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戦乱の帝国にて聖女と三姉妹は踊る
オオカミメイドの哀愁
しおりを挟む「へっへっへ旦那、では何処へ案内致しやしょうかへへ。」
もう首に手刀を当てていないのにこのヘコヘコ具合。
こういうしぶとさが彼女を今日まで生かさせたのかもしれない。
「本当にごめんね。用事が終わったらすぐに解放しますから。」
「へっへっへ、そんな謝らないでくだせぇ。ささ、どこにご案内致しやしょうか、へへ。」
もう本当にごめんなさい。
「とりあえず王様の所へ案内してもらえますか?探し物を一番知ってる可能性が高いですからね。」
「お、王様の所でやんすか…。幾ら戦闘民族のお嬢様でも護りの騎士達にすぐ拘束されちゃいますよ。いや、待てよ…そこまで案内したら私は解放…ぶつぶつ。」
何か考え込み出した。
あと私は戦闘民族じゃないよ聖女だよ。
「ニヤリ、フッフッフ。すぐにでもご案内致しましょう!(このまま騎士様達の所に連れてって助けてもらおう。所詮まだまだ子供よ。大人の知恵には勝てまいよ、へっへっへ。)」
本人は気付いていないのかもしれない、とても悪巧みな笑みを浮かべてますよ。
でも、あえてここは放置で。
悪い事したし少しは付き合ってあげないとね。
それぞれ思惑を胸に秘めて移動を開始。
歩きながらもメイドさんは終始ニヤけて気持ち悪い。
んでもって到着。
王様が居るとは思えない。どちらかっていうと練兵場みたい、騎士がなんか剣を持って素振りしてたり打ち合ったりもしているもん。
「あの、ここって王様は」
「キャアァァァ!!!誰か助けて!!女の子に脅されて…いやぁ…助けてぇぇぇ!!!」
俺の疑問を遮る形で泣き叫ぶ見事な名演技。
その迫真の演技は騎士達にも届いたようでこの場に居る皆が俺達の方を一斉に向く。
その中の一人がこちらに歩み寄ってくる。幸いいきなり戦闘にはならなさそう。
「ショコラちゃんじゃないか。一体どうしたんだい?その子は?」
このメイドの名前はショコラさんだったのか。
名前覚えたよ。
「シルフィード様!助けて下さい、この子供にいきなり王様の所まで連れて行けって脅されて怖かったんです。ふえぇぇん!!」
ちょっとどうしたお姉さん。
頭が急に可笑しくなったのではないだろうか。
じゃないとふえぇぇんなんて大の大人が泣き叫ぶ訳が無い。
「この子に脅された?いやショコラちゃん幾ら何でもこんな子供に脅されるってある訳無いでしょ。私をからかっているのかい?」
「ち、違います。本当です。あの子は子供の皮を被った化け物です!怪物です!」
酷い言われよう…。
ちょっと傷付いちゃう。
「いやいやショコラちゃん。一体どうしたんだい。君はこんなちっちゃい子供に酷い事を言う子じゃなかっただろう?何があったんだい?もしかして疲れているのかい?分かった、私がメイド長に掛け合ってあげるよ。」
「くぅ…その優しさは嬉しいです。ですが、違うんですって本当にあの子は筋肉をぎゅうぎゅうに詰めたような怪物なんです!!」
「ショコラさん…。」
ついにシルフィードって人のメイドさんへの呼び方が変わってしまった。
全部正しいのに俺の見た目が幼いばかりに可哀想な事を…。
「お嬢さんは迷子かな?このお姉さんはちょっと疲れ気味でね。本当は優しい人なんだ、分かってあげてくれるかな?」
やばい、俺が泣きそうになる。
こんな事ってあんまりだ。
ショコラさんの肩がフルフル震えている、そっと抱き締めてもういい良く頑張ったって伝えたい。
「どう紛れ込んじゃったか分からないけど、ここはお城でね本来はお嬢さんが勝手に入ってはいけないんだよ。」
ちょっと背中で泣くメイドさんを誰か労ってあげて。
腫れ物を扱うように距離を置かないであげて。
お姉さん任せて、俺がショコラさんの名誉を挽回して見せる!
「はい、ごめんなさい。ですが、私はここに用があります。」
「ここに用事?」
「はい、王様に尋ねたいことがあるので会いに行きます。大事な友達がここに居るかもしれませんから。だから、そのお姉さんに無理矢理案内してもらってたんです。」
「君は何を言ってい」
シルフィードの言葉が途中で止まる。
何故なら俺が地面へ向かって拳を放ったからだ。
それにより練兵場が大きく揺れる。
「そのお姉さんが言っている事は全て本当です。さぁ誰でも良いからさっさと私に王様の元へ案内しなさい。」
ちょっと高圧的に。
お姉さん、これでお姉さんの名誉は元に戻るからね。
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