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他所の聖女と異界の勇者
巻き込まれた苦労人
しおりを挟むとても勇者の特徴と同じ黒髪黒目の青年と出会った。あんな奴と似ているなんて可哀想に。俺は心から同情した。
とりあえず倒した魔物を護衛騎士と一括にされて名前が出ず落ち込んでいたトールさんと一緒に解体。売れる部位だけ持ち帰りでその他は拳圧で掘った穴に埋めました。
ここでは落ち着いてお話出来ないだろうし、森から退出しましょう。
エルドさんのおすすめの飲み屋があるそうなので、そこでお話することに。
聖都には来たばかりだろうにもう行きつけの店があるなんて凄い。変態的信者以外の一面が垣間見れてちょっと驚き。
移動している間でお互いの自己紹介を簡潔に伝えた。名前はタローで新米冒険者。俺も名前と同じ冒険者だと伝えた。最初に聖女って言っちゃったけど魔物に驚いててちゃんと聞こえてなかったよね?
そして、聖都に戻ってきてギルドへ達成報告を済ませた。その道のりでちらちらと勇者もどきのお兄さんが何度も俺を見ていた。
まさか…いやいや、でも窮地の中での救出だったしありえるのかな。
お兄さん、もしかしたら俺に惚れちゃったのかもしれない。颯爽と現れ助けちゃったもん、仕方ないね。でも、俺はまだまだ子供だし自分より弱いってのはちょっとな…。
もしこのまま流れで告白でもされたらちゃんとごめんなさいしよう。
ムフンと鼻を鳴らしながらエルドさん先導で飲み屋に向かう。ちなみに冒険ギルドではビックボアの素材で驚かれた以外で問題は起きなかった。少し残念。
お店に着いて飲み物を注文したら、ようやくゆっくりとお話のお時間。
さてまずはお互いの名前からそう思いいざ自己紹介って思ったら、お兄さんがテーブルを叩き勢いよく俺をしっかりと見て口を開いた。
ま、待ってこんないきなり、まだ自己紹介しかしていないのに…。ちゃんと聞いてからごめんなさいちゃんと聞いてからごめんなさい…よし。
「あ、あの!」
「は、はい!」
ドキドキ。
「ぼ、僕は君に出会ったあの時からずっと聞きたいことがあ、あったんだ。」
「な、なんでしょう?」
ドキドキドキドキ。
「君は本当に聖女様なのでしょうか?」
「…………………は?」
「え、あ、そのあの時聖女と名乗っていたし、僕の傷を治してくれた光は聖女様の力かと。」
それだけ?
告白じゃないの?
「………まぁ聖女です。」
「やっぱりそうですか。」
「はい、そうです。あのつかぬ事お聞きしますが道中ちらちら私を見ていたのは?」
「あ、すみません。聞くタイミングをずっと伺ってつい不躾な視線を…。」
なんてこった。
勘違いしちゃったよ。
アリスちゃんの隠したい歴史大全の一つに載っちゃったよ。
どうしよ顔赤くなってない俺?
「あ、あの大丈夫ですか?」
心配そうにこちらを伺うお兄さん。
止めて見ないで、無様を晒す俺を見ないで。
真っ赤な顔を隠すため思い切り両頬をぶっ叩く。ジンジンするけどこれで頬の赤みを誤魔化せた。
「え!?あの大丈夫ですか?」
俺は少し腫れてしまった顔を上げて平然とした表情で笑みを浮かべた。
「はひ、大丈夫れす。わはひは聖しょれす。」
「とても大丈夫には見えないですが…。」
叩き過ぎて頬の膨らみが予想以上で話しづらい。さっさと治療、心の傷も癒えたらいいのに。
「ふふ、大丈夫ですよ。それで私は確かに聖女ですよ。」
「あ、はい。…………実は聖女様にお願いといいますか、お話したいことがございまして…。」
力を使ったことで俺を本物の聖女だと改めて認識したようだ。言葉遣いがとても丁寧になってしまった。
「はい、なんでしょうか?」
「じ、実は僕は…その…。」
とても言いづらそうに俯く青年。
まぁ、ゆっくりと待ちましょうかね。俺もまだちょびっと残っている心の傷を癒やす時間が欲しい。
店員が運んでくれた飲み物をちびちびと飲む。
決心がついたのか俺にも聴こえるくらいの生唾を飲み込む音がした。
そして、顔を上げてもう一度俺を真っ直ぐに見た。
「じ、実は僕異世界から来たんです!」
………………………?
聖女の彼を見る目が普通の青年から少し危ないかもしれない青年へと切り替え始めました。
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