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戦乱の帝国にて聖女と三姉妹は踊る
あれ?これ詰んでる?
しおりを挟む帝都を去ってから数日。
もう間もなく共和国の首都に到着する。
ここまで村や町を経由した。当然俺が帝都を目指した経路を逆戻りしている訳だ。
沢山のおかしな光景を目にしたよ。
まず一つ目のおかしい物は村や町の人達が俺を大歓迎してくれた事だ。行きに困ってたから助けたけどそれにしても異常。
あと、何故か何かの石像を建造していた。
何を作っているのか尋ねてもフフフと何処ぞのお姫様と似たような笑みを返すだけ。
次におかしな事はどの村や町にもあの白装束共が居た事だ。
紛れもなくアリス教のしつこい息がかかっている。その証拠に旅路の食料を買い足す為にお店へ立ち寄ったら、全く知らない初対面なのにいきなり跪いたかと思えば献上致しますと大袋いっぱいの食料とお金を渡そうとして来た。
お金はお布施らしい意味分からん。
当たり前みたいにスゥ様が受け取ろうとしていたから急いで止めたよ。
もちろん食料品も必要分だけお金を払って購入した。
利益が出て嬉しいはずのお店の人達はむしろこの世の終わりって顔して非常に残念がっていた。
俺が正しいよね?
周りがおかしいだけだよね?
そして、いよいよ共和国の首都へ。
既に終戦の事実が民へちゃんと伝わっているのだろう、もう戦争時の重苦しい空気は感じない。行き交う人々が皆悲愴感が無くそれぞれの生活に精一杯没頭している。
そう思っていました。
まず首都の入口で検問する衛兵が俺達を目に捉えるや否や最敬礼。
その光景を見ていた並ぶ人達も俺達を視界に入れる。
すると、幸い全員とまではいかないものの跪いて祈る者達が現れた。
それをまた見た人達が何事かと祈る人達に尋ねていく。
それが伝染して騒がしくなっていった。
何が起きている?
「女神アリス様、よくお戻りになられました。陛下方がお待ちでございます。すぐにお城へご案内致します。」
女神…。
最敬礼をしていた兵の一人が腰を低くしつつやって来たかと思えば恐ろしい事を言う。
こんなちんちくりんの女神がいてたまるな。
「女神ではないです。」
「ふふ、またまた~女神様は面白い御方です。ささご案内致します、どうぞこちらへ。」
冗談でも何でもないよ…。
俺の否定が届く前に兵士は行った。遠くで女神様と会話したぜって自慢するさっきの兵の声がした。
手遅れが扉から覗いてる。
俺達の乗る馬車の前へ馬に騎乗した兵が十数名現れて先導してくれる。
やけに厳重。
最前に居る兵士が大きな声を張り上げる。
「我らが国を救いし戦女神であらせられるアリス様がお通りになる。道を空けよ!!」
おいおい、そんな嘘で誰が道を空けるかっての。
世界は狂っている。
当然のように道を空ける人達。
キョトンとしていた人も隣の誰かにコソッと何かを教えられて空けていく。
これまた王国でお馴染みの人の道が完成した。
でも、待って欲しい。
共和国から帝都までの道のりでは人助けをしたから信者化するのもまぁ渋々納得出来る。
だが、共和国のしかも首都内で人助けをした覚えがない。
「お姉様お姉様、トワレ様とノルン様をお忘れですか?この国のお姫様達をお姉様は救ったのです。こうなるのは必然です。共和国支部大司教候補生であるノルン様がしっかり素晴らしさを伝えておいてくれたのでしょうね。」
……………うん、なるほど。
手遅れが扉を殴り飛ばして俺の前で笑ってらぁ。
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