勇者である俺様が居るんだぞ。」
なんでこの時この場でそんな発言をするのかなぁ…。
勇者だからって自分より年上に対してそんな態度ありえない。
「はぁ…。」
思わず溜息出ちゃう。
他の人達も怒るよりも呆れが上回ったようでやれやれだぜって顔だよ。
教皇様だけがまた汗を噴出しているけど…。
「おい貴様、なに溜息をついてやがる。俺様がおかしな事を言ったか?」
「はぁ…。」
俺を親の敵のように憎んでいるせいか目敏く反応しやがった。
「何度も溜息つくんじゃねぇ!!卑怯者がっ!!」
……………卑怯者?
何があってどうなって俺が卑怯者判定されている?
「あの、私が卑怯者とはどういう事でしょうか?全くそう言われる謂れが無いのですが…。」
「交流会での俺様との決闘を忘れたとは言わせんぞ!!卑怯な手を使って俺を陥れやがって!!」
「ですから卑怯な手を使った覚えが無いのですが。」
ほぼほぼ純粋な試合だった。
どちらかといえば卑劣な手段に及んだのはそっちだと思う。
「勇者である俺様がお前みたいなちんちくりんに負けるはずが無いんだよ!!何か卑怯な事をしたに違いない、そうだそのはずだ!!この卑怯者がっ!!」
「えぇ…。」
災厄にどう対抗するかという会議の場での怒涛の罵声。
これは引いちゃう。
なんたるとんでも理論を持ち出すの。
周りのおじちゃん達を見てみなよ、みんな可哀想な子を見る目でお前を眺めているよ。
もう怒る気にも…。
「このクソ絶壁無いち」
それは音よりも速く勇者様の顎へ到達していく。
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