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戦乱の帝国にて聖女と三姉妹は踊る
神様だって優しくされたら泣いちゃう
しおりを挟む身体がジンジンと熱い、特に胸の辺りが。
もしかしたらついに成長期でようやく女らしさに磨きが掛かり始めたのかも。
ー起きーーい、聖ーーリスよー
夢はやっぱりディーナお姉様並みのバインバインだね。
スゥ様には夢を見るだけなら自由ですからって優しい目をされたけどついにバとボがインインする時が来たな。
ー起きなーー、アリスーー
爺ちゃんがしっかり鍛えればいずれデカくなるじゃろうって言ってたけど本当だったんだ。
どうしよう、まだ子供なのに大人の色香ってヤツが付いちゃうかも。
ー良い加減起きなさい!!聖女アリス!!ー
「うわっ!?」
寝起きの怒声に飛び跳ねる。
そのまま警戒態勢の構えを取る。
「ここは……どこ?」
周囲を見渡すも何もない。
山や森、川、空すらない。
真っ白な空間に俺だけが……いや、他にも居る。
「ようやく起きましたか、聖女アリスよ。」
背後から聞こえた美しい音色のような声。
完全に警戒していたはずなのに意識の外からスッと入ってきたその存在に向けて有無を言わさず振り向きざまに裏拳を振るう。
「ちょっ!?」
綺麗な声に驚きが混じる。
受け止められたわけでもなくある一定の位置で動きを止められた。不可視の何かに固定されているみたい。
どんなに力を込めても動かない。
「ん、お姉さんは誰?」
まさか女性だとは…。
長い金の髪が風もないのにフワフワと揺れている。
「まったくいきなり攻撃とは…本当あの爺そっくりですね。流石は血筋です。」
この美人さんは爺ちゃんを知っているようだ。
大人びているのに少しぷくぅっと頬を膨らませて怒る姿が可愛らしい。
でも、そんなことより。
「お姉さんは何者?ここはどこ?確か私は帝国に居たはず…。」
そう、そこでサラちゃんに…。
「色々質問ありがとうございます。お友達に刺されて瀕死に陥ったのですよね。そこは爺と違って人間らしいです。さて、まずは貴女の置かれた状況の前にここの説明と私の正体をお伝えしましょう。ふっふっふ、驚いてはいけませんよ。」
人差し指を唇に当てて含み笑い。
所々子供っぽい動きをするこのお姉さんの正体は何だろう。
「ふっふっふ、私の正体は…………この世界を創ったオーロラル神です!どうです、驚きましたか?ちなみにここは神域で私が特別にご招待しました。」
…………………あぁ、なるほど。
このお姉さんには優しく接してあげないといけないね。
「お姉さん仕事が忙しくて大変なのかな?少しは休んだ方が良いですよ。疲れているんですよ、きっと。」
王都でも偶に酔っ払いが俺は新世界の神になるとか言ってるのを見かける。
それと同じだ。
だって、風が吹いたら色々見えそうな布しか羽織っていないしそういう事だろう。
「違います!私は酔っ払いでもなければ疲れている訳でもありません。これは羽衣といって絶対に下から覗いても謎の光が発生する優れ物で、私は立派な神様を務めています!」
「うんうん、そうだね。お姉さんは頑張ってるよ。」
「ちょっ…止めて、泣きたくなるから…。」
聖女として心が疲れた人にもしっかり労りを。
年上の女性に失礼かもと思っても頭をそっと撫でる。
お姉さんの瞳から一筋の線が走った。
「やめて…優しくしないで…よ。」
涙は怒りも悲しみも一緒に流してくれる。
だから、うんと泣くと良い。
自称神様のお姉さんを慰めるのでしばらくお待ち下さい。
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